↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滝瀬さん家と四則演算  作者: 浅野エミイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/41

8-2 避難

 御影さんの言葉が棘のように心を刺す。もしジーニアスが故意に人工衛星を乗っ取って地元に落下させようとしているのならーー。でも、もしそうだったら、金澤は暗号の情報なんて持ってこなかったはずだ。


 ジーニアスの目的は、ただの見合い。私の頭脳と多分……精子だろう。精子って、何度も言うけど私は女なんだけどね。金澤自体は私の頭脳を試すために持ってきた暗号からとんでもないことがわかってしまったというだけなのか。


 私たちはカフェで、隕石落下について話し合う。


「一応警察には瑪瑙さんを通じて報告しよう」


「落下地点は城ノ崎小学校だよね。生徒とかいるけど……」


「学校立ち入り禁止にしたほうがいい。真珠、落ちてくるものの大きさとか、被害の想定はできるか?」




 お兄さんトリオが次々と対策について意見を述べる。私もスマホのサテライトマップを見ながら、どの隕石ーーもしくは衛星が落ちてくるかの検証をする。


 調べてみると、落下するのは隕石ではなく衛星のようだ。S-1620という名前の衛星。それがわかると、金澤やジーニアスの関与が疑われる。




「金澤は重要指名手配だ」




 翡翠くんが言うと、琥珀さんもうなづく。逮捕された白銀さんも何か知っているだろうか。




 私はS-1620について検索する。S-1620。出てきたのは四菱重工の惑星探査機だ。大きさは約27m。




「これが地球に落ちてくるのか?」




 地球からの高度など、ウェブの百科事典には詳細に書かれている。私はその数字を書き出して、紙に計算式を書く。先ほどのRSA暗号からわかったのは、3日後に衛星が落下することだ。落下座標は城ノ崎小学校。そこに27mのデカ物が落ちてくる。




「真珠、衛星が落下しないようにできないの?」




 鐘くんが心配そうに聞くが、そんな方法があるならとっくに採用しているだろう。




「地球に落下するとき、ある程度摩擦で燃えるからね。27mより小さくはなっていると思うけど」




 そう言うと、御影さんもこくりとうなづいた。御影さんは理系だったからな。さらに私のあとに続ける。




「自衛隊のレールガンがあるはずだが、それで落下地点を海沿いにすることはできねぇのか?」


「いや……海沿いだと、波が立つ。場合によっては小学校のほうが安全だろう」




 琥珀さんが難しい顔をする。海に衛星を落とせれば確かに被害は食い止められるかもしれないが、海沿いに住んでいる人もいる。小学校ならグラウンドに落とせば被害は少なくなるはずだ。下手に軌道修正すると、かえって誤差が出るだろう。




「だけど学校に衛星を落下させられるのか? 軌道を上手くグラウンドに設定するとして」




 水晶さんも頭をひねる。人工衛星なら、地球からでもアクセスできるよな? 私は思いついたことを話す。




「もしかしたらジーニアスは、人工衛星にアクセスーーというかハッキングしたかもしれない。なら、俺たちもアクセスできるかもしれないし、落下座標を変えることもできるかも」


「この住宅街に落ちるとならば、一番安全なのは小学校校庭だけど……落下地点を変えるなら、どの辺がいいかな?」




 翡翠くんが問いかける。この街に落下する予定の座標を海沿いに移動させるのは少し距離がある。やはり、小学校校庭が一番無難だろう。




「えっと、私たちがやることはーー」




 琥珀さんもメモを取る。まずは瑪瑙さんに連絡。白銀さんが何か知らないかも問い詰めてもらうことも重要だが、まずは住民の避難だ。あと、金澤の指名手配。


 行政に連絡して、小学校を立ち入り禁止にする。他には避難所の設置だ。




「真珠、落下する時間は割り出せた?」


「今やってます」




 ネットに載っているS-1620の大きさから、落下速度を捻出する。大まかな時間は3日後。だけど、この数値じゃまだ正確だとは言えない。部品の摩擦係数なんかもわからないと、地球の落下位置も変わってくる。




「琥珀さん、大まかな計算はできたんですが、部品全部の落下速度はスパコンを使わないとちょっと……」


「了解。鐘、真珠くんの書いた数式を博に入力してきてくれる?」


「わかった」


「あと、落下目標の城ノ崎小学校校庭に障害物とかないか、真珠くんも現場を見てきたほうがいい」




 指名された私は、強くうなづく。翡翠くんも手を挙げた。




「僕も一緒に行くよ。白銀さんが逮捕されて、金澤も逃げたかもしれないけど、今真珠が狙われたらまずいでしょ」


「水晶と御影は県庁へ。私は瑪瑙さんと合流するよ」


「うん」




 琥珀さんの指揮に、全員が首を縦に振る。カフェの扉の看板をCloseにすると、私たちは持ち場へと向かうことになった。




「のんびりカフェなんてやってる暇じゃないんだなぁ……嫌になるね」


「まぁね。夏休みなのに、衛星落下の対策なんて。普通にプールや海に遊びに行きたかったよ」




 私がぼやくと翡翠くんもつぶやく。だけど、金澤やジーニアスに売られたケンカは買わないと。ジーニアスの目的は、やっぱり……。




「金澤たち、小学校校庭に衛星を落とすだなんて、正気じゃないよ」


「ジェノサイドなんて意味のないことなのにね。優生思想……か」 




 翡翠くんがぽそりと言う。この街に衛星を落とすなんて、ただの自暴自棄だ。金澤は逃げたけど、街を攻撃したところで、得になることなんてひとつもないのに。




「これも自己顕示欲みたいなもの?」


「だとしたら大迷惑だ!」




 翡翠くんが声を荒げる。その気持ちがわかるので、私もただこくりとした。


 自分たちの頭の良さを誇示するために、衛星をハッキングして落下させようとするなんて。IQ170どころか、人間の平均である100以下だ。私個人の考えだけど、真にIQの高さを誇りたいなら、人間性も養わなくてはならないと思う。だから今回のジーニアスの件も納得できないのだ。




「白銀さんはジーニアスだったのかわからないけど、高IQだって言われても信じられないんだよ。水晶さんに振り向いてもらうためだけに毒を盛るとかさぁ……」


「真珠もIQ高いでしょ?」


「あっ」




 翡翠くんに言われて気づく。むささび戦隊モモンガーが私のそばにいる理由。今は護衛だけど、最初の目的は『私のお目付役』。


 天才は野放しにすると危ないからーー。その理由が少しわかった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。