吸血鬼
夜は長い。
あれだけの驚きと痛みを感じたこの夜はまだ更ける気配がない。
まぁその方が俺にとって都合はいいんだが。
「なぁ、アンタ」
俺は目の前のいい感じに積み上がった瓦礫の上に優雅に座る女に声を掛ける。
「あのさぁ、癪だけど負けたから従僕呼びされんのはまだわかるけど、この拘束はなんなん?」
俺は現在、ボロボロの椅子の上に紅い手錠と足枷をつけられた状態で拘束されていた。
「流石にひどくね?」
「あら、ずいぶんな減らず口ね。」
彼女はそう言うと俺の目の前に立つ。
「やっぱアンタスタイルいいのな」
「貴方ほぼ初対面の人に対して失礼すぎない?」
「でも人間じゃねぇんだろ?スカーレットさんよぉ」
「へぇ・・・・貴方、いつから起きていたの?」
「いつだろうな」
「ふぅん、まぁいいわ」
そう言うと、彼女は俺の手を取り、彼女の爪が俺の掌を貫いた。
「がァ・・・!」
俺はあまりの痛みに悶絶する。
「あまり調子に乗らないほうがいいわよ?別に今ならいつでも貴方を殺せるんだから」
「まぁ、そうだろうな・・・」
公園で既に俺は一撃で落とされている。コイツに勝てる未来は無い。
「で、お前はなんで俺をここに連れて来た?」
俺は痛みに耐えながら、彼女に問いかける。
「ところで、貴方自分の手を見てみたらどうかしら?」
「何?・・・っ!」
俺は視線を自らの拘束された手を見て驚愕する。
綺麗な手の肌色がそこにはあった。
「なるほどな。傷が治ってるってことは、俺も化け物になっちまったか」
「まぁ、そうなるわね」
彼女は悪びれずに肯定する。
「ちなみに俺は普通の生活送れるやつ?」
「ええ。私の言う事をしてくれるなら、普通の生活を送れるよう保障してあげるわ。そのために貴方をわざわざ半吸血鬼化させてるんだもの。感謝しなさい」
「ならいいかとはならねぇけどよ、俺は何をすればいいんだ?」
「まぁ、端的に言うと私の手伝いをしてもらうわ」
「俺なるべく犯罪はしたくないんだけど・・・・・」
「別にいいわよ?その代わり、一生そのままで居てもらうけど」
「すんませんでした」
俺は謝罪して、協力する姿勢を見せる。
「というか貴方、ずっと気になってたんだけど、なんで今すぐに殺されるかもしれないのにそんな軽口を叩けるわけ?」
彼女は俺に問う。
確かにこれは異常だな。
「冗談だ。普通に怖いから勘弁してくれ」
俺は即座に居住まいを正す。
「じゃあとりあえずお前に協力したら普通の生活は送れるんだな?」
俺は念を押す。
「ええ、保障するわ」
「ちなみに俺が気絶させた男ってどうなるんだ?」
「おそらく貴方を追うでしょうね。公式に貴方は私の眷属として登録されてるわ。」
「終わったやんけ」
俺が嘆くと彼女は嗤う。
「勘違いしちゃダメよ?自分が誰の眷属か、しっかり自覚しなさい?」
(やっぱ終わったな・・・・・・)
俺は心の中で静かに絶望し、今日は帰宅することを許された。




