二十三話 千年前
「それじゃあ、とある話をしようか。僕が千年前に受肉したのは知ってる?」
陽影の問いに楽響はうなずく。
「知ってるぞ。」
「それでね、そんときに受肉した直後に死んだんだよ。」
「お前が?」
「うん。自然災害とか、殺魔法陣とかだったわけでもなく、人間の能力者に殺されたんだ。」
「人間?」
楽響が鸚鵡返しに聞く。
「人間。受肉してすぐ戦闘始めたんだけど、十秒立たずに殺された。」
「どうやって?」
「相手の能力は、斬撃っぽかった。斬撃が、俺の肉体にまっすぐ飛んできて、チェックメイトだった。受肉したてだったからね。」
「あー久しぶりの人間界だ。」
受肉体で周りを見回すと、無数の武士の死体が垣間見える。何かの「災害」が通り過ぎたようだ。
「生き残りがいたのか。」
高身長で、褐色の肌、鍛え上げられた筋肉が着物の上から見える。右腕には、美しい白銀色の刀が握られている。年は、二十代後半ほどだろうか。中々の美青年である。
「はっはは!「磁天叢雲礫剣」か!」
陽影は妖しく笑う。
「いいよ。手合わせ願おう。」
「くっくっく。馬鹿が。」
青年はそう言うと、磁天叢雲礫剣を振った。
「空の窓を開く者」
「無那閃律・羅々刹篭」
陽影の窓に、斬撃が入らなかった。無数の斬撃は窓の合間を針を通すように潜り抜け、陽影に斬撃の雨を降らす。それとともに、陽影は絶命した。
「ったく、肩がこるものだ。」
青年は、羅刹はそう言った。




