作戦会議は慎重に
この辺りの地図に、チビからの情報と聞き込みの結果を書き出し始めて2週間。
奥の間に広げた地図の上に、書き込みのない一角が浮かび上がった。
「攫われた現場でも、逃走経路でもない。この辺りが目的地ってことか。」
(確証がほしいよね。できれば壁の中に入れるといいんだけど。)
今回チビは、思考だけでの参加である。
「オレが囮にでもなるか?」
「話、聞いてましたか?狙われるのは男女の2人連れです。アナタが1人で歩いていたところで、警戒されるだけでしょうに。」
「じゃあどうするよ?」
「囮というなら作るしかないでしょう、2人連れを。」
「陽を巻き込むなよ?!本家筋のお嬢さんだぞ、何かあったら俺が親父殿に殺される。」
「この3人から作るのですよ、男女の2人連れを。」
「じゃ、オレは男役だな。相手は所長と数矢、どっちが演る?」
「それは私でしょう。無駄に発育の良いアナタと所長が並んでいても物騒なだけです。」
「無駄とは何だ、無駄とは。」
「2人して鍛え過ぎなんですよ。そもそも女物なんて寸法が合わないでしょうに。はぁ。こんなところで姉からの仕送りが役に立つとは。」
「こないだ届いてた、あの大荷物か。」
「実家に帰らなかったら、送ってきたんです。お下がり。モノは良いので、古着屋にでも持っていこうと思っていたのですが。」
「流石、反物問屋。」
「そういう訳なので、囮はこれでいいでしょう。ただ、ここの守りが手薄になりますが。」
「守り?」
(キミたちが動いたと敵に知られていたら、どう動くか分からない。仮に敵が精神体だったとして、本体か、あるいは端末がココに乗り込んで来ることも考えられる。)
「俺が陽の近くにいるしかないか。」
「陽ちゃん、今年で卒業だったか。最近帰りの遅い日が増えたな。」
「間の悪い事に、次の新月は金曜日なのです。週末を前に、陽さんの帰りが遅い可能性が高い。」
「その日は、早く帰るように言っておかないとな。」
「それとなく、ですよ?あからさまなのは疑われます。」
「了解だ。とにかく、陽を巻き込まない事が最優先な。」
まだ日が高い。
だから完全に油断していた。
この会話を、よりによって早く帰った陽に聞かれていたなんて。
手伝いがしたい、そう言っていた彼女を巻き込む事になるなんて。
悔やんでも、悔やみきれない。




