陽ちゃんのいない間に
頭が痛い。コレは寝過ぎた。
時刻はすでに昼も近い。
帳場に出ると、リチャードがくだを巻いていた。あとはチビと·····狆?!
(あ、ヘタレが起きてきおった。)
「誰がヘタレだ。というか、なんでコイツがココにいる?!」
(異文化コミュニケーション的な?)
チビは何言ってんだか。異文化どころか異質だろうお前ら。
「何か企んでないか?」
(この格好で何ができると?まぁできたとしても、キサマらに手を出す気もないがな。)
「あー、ソイツもチビ本体のサイズ、理解してるから。」
そういうことか。
それなら、一安心とまではいかないが、暴れることはなさそうだ。
(それにな、儂は主と呼ぶに相応しいお方に出会えたのだ。ココでお仕えすることにした。)
「なんか、ずいぶん性格変わったな。」
何というか、侍?犬?
あ、犬か。
「所長、起きたんだったら、そこに座ってこれ食べてください。」
そう言って数矢が差し出したのは、丼いっぱいの粥。
「これ多くないか?」
「水を多めにした塩粥です。まだ水も塩も足りないでしょう。文句言わずに食べてください。」
「ハイ」
ちょっとしょっぱいソレは、とても食べやすかった。
人心地がついて気が付いた。陽だけいない。
「そういえば、陽は?」
(そんなに気になるなら、この通信にご招待する?)
「それはだめだ。」
心の声なんて怖くて聞けるか。
俺の立場が近所のお兄さんレベルだったらどうするんだよ。立ち直れないかもしれないじゃないか。
(やはりヘタレだな、キサマ。)
「陽さんなら、髪のお手入れと言ってましたから、今頃お部屋で洗い髪を風に当ててると思いますよ。」
「まあ、あれだけ汗だくになったら洗いたくもなるよな。」
「汗だく?」
「だいたいオマエのせいだぞ?」
「?」
何もしてない。してないはず。
「まず、事件の夜から昨日の夕刻まで、所長が陽さんにへばりついてたからですね。」
気を失う前に、陽を抱きしめたことは覚えている。
「もしかして、一晩中?」
「そうですよ。一晩どころか、ほぼ丸一日ですね。」
「オレでも剥がせなかったんだぞ。どんだけ必死なんだよ。」
「あの、その間、陽は·····」
「昨日の朝には目を覚ましてましたよ。」
「助け出せたのは夕方だったけどなー。」
あああああ。
俺は、本家のお嬢さんになんてことを。
バレたらまずい。
(アレはなかなかの見ものだったねー。)
見世物じゃないんだぞ!
「で、」
「まだ何かあるのか?!」
「昨日の夜に着替えさせた時に」
言われてみれば、俺、寝間着だな。
「お湯の支度やら洗濯やらで、陽さんずっと働いてましたし。」
なんだよ2人とも、そのいい笑顔。
「陽ちゃん、顔、真っ赤だったな〜。」
「それは所長の身体のせいですかね。」
「待て、陽に何見せた?!」
「そりゃまあ、お着替えですから?」
「肩とか胸とか腹とか?まあ、全体的に。」
「お見せしてはないですけど、見えちゃいますね。」
「あ、触らせてもないぞ。また抱き着かれても困るし。」
「あと、腰の布は死守しましたから、ご安心を。」
「ちょっと興味ありそうだったけどな。」
つまり。
年頃の本家のお嬢さんに、一晩中抱きついていた挙句、おおよそ服を着てない状態を見せてしまった、と。
うわぁもうだめだ。
「え、所長?」
「なんで気絶してんだ、コイツ。」
(本当にヘタレではないか。)




