3-5 滝瀬兄弟の日常~お手伝い~
風呂掃除したのと、今日はみんな汗をかいたということで、夕飯前にシャワーと風呂に入った。
夕方18時、今日の夕食はミートローフだ。相変わらず琥珀さんの料理は、豪華でお洒落、且つおいしい。
ぺろりと食べ終えると、お皿をキッチンへ運んで、琥珀さんに言った。
「あの、食器洗い手伝いましょうか?」
「いいの? ありがたいな。うちの兄弟は食べるだけ食べてほったらかしだからね……」
「ハク兄、僕は手伝ってるでしょ?」
水晶さんも私と一緒にキッチンに立つ。琥珀さんは自分より少し背の高い水晶さんの頭をなでた。
「うん、水晶は偉いね」
「……誤魔化されてる気がする」
兄弟仲良きことは美しき哉。3人で洗い物を始める。水晶さんが運んで、私が洗い、琥珀さんが布巾で皿を拭く。6人分の食器を洗うのも、重労働だ。
「翡翠、ゲームしよー」
洗い物をしている横で鐘くんが翡翠くんに声をかける。翡翠くんは御影さんと今日の火災の話をしていた。
「大学でボヤ騒ぎって、いたずらの範疇を超えてる。秋高の刃傷沙汰もだけど」
「真珠がどこに行くかとか、本当に先読みされているのかな」
その会話を聞きながら、私は瑪瑙さんの言葉を思い出す。
ーー地元で遊んでいればいい。
だけど……モモンガーたちに守られているとはいえ、大丈夫なのかな。それに、例の謎のカード。今日の摩擦係数の本。私が手に取るとわかっていた?
神妙な面持ちで洗い物をしていたら、隣で食器拭きをしていた琥珀さんが、眉間に触れた。
「こらこら。しわが寄ってる。笑う門には福来たるって言うでしょ。そんな顔してたら、幸せが逃げちゃうよ?」
「……はあ。でも、さすがに出かける場所に知らない人間が先回りしてるのは不気味ですよ」
「まーねぇ」
カウンターに寄りかかっていた水晶さんも同調してくれる。
「兄貴たちは考え過ぎなんだよ。真珠、終わったらゲーム!」
「……鐘に懐かれてるな」
御影さんがぽろっとつぶやく。遊んでいればいい、か。室内でゲームしていれば、とりあえずは安心か。ここのマンションも滝瀬家のものみたいだからね。
皿洗いを終えると、琥珀さんに呼び止められた。
「真珠くん、手」
「手?」
「……はい」
「!?」
琥珀さんに手を握られる。びっくりしていると、何かクリームみたいなものを付けられたことに気づく。ほのかにレモンのような柑橘系の香りが漂う。これってーー
「ハンドクリーム。皿洗いのあとはケアしないとね」
「あ、ありがとうございます……」
心臓に悪い。滝瀬兄弟は、無駄にルックスがいいのだ。普段はモモンガーなんていかれたコスプレをしているけど、琥珀さんはお洒落なカフェのマスターだし、水晶さんも御影さんもイケメンだ。翡翠くんも美形だし、鐘くんも……。
今までさほど意識はしていなかったけど、イケメン兄弟だと認めると同居に差し支えてしまう。
とはいえ私が勝手にドキドキしてしまうだけなんだけど。でも、私は男ってことになっているから、恋愛沙汰にはならないだろう。
琥珀さんにクリームを借りて塗ると、鐘くんの隣に座る。
「ゲームって、何のソフト?」
「テニスのやつだよ」
コントローラーを握ると、鐘くんと対戦する。画面に向かってコントローラーを動かす。初めてやるゲームに四苦八苦する私だが、鐘くんはうまく私を攻める。
その後ろで、御影さんと翡翠くんが今後について話している。夏休みは始まったばかり。平穏のフリをする私たちだが、これからどうなることやら。
「やった!0-30! 真珠って運動苦手?」
「そんなはずはないんだけど……」
「じゃ、次僕と勝負だ」
翡翠くんが手を挙げる。私が運動が得意じゃないから? 翡翠くんは負けず嫌いみたいだけど、私は勝負は好きではない。
「ま、ゲームだからな」
御影さんは食後なのにも関わらず、ポテチに手を伸ばす。
ーーこんな風にのんきにゲームを楽しむ余裕が、今の私には必要なのかもしれない。




