九話 激突と激震④
「!」
蒼が水を出す。細く、透き通った水刃が女の右腕に傷を与えた。この時、ダニエルは理解できないものを見た。
「自虐嗜好人間」
女つまり癒医の右腕から滴り落ちる血糊が固まり、形を成した。それは、傷口から生える、無数の血刃だった。
「刺すぞ。」
癒医はそう言うと、蒼の身体に右腕を当てようとする。
「蒼!」
ダニエルが足に力を込めた。
「一兎を追うもの二兎を得ずというだろ?やっぱり箴言は充てにならないな。」
癒医は右腕から生える刃で左腕を刺した。ダニエルは一瞬戸惑う。だが、その目的を理解するとさらに力を込めた。
「お前!」
ダニエルは癒医を凝視する。癒医から蒼は離れ、防御態勢へと入った。
「ダニエル!」
玲が叫ぶ。
「後ろです!」
「忘れてもらっちゃ、困るよ。」
狩喰はそう怪笑を浮かべた。
「無那閃律」
狩喰の剣がダニエルの右腕を飛ばした。
「痛っ!」
「大丈夫ですか!?」
玲が駆け寄る。
「動かないでね。」
狩喰は無情にそういうと玲の眼前に剣を向けた。
「君の番だ。順序で考えると、左腕かな。」
「炎爆爪牙」
カイの炎が狩喰の顔面を直撃した。
「今のはちょっと痛かったね。」
狩喰の顔にできた薄い火傷が狩喰の力を搔き立てたのか、真っ直ぐにカイに向かう。
「やばい!」
遥が叫ぶ。
狩喰の剣が、カイに刺さらなかった。
「腐れ縁の同期のかわいいかわいい教え子だ。少しぐらい誇示しないとね。まあ、戦闘特化じゃないけど。」
悠真はそう言った。




