10 悪徳騎士の根城
主人公は、悪徳騎士にたびたび襲われているコルダ村を救うことを決意。
そのために貴族になることを目指すが、第一歩としてどこかの騎士団の乗っ取りを考えていた。
その数時間後、村を襲った悪徳騎士達の根城では――。
コルダ村から十数km離れた山の中、木造の砦が夜のかがり火に照らされていた。
入口には見張りの男が2人立っている。
男達が気だるげに懐から皮袋を取り出し酒をひと口飲んだ時、砦の中から荒っぽい怒鳴り声が漏れ聞こえてきた。
「ンだとォ!? 逃げ帰ってきたって……どういうことだコラァ!!」
「ヒィィ!」
人を殴る音と悲鳴が薄暗い砦の中で響く。
「あのさぁ、俺何て言ったか覚えてる? 覚えるよね?」
「は、はい、ジェレミー様……」
ジェレミーと呼ばれた男は、派手な毛皮の上着を肩にか豪華な椅子にふんぞり返りって座っている。
鋭い眼つきで体格が良く、まだ若そうなのにゴロツキの風格を漂わせる男だった。
ジェレミーはペッとツバを吐くと、怯える男を見下ろした。
床で震えているのは、コルダ村を襲った悪徳騎士達のリーダーだった男だ。
その後ろには村を襲った時の部下達も頭を下げて控えている。
「コ、コルダ村で税を徴収してこいと……」
「そうだよ!金がいるんだよ! 来月のゲロルフ様への上納金が足んねえんだよ! なあ!」
ジェレミーは立ち上がると、床の男の顔を蹴り飛ばした。
「ごえっ! お、お許しを……」
「どうして逃げた!?」
「て、敵に恐ろしく強い奴が1人いて……」
「言い訳すんじゃねえ! 殺すぞコラァ!」
「グエッ!」
ジェレミーに蹴られた隊長は、理由聞いたのに……と思ったが何も言えなかった。
「やる気ねぇなら辞めちまえ!」
「あ、あの、正直自分もう無理です……」
「アァ!? テメエ自分の尻ぬぐいもせずにほっぽり出す気か? この根性無しが! 殺すぞ!」
隊長はまた蹴られて、床に崩れ落ちた。
「お前らはどうなんだ! ああ?」
ジェレミーは、隊長の後ろでひれ伏していた部下達をにらむ。
「ひっ! て、敵が強すぎたもので……」
「何もない所からいきなり武器を出したんです! たぶん奴も異能持ちではないかと…!」
その言葉にジェレミーの眉がぴくりと動く。
「何? 異能? ほう……そりゃどんな能力だった?」
「なんか黒っぽい剣みたいなのでした」
「みたい、って何だよ! もっと詳しく言え!」
「す、すみません。細かい所まではよく見えなくて……」
「は? 戦ったのに見えないってどういうことだ? 弓ならともかく剣なら近くで見りゃ分かるだろ」
「い、いえ……その、前の方にいた奴らがあっという間にやられて、自分らは撤退したので……」
「……つまりお前らは後ろの方でビビってて戦わずに逃げたってことか?」」
「あ、あの……その……」
「このカスどもがァ――!! そいつの異能とやらは、この俺様の力より恐いってのか!?」
そう叫ぶジェレミーの右手が赤く光る。
何も無い空中に、一本の細長い炎の棒が現れた。
「このジェレミー様の炎投槍<ジャベリン>より強ぇえとでも言うのか? アァ~~!?」
「ひっ、た、助け……」
ゴォ!、と大気を切り裂く音が鳴り、部屋が一瞬明るくなった。
ジェレミーの右手から炎の槍が投げられたのだ。
ジュッ!!
炎槍が刺さった部下は、一瞬で黒焦げになった。
「ヒイイイイー!!」
「……お前らマジ使えねえなぁ」
はあ、と深くため息をつくジェレミー。
「ったく、俺様が出るしかねえか。めんどくせえけど」
ジェレミーは床で倒れていた隊長を蹴飛ばした。
「ゲフッ!」
「オラッ! いつまで寝てんだ。明朝俺様が直々に出てやるから部下どもをまとめろや」
「は、はい……」
「今度失敗したら燃やすからな」
隊長は恐れに満ちた沈黙でうなずき返した。
ジェレミーは隊長の横を通り過ぎると、後ろで震えている部下達に向かって言い放った。
「お前らァ! 今回は略奪を許可してやる! 最低限の若い村人だけ残して、後は殺るのも犯るのも自由だ! いや、つーか、やれ。この俺様に逆らいやがったクズどもに見せしめをしないとな」
ベロリと舌なめずりしたジェレミーは、右手に炎の槍を生成するとまた他の部下に投げつけた。
不運にも当たった部下は、ギャッ、と短い悲鳴を上げてすぐに炭の塊になる。
「ま、村人ブチ殺して脅し上げれば隠してる金も出てくんだろ。さあて、久しぶりの人間狩りだな」
翌朝、奴らの魔の手がコルダ村に――!!




