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3-8 俺、ドン引きする。

「ほい、じゃあ次の人~」


 ふいに、受付の声が聞こえた。


「えっ?」


 いつの間にか、俺たちの順番になっていたようだ。

 弟との問答に夢中になっていたので全然気づかなかった。


「ほら、あんた、さっと書類を出しな」


 さっきおっちゃんに記入してもらった入国書類を渡した。

 いや、お金が無いんです。という暇もなく。本当に流れ作業で用紙に目を通す受付員。


「所有物は・・・奴隷が一名だな。相違ないか?」


 耳を疑った。

 しょゆうぶつはどれいがいちめい?

 ちょっと理解が追いつかない。


「奴隷‥‥‥誰が?」


 コイツはなにを言っているのだろう?


「そこの、それだ。その薄汚いガキだよ」


 受け付けはコドモトカゲニンゲンを指さして言った。


「お前が書類に書いたんだろ? 入国希望は大人二名。所有物は奴隷が一名って、ほらここに書いてあるだろう?」


 書類を突きつけられるが、文字なんて読めねえ。

 書類を書いたのは、書いてくれたのは、前に並んでいたおっちゃんだ。

 おっちゃんには、コドモトカゲニンゲンが奴隷に見えていたのだろうか?

 あんなに気のいいおっちゃんにも、こんなガキンチョが、労働に従事する道具に見えていたのだろうか?

 そもそもこの世界には奴隷制度があったのか?

 いや、現に目の前で奴隷の有無を尋ねられている以上、そういった制度は確実に存在するようだ。

 歴史の成績があんまりよくなかった俺ではあるが、世界史において奴隷制度がなかったところのほうが少なかったという。

 いつかのヒゲの大統領が奴隷解放宣言をするまで、ヒトには明確な上下があったという。

 それがヒトの本質だというのならば、この異世界においても、世界が変わったくらいで奴隷制度というものがなくなるはずもないのだろう。

 ヒトがヒトを使役するのは俺たちの歴史においても正史なのだから。

 おっちゃんにすれば、人間三名と書類に記入するよりも、人間二名奴隷一名と記入するほうが入国金が安くなるとか、なんらかの気をつかってくれてのことだろう、と思いたい。


「奴隷かぁ。そうかぁ」


 乾いた笑いしか出てこねえ。

 そりゃあ異世界だ。奴隷とイチャラブする展開とかも、ハーレム築く展開とかもアリかもしんない。

 けど、俺の下半身はまったく反応しない。

 思いのほか、ドン引きしてしまっている。ちょっと勃ちそうにない。


「兄ちゃん?」


 傍らでは、弟が放心状態の俺を訝しんでいる。


「んん、あぁ。別に大丈夫だ。ちょっと考えごとしてただけだ」


 さて、弟にはどうやって話したもんか?


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