日常の終わり
皆で揃って朝餉をとる。何気ない、いつもの朝。
「行ってまいりまーす。」
「あんまり遅くならないように。暗くなるのも早くなったからね。」
「はぁい。」
陽を送り出して、今日の仕事に取り掛かる。
秋のこの時期は秋冬番茶もいいが、新茶を寝かせた蔵出し茶や、香ばしいほうじ茶も季節に合う。つまり仕事はなくならないということだ。
出勤してきたリチャードも交えて帳場に陣取る。私塾の時間までは、全員で流通管理である。
荷札と帳簿を突き合わせ、整理していく。
長火鉢もそろそろ出番だろうか。そんなことを思いついた時だった。
ニャア。
チビの目が、金色の目がコチラを見ている。何かを言いたそうに。
その、視線。まるでコチラを呑み込んでくるような。
意識が持っていかれる。
「「「っは、」」」
時計の振り子が、止まっている?
「完全に止まってはないね。僕とキミたちの精神の時間経過を加速してる。」
「猫がしゃべったー!」
「いや、口が動いてないです。私たちも。考えていることがそのまま。」
「その声、チビ、オマエあの時の『社長』か!」
色々と、本当に色々とされたことを思い出して身構えた。腹の中に何か居るような気分になって、肌が粟立つ。
「あ、所長!気絶してる場合じゃないです!起きてくださいよ!」
がくがくと揺さぶられて意識が戻る。あ、やめ、それ以上揺すると。気持ち悪。
「ちょっと頼みたいことができた。だから思い出してもらったんだ。」
「·······余計なことまで思い出させてくれるなよ。」
鳩尾を押さえながら、何とか悪態だけは絞り出せた。80年物のトラウマだ、勘弁してほしい。
「申し訳ないけど、コチラの素性を知ってるからこそ頼めることなんだよ。」
「そういや、なんでオマエ俺達のことを知ってる?まだ会えてないハズだろう。」
「この端末、ずっとキミたちと一緒に動いてたみたいだね。ココに残っていた記憶を引き継いだ。」
「時空を超えてストーカーか?いいご趣味で。」
「いや、本体との接続は切れてる。どちらかというと、水先案内、かな。何事もなければついて行くだけだったはずだよ。」
「アフターケア、だったか。最後にそんな事を言っていた気がする。」
「意外と過保護だな。」
「いつか手元に回収できたらデータを取るつもりだったんじゃないかな。記憶の引き継ぎがすんなりできたし。」
「結局ストーカーじゃねぇか。」
感心して損した。




