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三十話 火蓋を切る③
「よーづきぃそろそろだよ。」
夜月の耳に楽響の声が聞こえる。
「もう発動していいのか?」
「いいよー。」
「分かった。」
夜月は掌印を結ぶ。その厳粛さには、軽口などみじんも言えるものではない。
「術式解放。「月に幻われ闇夜に光れ」
「おい、まて!逃げんな!」
暁が癒医に向かって言う。
「いやだな。」
癒医は舌を出した。
「あ、やべ。」
悶絶しているカイを眼下に獄鍛は即座に避けの選択を取る。
「夜月、やばいって。」
「陽炎陽炎」
「うわー。始まるよ。」
「おい、まて!こら!」
影に沈む陽影を追いかけようとするダニエル。
「無駄だ。」
アルバルトはそういった。
「なんで?」
「私たちは皆、死ぬからだ。」
「ボクは死にたくないな。まあ、七日後にまた復活するからいいけど。とりあえず、この技を見よう。」
蛇紫はそう言った。
「天を染めしは紅き深紅の記憶。夜を食らい、魂を焦がし、今再び満ちよ。夜鎖を解き放ち、絶望の門を開け。天を裂き、紅に染め上げよ。月に幻われ闇夜に光れ。今ここに彼の者を顕現せ。降り注げ、斬撃よ。「終末の紅月」」
闇夜に輝く月は、悪魔のような深紅の色へと変わる。気のせいか、膨張している。そして、月は・・・壊れた。
「死ね。」
夜月のその言葉を切り札に、フランスに斬撃の雨が降り注いだ。




