ぶり返し
「3+3は?」
誰かが聞いた。
「それ知ってる〜、サンタさんでしょ?」
誰かが答えた。
あぁ、これは子供の頃の記憶だ。
この頃はもう既に、人と関わるのが下手くそだった。
「6に決まってるじゃん」
子供のころのオレが答えた。
「****君てば、ナゾナゾも知らないの?変なの〜」
やはり誰かが言った。
何が変なのか、オレには分からなかった。
間違っているのはお前らだと声を大にして言いたかった。
オレは間違っていないのだから。オレが正しいのだから。
そして、今だから分かる。正しさよりも間違いの方が時には大事だと言うことを。
ただ、それだけのすれ違い。
ちいさなすれ違いが重なって、重くなって。
オレには持ち上げることが出来なくなった。
持ち上げようとする事をいつからか、やめた。
関わるのをやめた。
それは諦めとは違う。諦めることすら出来なくてやめた。
その頃は親とまだ仲が良かった。親を苦手だと思うようになったのは、高校に入ったあたりからだった。
これという理由はない。なんとなく、だ。
翔太は、親とオレの仲を取り持とうとした。
親もオレと仲良くしようとした。
ただ、なんとなく、別に。理由もなく苦手だと思っていたオレは情けなく感じた。家族の中で、誰よりも子供だった。
事故に遭って、後悔する時間が出来てむしろ良かったのかもしれない。これまでのオレを見つめ直す時間が必要だった。
オレの思考はここで途絶えた。
*************
チュンチュン。
鳥の鳴き声が聞こえる。
ん?おかしいな。ここはホテルの最上階だぞ?
と、思ったらモーニングコールの音だった。
今更オレしかいないのに、なんでモーニングコールが?!って驚きもない。
オレしかいないのに、この世界は動いているのだ。
多分株価も。
チュンチュン。
はいはい分かりましたよ。
だけど、立ち上がろうとしても、体は動いてくれない。
拘束されている訳でもないので(拘束されていたらそれはそれで大問題だ)どうやらオレの体が言う事を聞いてくれないようだ。
またか…。
また風邪か。こういう場合は、ぶり返しというやつだろう。
風邪がぶり返した。
病み上がりの体を無理やり動かしていたのだから、必然と思えば必然だった。
熱を測ると、38度7分。
前より上がってるじゃねぇか。
頭がボーッとする。
熱って、出てると気付いた時に辛くなってくるよね。
『相棒〜、無理すんなよ〜?』
「お前には言われたくないな。共有してんだろ?体の辛さとかも。てか前にもこのやり取りしたな」
『今度はマジで安静にしてろって〜。ちゃんと治るまでインドから出ないほうがいい』
お前たまに真面目だよな。これもずっと前に言ってる気がする。よく覚えてないけれど。
風邪になったらやる事ないんだよなぁ。
ゲームでもして暇潰しするか。
そうと決まれば、ドラ◯エ。ちなみにオレはIIIが一番好きだった。これはやってる人にしか通じないか。
ゲームをしながら少しずつ考える。
多分だが、オレと【俺】の頭は共有していない。体も。
意識が一つの体に二つ入っているだけだ。
そう考える理由は、頭を共有しているのなら、【俺】の考えている事もオレに分かるはずだからだ。一方通行な訳がない。
まぁ、これだけで断定するわけにもいかないから、あくまでもオレの意見ということだが。
問題は別に共有しているかどうかではないのだ。
共有していないのだとすれば、何故【俺】は最初に共有しているなどと、嘘をついたのか。それが重要なのだ。
考えられるのは、オレに知られたくないことがあるから。
オレに何かを気付かせたいから。そんな所か?
だとして、何を知られたくない?
何に気付かせたい?
【俺】は一体何をしたいのだ?
考えても考えても、目がグルグル、グルグルと回るだけだ。
回って廻って回った。
そして、ある一つの答えに行き着く。
それは。
オレがオレである以上、分かることがない。という事だけだった。そして、いずれその答えは【俺】が教えてくれるだろう。
きっと【俺】は。
オレよりも大人なのだから。
…間延びした声はガキっぽいけれど。
次の話は全く違う舞台になると思います。
安心してください。広げた風呂敷はちゃんと畳みます。。




