2-6 発狂のネタばらし
「しにたがる?」
コドモトカゲニンゲンは呟いた。
俺が言葉にして、ようやく己の所業が自殺であると気が付いたようだった。
「そんな‥‥‥ことない」
その顔には嫌悪感が張り付いている。
あんなに惨たらしく殺されたというのに、あんなに痛い痛く痛ければ痛くともな殺され方をしたというのに、自分からそんな終わりに向かっていったということに気付いたようだった。
まぁ、俺の勝手な想像だけどもね。
「こえがきこえるんだ・・」
コドモトカゲニンゲンの独白はたどたどしい。
それほどの語彙力もないだろうに。弟というなんかこれようわからん暴力が眼前で構えているから必死に言葉を紡ぐ。
「あっちこっちからだれかもわからないこえがぼうふうみたいにきこえてくるんだ」
幻聴‥‥‥ときましたか。
「そのこえから、にげるんだ」
なんだよ、幻聴って、意外とサイコ野郎だな。
「声ってどんな声が聞こえるんだ?」
インチキ超能力を言葉で追い詰めるかのような気軽さで俺は問い詰めてみた。
「いろんなこえ、きこえる。たすけて、とか。このこだけは、とか。わしたちがなにをしたんだ、とか。いろいろ」
色々と聞こえる。
ん~。なんだか俺も最近そんなのを聞いた気がする。
それもつい最近。すっごい記憶的に新しい所で‥‥‥。
「あっ」
思い出した。
弟がビーストモードで暴れまわって殺しまわっているときの断末魔でそんなのいくつも聞いた。
距離が遠かったから一言一句あっているかと言われればノーではあるが、断末魔とか怨嗟の叫びとかって意外と届くんだなぁとか思った記憶がある。
「なる~」
このコドモトカゲニンゲンの幻聴におおよそ合点がいってしまった。
魂とかいう器に込められた最後のことば、それこそ死にたくないと懇願しているのに押し付けられるのは殺される時の最後の瞬間。
それらが生を謳歌したがる本能の横で叫び声を上げ続けているというのだ。耳を塞いでもシャットダウンできないというのだ。
確かにそれはたまったもんじゃないな、
「なんて言ってるの、兄ちゃん?」
弟が訝しげにこっちを見つめてくる。
さて、どこまで話していいのだろうか?
誰かの死に際の悲鳴が聞こえる→なんで?→コドモトカゲニンゲンの命を担っているものの声だから→なんで?→お前が村人を殺して命をコイツに押し込んだから‥‥‥ダメだ。弟の心にダメージを与えかねない。
どうする? 考えるが俺の無言の時間が長い程、弟は訝しむ。
誰かの断末魔が絶えず耳元で響いて恐ろしい→なんで?→わからん。これでいくべきか?
なんせファンタジーだ。魔法とかよく理論がわからんトンデモがまかり通る世界である。
齢30のおじさんである俺にだってわからないことがあるのだ。っていうかわからないことのほうが多いのだ。
よし、これでいこう。




