紅き邂逅・破
俺は眼前の光景を処理できずにいた。
こんな深夜に怪しい男が女を襲うなど、犯罪臭しかしない。
しかし、更に俺を混乱させるのは女は身長を優に超える得物をその手に携えていることだ。
「少年」
「!」
男は昼間とは打って変わって見た目通りに圧をかけてくる。
「この光景は忘れてお前は今すぐにここから去るがいい。命が惜しければな」
「っ」
俺はあまりの衝撃にその場から動けずにいた。
それが間違いだった。
眼前に迫るは白き鬼。白き鬼は俺の首に牙を突き立て、
氷室新は、その意識を手放した。
「っチッ・・・・やられたか」
私は眼前の少年を救えなかったことを悔やみながらも、即座に意識を眼の前の吸血鬼に移す。
「ジャパンでそこまで暴れるべきではないと思うが、吸血鬼殿」
私は残酷なほど美しい女と対峙していた。
もう何度目だろうか。このような状況に陥るのは。
今度こそと思いつつも眼の前でコイツに喰われる人間を何度見てきたことか。
悔やむにも悔やみきれない。
「その少年への手向けとして、貴様はここで殺す。覚悟しろ、吸血鬼スカーレットよ」
吸血鬼は嗤った。
「あら、別にこの子を殺すつもりなんてないわよ?私もそろそろ危なくなってきたし、王子様の一人くらいは居てくれないとね」
私は驚愕に目を見開く。
「見え透いた嘘はやめておけ。貴様はここ200年は眷属を一人も作っていないと記録が残っているが?」
純粋な疑問を、目の前の化け物にぶつける。
「まったく、教会ってのはストーカー気質で困るわね。プライベートなんてあったもんじゃないわ」
そう言いながら、彼女は得物とする自身の血により構成された長槍を振りかぶり、こちらへと猛進する。
俺はそれを視認しながら手持ちのタクティカルナイフで応戦する。
キィン!キィン!と甲高い音が鳴り響く。
これまでの戦闘でわかっていることだが、私と彼女の戦闘力は五分五分か彼女のほうが一枚上手のようだ。
「やはり、毎度のことながら貴様らの種族の生命力は気持ちが悪いほどだなッ!」
俺は連撃の間に強撃を打ち込み、一度距離を取る。
「あら、もう帰っていいのかしら?」
彼女はいやらしい笑みを浮かべながら私を煽る。
少年の首元に牙が突き立てられようとした時、私は確信した。
既に私はスタートを切っている。
彼女が気づいて槍を構えようとしたが遅い。
「早急に死ぬがいい」
ナイフで彼女の胴体を袈裟に斬る。
「ッぐ!」
彼女は一瞬苦悶の表情を浮かべ、少年を抱いていた手を緩めた。
流れるようにその手へともう一本のナイフが黒い軌跡を描く。
「少年!」
私は邪魔な手を切り落とし、少年の元へと駆け寄る。
彼女は手を切られた事により私から少し距離を取る。
「大丈夫か、少年」
私は必死に彼に呼びかける。
「ん・・・あぁ」
「!」
少年が目を開いた。
それと同時に
私の意識は闇へと沈んでいた。




