3-4 滝瀬兄弟の日常~風呂掃除~
「ただいまー。あー、疲れた」
3人で大学の図書館へ行ったはいいが、今度はボヤ騒ぎなんてふざけるな。私たちはくたくただった。
「琥珀、水晶、また真珠が狙われたみたいだ」
「御影と翡翠も一緒だったのにか?」
「……なんだか行動を先読みされている気がしなくもない」
翡翠くんがつぶやくと、琥珀さんがため息をついた。それを見た水晶さんは、雰囲気を和まそうとしたのか、ヘラっと笑った。
「それより汗かいてるだろ。風呂掃除してねーぞ?」
「あっ、じゃあ俺が掃除しますよ」
私が名乗り出ると、水晶さんは手をぽんと叩いた。
「それはありがたい。じゃ、ちゃっちゃとお願いしようかな。掃除の代わりに一番風呂の権利をやろう」
「真珠、頼んだよ」
琥珀さんにお願いされた私は、水晶さんと風呂場に行く。
「このスポンジを使ってね」
「はい」
ズボンの裾をめくると、私はさっそく風呂掃除を始める。風呂用洗剤を浴槽に吹き付けて、時間を置いてから擦る。浴槽だけではなく、風呂場全体を掃除する。あとはお湯で流して完了だ。私は蛇口を捻った。が。
「うわあっ!」
思わず叫んだ。同じ2階にいた水晶さんが、その声を聞いたのか飛んできた。
「真珠くん、何!? 大丈夫?」
「あはは……大丈夫っす」
「あーあ……」
蛇口を捻ったはいいが、シャワーから水が出てきてずぶ濡れになってしまった。Tシャツが体に張り付いて気持ちが悪い。
だけどふと気がついた。服が体に付いたら、もしかして女だってバレちゃうーー!?
焦った私は、浴槽でうずくまり体を隠した状態で水晶さんを見る。体型に気づいてはなさそうだ。
「ともかく、バスタオルで体拭いて。着替え持ってくるよ」
「あ、水晶さん!」
風呂場の外が静かになった。着替えって……。しばらく待っていると、ノックする音が聞こえた。
「ドアの前に着替え置いとくよ。翡翠と似た体型だから翡翠の服持ってきた」
「えっ……」
翡翠くんの服って。いいのかな。水晶さんが立ち去ったのを確認して、ドアを開ける。水晶さんの言った通り、翡翠くんの服と思われるジャージとTシャツを受け取ると、私はそれに着替えた。
風呂場を出ると、ダイニングにいた水晶さんにお礼を言う。
「服、持ってきてくださってありがとうございます」
「いいえ~。だけど、真珠くんって本当に華奢だよね。翡翠もそうだけど」
「えっ!?」
「水晶、同性でもセクハラ発言はやめとけ」
御影さんが釘を刺してくれて、私は少々安堵する。
「あれ? その服、僕のじゃ……」
「翡翠くん、ごめん。借りてます」
「……いや、いいけど……」
ソファでくつろいでいた翡翠くんは少し赤くなったように思える。ただ、同級生に服を借りるって、恥ずかしいな。私の場合、異性に借りているから余計に照れくさい。
お互いはにかんでいると、水晶さんが麦茶を出してくれた。
「お風呂掃除、お疲れ」
「ありがとうございます」
グラスを受け取ると、一気に飲み干す。どうやら自分でも気づいていなかったけど、喉が乾いていたようだ。
「お風呂の栓してきたんで、お湯入れて平気ですよ」
「はーい」
私がそう言うと、琥珀さんがお湯張りのボタンを押した。




