表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/40

ハッピーなわけ無いわな

 きっとオレは、独りの世界で起こった出来事を後になってこう呼ぶのだろう。


 想い出。


 想い出にならない過去の話なんてない。

 そしてきっとこれからの事もいつの日にかは、想い出と呼べる日が来るのだろう。


 だから笑え。

 想い出として残ったオレが泣いていたら、オレは嫌だから。


 だから、笑え。

 泣いた分だけ笑え。

 笑った分だけ泣く必要はない。


 泣くな、とは言わない。

 ただ、その分笑え。


 今のオレの物語が。


 後になって笑い話に変えるために。


 オレは笑うんだ。


*************


 目が醒めると、白い天井があった。


 あぁ、死ぬと白い天井が見えるのか。

 そして、気付く。俺はベッドで寝かされていた。

 酸素マスクやら、点滴やら、その他もろもろを付けられながら。寝かされていた。


 あと、覚えておいて欲しいことが一つだけある。


 酸素マスク、めっちゃゴムの匂いがして、気持ち悪くなる。

 付けられる時は気をつけるように。

 って、付けられない事が1番良いんだけどね。


周人(しゅうと)!起きたのか!?」


 ん?周人って誰だ?


 ……………あ!そうそう俺でした。

 長い間呼ばれていなかったので、一瞬誰の名前なのか分からなかった。


 親父とお袋が付けてくれた俺の名前。


 遠周りしてでも良い人になれるように。

 そんな意味が込められた、俺の名前。


 …でもな、俺は親父とお袋に物申したい。

 いやいや、別にこの名前が気に入らないわけじゃない。

 むしろ気に入っている。

 ただな、『遠周り』じゃなくて『遠回り』が正解だと思うんだよ、俺は。

 いやまぁ、気に入っているから文句ではないんだけれど。


 とにかく、俺の名前が呼ばれた。


 それも親父の声だった。

 つまり、この世界には人がいるという事。

 俺以外にもいるという事。


 いつぞやの俺の疑問の答えが出た。


 独りの世界で死んだらどうなるのか?


 答えは至ってシンプルだった。

 ただ、元の世界に戻る。それだけだ。


 笑えるほど簡単で、少し吹き出しそうになる。

 じゃあ、今までの俺はずっと空回りしてたって事か?


 なにそれ。笑うわ。……ホント笑うわ。


 体は毛ほども痛くない。全くの健康体だ。

 自分で酸素マスクやらを外す。

 そして地面に立つ。

 勿論、今までベッドに寝ていたから、裸足だ。

 そして、アロハ服も着ていない。


 …俺以外の人がいるこの世界に、少しだけ、ほんの少しだけ違和感を感じた。その事については、驚きはない。ここ最近ずっと独りだったから。違和感を感じるのも当たり前なものだと思う。


*************


 すぐに、医師のところに連れて行かれた。

 どうやら俺は3ヶ月ほど、意識不明の重体だったらしい。

 その3ヶ月とは、俺が独りの世界で過ごした時間と一緒だった。あれは、あの世界は夢だったのだろうか?


 医者からは「奇跡だ!」とか「あり得ない…」とか、そんなリアクションを受けた。

 …俺ってそんな重大だったの?


*************


 それから少しして、正確に言うならば、精密検査を受けるための1週間経ってから、退院した。


 久々の我が家だった。

 まぁ、独りの世界での出来事を含むなら、別段久し振りでも無かったが。

 リビングの扉を開けると、暖かい空気が俺を包み込んだ。

 それが嬉しかったのは、言うまでも無い。


 やはり、と言うべきかなんなのか分からないけれど、先ず最初に向かったのは、俺の部屋ではなく翔太の部屋だった。

 その部屋には、独りの世界で見たように、満面の笑みを浮かべて写っている翔太の写真があった。


 遺影があった。


 流石にもう泣きはしないが、なんとも言えない喪失感に襲われた。


 天国に行くまでの宿題。

 幸せになる事。

 確かに約束した。だから、俺はこれから先幸せになろうと、そう心から思う。


 翔太の事は、多分一生忘れない。

 だからと言って、幸せになれないわけじゃ無い。

 綺麗事かもしれないけど、あいつの分まで幸せになりたい。

 そんな風に思える俺は、正しいと願う。


*************


 俺の部屋は、変わっていなかった。

 変わらずにあった。

 親が掃除してくれていたのか、綺麗だった。


 確か…俺の記憶が正しければ、机の引き出し。

 その3段目に、日記が入っているはず。

 日記を入れたはず。

 独りの世界で、書いたあの日記を。

 俺がちゃんと生きた証を。証拠を。


 この世界にある筈もない。

 けれど、あってくれとそう願いながら。祈りながら。

 3段目の引き出しを開けると。


 あった。俺の日記が。

 俺の物語が。俺の笑い話が。俺の想い出が。


 1ページ1ページ丁寧にめくる。

 そこには、しっかりと(つづ)られていた。

 想い出が。


 だけど。

 最後のページになにか違うものを感じた。


 俺の文字じゃない文字があった。

 子供らしい、お世辞にも綺麗とは言えない、だけど心が熱くなるような、そんな文字がそこにはあった。


『こっちにくるときバイ○ハザードもわすれずに!』


 言わずもがな。

 誰の文字なのか、すぐ分かった。

 分かってるっての。

 ちゃんと持ってくから、待ってろ。

 あと60年くらい掛かるけど。


 …ちょっと待て。その文字の下。

 何かが消されたような跡があった。


『わらうこと!しあわせになること!わかった?』


 だぁかぁらぁ。

 …分かってる。ちゃんと笑う。ちゃんと幸せになる。

 ちゃんと生きる。

 お前、お兄ちゃんのこと心配し過ぎ。


*************


 これで、俺の人生が終わるわけでは無い。

 つーか、まだ半分も終わってない。


 これが不幸な物語とは、思わない。


 これが幸福な物語とは、思わない。


 どちらでもなく、どちらでもあったと思う。


 人生が終わらない限り、俺は叫び続けたいと思う。


 幸せになりたいと。


 俺は叫び続けるし、願い続ける。

 笑い続けるし、想い出を大切にし続ける。


 幸せの第一歩。俺は親父とお袋に向かって言うんだ。


「世界を一周しようと思う」


 俺が死ぬまで俺の物語は終わらない。



…と、締めくくりでカッコつけたらモテるかな?



どこにでも溢れている言葉。

僕は敢えて使わせて貰います。

人生は一度きりです。

幸せになりたいと思う人にしか幸せは訪れません。

これにて「世界を一周しようと思う」は、完結になりますが、人生が終わるわけではなく主人公からしたら、ただの通過点です。

ただただ周人が成長する話。

何かを感じ取っていただけたらこれ以上の幸せはありません。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ