表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/40

変化

 体が重い。

 頭が痛い。


 そんな体の変化に気付くこともないくらいに、オレは。


 泣いていた。それも号泣だった。

 涙が止まらない。止まってくれない。

 誰か止めてはくれないか?

 だけど、その声は誰にも届かない。


 涙を止めるのに少し時間がかかった。

 だが、相変わらずオレはベッドで寝転んでいるだけだ。

 今は働きたくない。間違えた、動きたくない。


 オレはトラックに轢かれたらしい。

 ってことはオレはもう死んでいるのかもしれない。

 この独りぼっちの世界こそが天国なのかもしれない。

 いや、地獄か?天国にしては随分と酷い仕打ちだ。

 でも生前(まだ死んでいるかどうか分からないが)に、地獄に逝くような悪行を働いた覚えがない。

 ならやはりここは天国なのではないだろうか(繰り返すがまだ死んでいるかどうかは分からない、あくまで死んでいたらの話だ)。


 というより、それよりも翔太や他の人達はちゃんと助かったのだろうか?

 助かっていたのなら、オレが庇った甲斐があったというものだ。まぁ、庇ったのではなく体が勝手に動いた、が正しい。

 本当にあるもんだな、体が勝手に動くことが。

 案外オレは優しい性格なのかもしれない。

 そんなこと誰からも言われたことがないけれど。


『相棒〜、ちゃんと思い出せたんだな〜。良かった良かった。』

 唐突に話しかけてきた。

 唐突じゃなかったことなんて一度もなかったけど。


「お前、この記憶のこと知ってただろ。じゃないとそんな言い方出来ねぇよな。」


『いや〜、知ってたけど言い出しにくいじゃん?』


 あっさり白状しやがった。


「お前さ、翔太と他の人達が助かったかどうかって知ってる?」


 その言葉に。大した意味なんてなかった。

 ただの確認だった。


『あ〜、無事だよ。他の人達はみんな無事。無傷。』


 だけど返ってきた言葉に。


 弟が入っていなかった。

 それに気付いてしまった。


 つまりそれは。


「他の人達…か。つまり、そういうこと、なんだな?」


『相棒は、鋭いよな〜。つまり、そういうこと、だよ。』


 それは、ここが地獄だったほうがまだマシだと思えるような意味を持つ言葉だった。

 少なくともオレは、そう思った。


 なんで?なんでなんだ?

 声にならない様な、言葉で表せないような感情がオレの頭に巡る。


「なんで!なんでなんだよ!!翔太が…ッ!」

 気付いたら叫んでいた。ベッドの上で泣き叫んでいた。

 涙が溢れる。先程の比ではないくらいに。

 オレの涙で海が出来るのではないかというくらいに。


「まだ…まだ7歳だったんだぜ?人生の十分の一くらいしか生きてないんだぜ?なのにさ……なのにッ!!」


 不公平だな。世界は。

 いつもそうだ。いつだってそうだった。

 何故?オレが庇った意味は?


「人生ってさ…もっと楽しいんじゃねぇの…?翔太だってこれから先もっと楽しいことあったんじゃねぇの?まだ早いだろ!」


 だってまだ……。


「まだ…ゲームも買ってやれてないのに…。約束したじゃん…帰ったらゲーム買ってやるって…。これじゃあ約束守れねぇじゃんよぉ!」


 あんなトラックが来なければ…

 あの時、もうちょっと早く家を出ていれば…


「そうだよ別に翔太じゃなくたってよかったじゃねぇか…」


「別に…別に他の人でも-

『相棒!!』


 オレの言葉が【俺】に遮られた。

 あいつにしては珍しく、強い口調で。


『それは、それだけは言っちゃダメだろ?言ってしまったら相棒は相棒じゃなくなるだろ。きっと翔太だってそんな事望んでないだろ?』


「そんなのはただの綺麗事だ。」


『綺麗事じゃないよ。この言葉は、綺麗事じゃないよ。』


「綺麗事じゃなきゃなんだって言うんだよ?!」


 この気持ちは、怒り、そう呼ばれるものの類だと気付いた。

 だけどその怒りにはぶつける場所がない。


『綺麗事ってのは、最後まで貫くことが出来ないから綺麗事になるんだ。それを最後まで、死ぬまで貫くことが出来たなら、例えそれが綺麗事だったとしても、綺麗事ではなくなるんだよ。』


 この意味、分かるか?

 と、付け足して【俺】はオレに語った。


 親が子供に諭すような言い方をされた。


 それは奇しくもオレが翔太に怒る時に使う口調だった。


 …いつだったか、夢の中で翔太に怒られた時のことを思い出した。その時もオレは泣いていた。

 オレは泣き虫だなぁ…。


「サンキュな、少し楽になった。」

『そかそか〜。なら良かった。』


 これから先、多分また思い出して泣くこともあるだろう。


 でも、それが、生きるということならば。


 ここが天国であろうと地獄であろうと、なんであろうと。


 オレは生き続ける。それに夢の中だけど翔太と約束した。


 お土産を買ってくると。


 笑って帰ってきてやると。


 だから、オレはあの家に笑って帰らなければならない。


*************


【俺】がなんで翔太と他の人達のその後を知っているのかを、考えることを忘れていた。

(追記:日記が書き終わってから付け足した)

書き始めはこの辺りで最終回にしようとしていたのですが、これではバッドエンド過ぎるのでもう少し続けます(笑)。

1話でも書きましたが、これはハッピーエンドでバッドエンドな終わり方を目指しているので。

もう少しお付き合い頂けるととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ