3-10 俺、奴隷商人に教わる。
「いや、こちらこそ、え? だよ兄ちゃん。まさか知らなかったの?」
知らんかったわ。全然気づかんかったわ。
弟の背中でぶるぶると震えるコドモトカゲニンゲンを見ると多少痩せこけてはいるもののそれでもうりうりうりって無理矢理撫でまわせそうな頬、今までがどうにも命の危機ばかりだった為か世界中を警戒するようなツリ目、己に内包された人々の怨嗟の声に晒されてきたストレスから半分白く色素が抜けてしまった髪。
おっぱいの方も幼子というのもあり判別できなかったし。
それらが合わさって擦れたクソガキにしか見えなかったが、まさか女の子だったとは。
「知らんかったわ‥‥‥。いや、逆に聞きたい弟よ。いつこのクソガキが女の子だって気付いた?」
「へっ! いつって? いつって! そりゃあアレよ、あの時だよ・・・ほら、いつかのあのタイミングですよ・・・」
おい、なんでそんなに言いづらそうにもじもじする弟よ。
―――まさか、超えちゃったりするのか、一線?
え、こんな子供と・・・一戦交えて一線超えたの?
クソロリコンじゃん! っつかぺドじゃん!
弟に対する評価が揺らぐ。
確かに己とかより他人を助けたりするあたりに一個の生命として欠落を感じてきたことも何度かあったけど、そういうのは違う。
「いや、兄ちゃん? なにか勘違いしてない?」
「カンチガイ。シテマセンヨ」
「おいクソ兄ぃ! なんで後ずさってんだよ!」
「ムキニナッテコエヲアラゲルモノデスカラ」
「って遠いよ! 遠い遠い、どこ行く気だよ!」
などと、弟の性癖暴露に引いていたら、観念したようにため息をついて。
「ほら、トイレとか、一緒にいくじゃない?」
クッソつまんねえ正解を俺に告げた。
「ほら、このコの発作がいつ出るともわからないからヒモをほどくわけにはいかないからさ、行水とかも一緒にしたりもしたしさ」
それらの暴露がよっぽど恥ずかしいのか、まくしたてるかのような早口で、問い詰めてもいないのに釈明するかのように俺に説明する。
コドモトカゲニンゲンの世話の一切を弟に任せている以上、きっとこれが真実なのだろう。
「あの‥‥‥お話の方は一段落しましたか?」
赤面する弟をしり目に、あまりにも話が脱線するもんだから、奴隷商のおっさんが痺れをきらしたようだ。
「ああ、もう大丈夫だ。ホントにこのクソガキ、女の子だったんだな」
「気づいていなかったんですか。老婆心から忠告しておきますが自分の所有物の正当な価値は知っておいたほうがよろしいですよ」
まさか人の道を踏み外した奴隷商により良い人生路の歩き方を諭されるとは思ってもみなかった。




