敵の手の中で・龍三さんの試練
「所長さん····」
陽!気がついたのか!
「陽を離せ!手を出すなぁっ」
奇妙な歌に頭痛を覚えながらも、陽を助けようと思えば身体が動いた。が。
「起きろ、人形ども」
その声に、被害者と思っていた者たちが立ち上がる。
「捕らえよ」
虚ろな眼差しにそぐわない素早さで、人形と呼ばれた彼らが俺に向かってきた。彼らの意思ではない、被害者だと理解しているが故に手加減してしまった。先読みしての回避も間に合わない。
「抑えておけ、仰向けだ」
数分も経たずに、床に押し倒された。
「何を、する」
右の袖が肘まで捲られ、その上から紐で二の腕をきつく縛られる。青く血管が浮き出てくる。
「厄介な方から手を打たせてもらう。女子供なぞ、どうとでもできるからな」
言うが早いか、依代から腕が1本、ずるりとこちらに伸ばされた。
その手に鈍く光る注射筒の針が、正確に血管を穿つ。
「っつ」
「まずは、お前さんからだよ」
ナニカが、押し子で血管に流し込まれる。
一瞬、身体が浮いた気がした。
直後、叩きつけるような悪寒に、全身の感覚が塗り潰された。全身から汗が吹き出す。頭が割れそうだ。
「最期くらいは一緒にいさせてやろう。どうせ忘れるがな」
俺を押さえつけていた手が離れていく。
陽。助けないと。立って、歩いて。
そう思うものの、身体は言うことを聞いてくれない。
頭痛と悪寒に、たまらず頭を抱えて蹲る。
「所長さん!しっかり、気を確かに!」
陽、あきらのこえが、する。
誘われるように顔を上げた時。
ぱん
陽が、彼女が。爆ぜて。
中から、真っ白な虫が湧き出して。
また、まただ。足の先、手の先から、がりがりと。
忘れることのできない悪夢の再来。
「ぐぅ·····っあぁぁ····っ」
「抗うからそんなモノを見せられるのだぞ。抵抗するな、受け入れろ。」




