生きる意味、生きた意味。
この病気が、風邪ではないと分かってから、一週間。
未だ治らず。
むしろ病状は悪化する一方だった。
最近では、頭痛まで酷くなってきた。
『相棒〜、これいつ治るの?』
「オレに聞くなよ。分かるわけないんだから」
病気はやっぱり病気で。
それはどこまでいっても、辛いもので。
夜だって、ロクに眠れなくなってきている。
『この病気治ったら、次は何処行くつもりなんだ?』
【俺】が話を振ってきた。
「全然考えてねぇ」
この旅は、無計画なものだから。
計画は立てない。
と言うより、この病気が治る気がしない。
オレが弱気になっているからなのかもしれないけど。
何故だろう?これっぽっちも治る気がしないんだ。
じゃあ、この病気が治らないとして、その先は何なのだろうか。その先に待っているものは何なのだろうか?
このままずっと寝たきりなのだろうか。
それともこのまま衰弱していって、死ぬのだろうか。
寝たきりは嫌だなぁ。
入院とかした事ある人は分かると思うが、案外暇なのだ。する事がなさ過ぎて、寝る事しか出来ないのだ。
そう考えると、わりかし死ぬ方がマシだと思ったりした。
だって、今のオレが死んでも悲しむ人なんていないのだから。文字通り1人も。
今のままじゃあ、オレの葬式も開かれない。
オレが死んだって、この世界には何ら関係がない。
…でも一応、この世界での最後の人類なのだから、意外に何かが変わるのかもしれない。
例えば、人類以外の生命が新しく誕生するかも。
それは、人類を遥かに超えた何かを出来るかもしれない。
火星へ行って、生活するかもしれない。地球を捨てて、何処かへ旅立つかもしれない。
そう思いにふけっていると、自分が少し笑っている事に気付いた。微笑んでいるのに気付いた。
いや、別に今の想像を笑っているのではない。
そんな想像をしている自分を笑っているのだ。
そんな想像をしている自分を嗤っているのだ。
生きる事を既に諦めているかのような自分を。
生きる事を既に諦めているかのような自分が。
笑って、嗤っているのだった。
それが悪いことだなんて、思っていない。
オレは死ぬことを否定しない。
ただ、肯定もしていないだけだ。
今ではちゃんと自分の考えがまとまったから。
その事について語りたいと思う。
聞き流してもらって構わない。
オレの哲学とやらを。
まず最初に。
人が生きる意味とは何だと思う?
オレは、生きる意味は最初から持っているものではないのだと、そう断言させてもらう。
生きる意味とは、誰かがオレを、自分を望んでくれる。誰かがオレと生きたいと、そう言ってくれることだと思う。
誰かがオレを望んだから。オレは生きる。
つまるところ、生きる意味とは人の所為にしていいのだ。
誰かが望んだから。それでいいのだ。
では、生きた意味とは何だと思う?
生きる意味ではなく、生きた意味とは何だと思う?
それは、生きた意味は人の所為にしてはいけないものだ。
生きる意味とは違う。
オレが、自分が誰かを望んだから。オレが誰かと一緒に居たいと、願ったから。オレが手を伸ばしたいと、叫んだから。幸せになりたいと、声が枯れても叫び続けたから。
それが生きた意味になる。
生きる意味と、生きた意味。
一文字違うだけで、意味合いが全く異なる。
言葉とは、それほど面白く、重く。人の想いで、言葉は紡がれる。紡いだ言葉はたまに、鋭く突き刺さる事もある。だけど、それとは反対に、紡いだ言葉はたまに、人の命さえ救う。
この世界では、オレは【俺】に救われた。
元の世界では、オレは翔太に救われた。
これが、オレの生きた意味。誰かと一緒に居たいと思った、オレの生きた意味。
さてここまで、長く、そして重く語ってしまったが。
ここいらで、急にこんな事を語り出した理由を説明させてもらうとする。
元の世界では、お袋や親父、翔太がオレを望んでくれていたから、それが生きる意味になったのだと思う。その時はまだそんな事に気付きもしなかったが。
この世界は誰も居ない。誰とも居られない。
誰も居ないこの世界で。
誰とも居られないこの世界で。
果たして本当にオレに生きる意味などあるのだろうか。
………想いが重いよ!!




