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7-5 俺、訳もわからず走り出す。

 危機である。

 これはもうどうしようもなく形容がし難い危機である。

 しかも、今までこの世界で味わったどれよりも命の危機に直結しかねない危機である。

 敵意をたたき付けられたことは何度かあったし、その上位である殺意も身に覚えがある。

 ただここまで明確な殺意をたたき付けられたのは初めてだった。

 この世界に魔法なるものが存在するのはわかってはいた。それが俺達の科学の代替えなのもわかっていた。

 ただこの威力は初見だった。

 ちょっと考えればわかるものなのだが、結局俺達のいた世界の兵器だって化学なのだ。それの代替えである魔法だって然るべきであるはずだったのだ。

 ようは誰かの使い方次第で如何様にも変容するものだったのだ。

 そんな単純なことも失念していた自分にマイナス100点あげたくなる。ていうかあげちゃう。

 いいや、今はそんなことを考えている場合ではない。

 どうやってこの場を切り抜けるか、それに全思考を割り当てなければならない。


「‥‥‥そうなんだけど」


 こういう危機に耐性がなく、またあるはずもない俺の思考回路は早くも放棄を始めている。

 絶望的な今に対してボケーっと、うわーヤバいよー。とかで済ませようとしてやがる。

 目線の端では、ようやく弟が吹っ飛ばされたという事実にたどり着いたコドモトカゲニンゲンが弟のもとへパタパタと駆けていく所だった。

 パタパタと鈍くさく、あれじゃあ的だろう。


「‥‥‥」


 無言でバチバチクソ幼女がコドモトカゲニンゲンに掌を向ける。

 どうやらさっきの紫電をコドモトカゲニンゲンにもブチ当てる算段のようだ。

 まったくもって容赦がない。


「なあおい、ちょっと待ってくれよ。俺達がお前‥‥‥君になにかしたなら謝るからとにかく待ってくれって」


 バチリ、と空気が引き裂かれる音がする。

 おそらくあと一瞬後に紫電が放たれる。

 弟の安否は確認取れないが、まあ死んでないだろう。あいつの頑丈さは人間としてカウントしていいかも危ういレベルの頑丈さだ。

 問題は俺とコドモトカゲニンゲン。あんなん当たったら死ぬ。

 感電死なのか、衝撃によるショック死なのかはよくわからんが死ぬ。


「あっ‥‥‥あ~あぁ」


 マヌケな呟きは俺の物だ。

 そこまで理解していながらコドモトカゲニンゲンに向けて走りだしてしまったマヌケな俺の物だ。

 なぜコドモトカゲニンゲンに向けて走りだしてしまったかのはわからない。

 ただ俺の足がもう二歩目を蹴りだそうとしている。止まれる気がしない。

 もうこうなると俺自身が果たして何をしたいのかがわからない、思考がまとまらない。

 コドモトカゲニンゲンを助けたいのか? いや無理でしょ。

 魔法ってなんだよ、雷まで使役できるのかよ。マジ物理法則なめんなよ。

 なんで雷当たって吹っ飛ぶんだよ。魔法意味わかんねー。

 言葉は通じてるはずなんだよ。聞く耳もたねってやつか、クソバチバチクソ幼女死ね。もうなんか形容できないくらいにぐちゃぐちゃに凌辱されて死ね。

 異世界ホンマクソ、マジでクソ。

 意味のない思考がひたすら駆け巡るが脚は止まらずコドモトカゲニンゲンのもとへ走る走る。

 もう間に合うとかそんなんを確認する暇もない。

 ただコドモトカゲニンゲンのいる位置まで走ってタックルかます。それだけだ、タックルの理由? 庇いたいのか? もうわっかんねえな。


「うおらあああああああああ」


 なぜかクソバチバチ幼女からの追撃がくることもなく。もう何のためにコドモトカゲニンゲンにタックルするかもあいまいなまま腰に飛びつき地面に叩きつけた。


「あぅっ!」


 俺のタックルでコドモトカゲニンゲンが頭を地面に打ち付けるのが見えた。

 そしてぐったりするコドモトカゲニンゲン。これは間違いなく気絶だろう。

 果たして俺がタックルすることでクソバチバチ幼女の追撃から庇うことで気絶程度でするんだのか。

 俺がタックルしたせいでコドモトカゲニンゲンが気絶してしまったかはもうこれまたわかんねえな。

 そして、ようやくクソバチバチ幼女の方を見た。

 なぜ、追撃をしてこなかったのか?

 それは。


「いけませんよ。こんなことして‥‥‥」


 そこにはバチバチクソ幼女の手を握って制止するまた誰か知らぬ第三者がいたからだった。



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