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7-6 俺、手を引かれて歩き出す。

「え、誰?」


 もう一気に登場人物が増えすぎてよくわかんねぇ。

 バチバチクソ幼女を制止している第三者。

 まぁ一言で終わらせるなら青年だった。

 バチバチクソ幼女が幼女寄りの少女であるならば、この第三者は壮年よりの青年。大人に片足突っ込んでいるような歳に見える。

 俺よりも背は高く、たぶん180㎝くらいかな?

 マッチョではないがそれなりにがっちりとした、競技としてじゃなく生存競争としての肉弾戦に長けていそうな身体つきな印象を受ける。

 あと、バチバチクソ幼女とおんなじような趣向の意匠を纏っていることからそれなりの地位にいることが推察される。

 そして何よりも目を引くのは鈍く燃えるような赤銅の髪と吊り上った目とこれまた燃えるように赤い瞳だった。

 見るからに熱血漢。みるからに正統派。見るからに主人公。

 そんな青年だった。


「‥‥‥」


 そんな主人公青年と目が合った。

 ――――なぜか主人公青年は目を伏せた。

 なぜか? 考察する。

 あの目に映っているのは、後悔だとか憐憫だとか、いずれにせよ負の感情に寄ったモノであるのは容易に想像できる。

 よく見ると鋭く吊り上った瞳には心労から来たであろうクマがうっすら。

 なんとなく主人公青年の立ち位置がわかった気がする。

 バチバチクソ幼女に散々振り回されて心労で胃に穴とか開いちゃうタイプと見た。


「なあ、あんた! 助けてくれッ! 俺達なんにもしてないのにソイツが――ソイツが弟と‥‥‥妹をこんな目にッ!!」


 咄嗟にコドモトカゲニンゲンを妹と言えた俺のファインプレーを褒めてほしい。

 あと、必死に弁明した後、コドモトカゲニンゲンを気絶させたのはオレじゃね?って思ってしまったことは内緒だ。


「‥‥‥すまない」


 主人公青年は絞り出すように謝罪を口にした。


「痛い、離せ」


 制止して握っていたバチバチクソ幼女の腕に無意識に力が入ったのか、バチバチクソ幼女が怒りを主人公青年に向ける。


「あ、ごめん!」


 力づくで主人公青年の腕を振り払い相変わらず不機嫌そうにこちらを睨みつけるバチバチクソ幼女。

 正しくは先ほど吹き飛ばした弟の方を睨みつけるバチバチクソ幼女。

 つられてそちらを見る主人公青年。

 なんでか俺もつられてそっちを見た。

 カタカタと岩場が震えていた。

 あ、やべえ。

 バチバチクソ幼女と主人公青年はどうだか知らないが俺にはちょっと先の未来が見えていた。

 だから、気絶したコドモトカゲニンゲンを抱えて走りだす。

 そして、爆散する岩場。

 それに合わせて跳んでくるケモノと化した弟。

 目標は当然。自分に危害を加えてきたバチバチクソ幼女。

 今まではすべての障害をその圧倒的な力で、それこそ羽虫を払うくらいに無双してきたバーサーカーと化した弟が眼前のバチバチクソ幼女を明確に敵として一直線に愚直に向かう。

 結果を見たいけど、コドモトカゲニンゲンを抱えて弟が巻き上げた岩石群から逃げなくてはいけないのでひたすらに走る。

 それにしておっもいなコドモトカゲニンゲン! 投げ捨ててぇ!

 思ったように走れない。ヨダレとか垂れ流しながら走る。コドモトカゲニンゲンも無茶苦茶に抱えているせいで一歩ごとに重心とかめっちゃくちゃブレる。

 そのまま当たり前のようにずっこけた。


「あぅう」


 またコドモトカゲニンゲンを落っことした。当たりどころが悪くらしく気絶中だというのに短く悲鳴をあげる。


「うおおおおおおお!! 怖ぇぇええええ!」


 頭上から上空からいくつも岩が飛んでくる。ひゅるひゅると鳴る風切音と視界でちらほら映る落下する岩の影がひたすらに恐怖心を呷る。

 めっちゃ怖えええええ。


「あ、死んだ?」


 眼前に巨石が迫る。

 俺とコドモトカゲニンゲンを潰してもまだ体積的に余裕があるような巨石。

 転んでなかったら避けられるのか? 速答。無理!

 占いなんて信じないがアンラッキーアイテムは岩であることは疑いが無い。

 ちらっと傍で激突する弟とバチバチクソ幼女が見えた。

 ダメだ。助けは無い。

 またもや諦観を以って目を閉じようとする。ああこれはダメですわ。

 しかし、頭上の巨石が爆散した。

 眼前には主人公青年。弾けた砂粒を背に後光じみた何かを感じる。


「大丈夫ですか!?」


 俺が果たしてこの青年の敵なのかはとりあえず棚に上げてこうして無条件に助けてしまう。

 主人公を彷彿とさせる青年の本来の在り方はこうなのだろう。

 さっきのバチバチクソ幼女を抑える時よりよっぽど「らしい」

 どうやって巨石を砕いたのか?疑問は浮かんだがそれよりも真っ先に浮かんだのは安堵感だった。


「助かった、ありがとう」


 このクソみたいな異世界に来て初めてこんなにすんなりとお礼を言えた気がする。


「どういたしまして、立てますか?」


 そう言って手を差し伸べる主人公青年。打算とかを感じさせないある意味で一番怖い裏の無い100%の善意。

 俺は馬鹿みたいありがとうとお礼を繰り返し主人公青年の手を取って立ち上がりコドモトカゲニンゲンをおんぶした。

 傍では弟とバチバチクソ幼女がガチンコでバトっている。

 あくまでも直線に駆けるバーサーカー弟。その一歩が傍迷惑にすべてを蹂躙する。具体的には、なんらかの衝撃波的なものがなんやこれわからん原理でそこらへんに散らばっている岩石などを粉みじんに砕いて砂嵐的なものが巻き起こっている。

 バチバチクソ幼女もなんかオーラ的な? 障壁的な? なんやそんなわけからん防御をとりながらてのひらからひたすらに電撃を繰り出す。さっきのは直線的な電撃だったが、弟に通じないと見るやいなや、広範囲に散らばるような電撃をまき散らす。

 いや、こうして解説的なものをしてはいるが、結論としてはわけわからん。

 なにお前らだけでファンタジー戦闘しているんだ。


「すいませんが、これ以上は彼女たちからあなた方を守れません。もっと遠くに避難したほうがいいかと思いますよ?」


 主人公青年が進言する。


「そうだな。強者は強者通しで勝手にやりあってろって感じだわ」


 本来なら弟から離れるのは下策だが、こうバーサーカーしてると近くにいるだけでうっかり殺されてしまいそうなので離れるしかない。


「ははは‥‥‥」


 主人公青年は肯定も否定もしない曖昧な笑みを浮かべてさりげなく俺達を守りながら弟とバチバチクソ幼女の戦闘の影響が及ばない所。

 戦闘が一切見えない場所まで誘導されたのだった。


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