紅き邂逅・序
9月の深夜の道はひどく頼りなく、昼とはまた違う嫌な雰囲気を醸し出していた。
街灯に照らされてはいるが、人の気配を感じさせず、まるで人が存在することを拒むようであった。
「しっかし夜の道はなんかワクワクすんなぁ」
先程までトラウマを思い出していたことも忘れて、俺はこの時間帯特有の雰囲気を愉しんでいた。
「この夜の匂いというのも、なかなか乙なもので、、、、、、ん?」
少し自らに酔いしれながら夜の静かな匂いを感じていると、その中に一抹の違和感を感じた。
(鉄臭い・・・・・・・・まさか血じゃないだろうな?)
鼻は良いのでこの手のことで間違えるとは思わないがまさか血の匂いがするとは微塵も思わないだろう。俺は道端で一人狼狽していた。
傍からみたら夜の住宅地で一人で不審な行動を取っている人間にしか見えないだろうが、俺にとって今はそんなこと些末な問題でしかなかった。
(誰か怪我してんのか?)
俺は急いで匂いを辿り、そのもとへ辿り着いた。
辿りついてしまった。
「は・・・・・?」
俺の脳は眼前に広がる光景を処理できていなかった。
匂いの元は近くの公園からのものであった。
紅い女がいた。
しかしその女は見たこともないほどに色素が薄かった。
女が着ている真っ赤な服を強調するが如く、彼女はただ白かった。
明らかに血の通っていない存在として、彼女はそこに在った。
ただ、俺を一番驚かせたのはこの世のものとは思えない女ではなかった。
紅い女、つまり血に塗れた彼女に相対してそこに立っていたのは
同じく血に塗れた昼間の男であった。




