あの日に
目を開けるとそこには翔太がいた。
また夢か…。
「お兄ちゃん。今日は質問があって来たんだよ〜。」
間延びした声が幼さを感じさせる。
「質問?どんな?」
「えっとね〜、"あの日"のこと覚えてる?」
その質問は少し前に他のやつからも聞かれた。
そしてオレの答えも変わらない。
「覚えてないよ。全く。これっぽっちも。」
オレは手で、何かをつまむような仕草をしながら言った。
本当にこれっぽっちも覚えていないのだから。
「そっか〜、変わらない…か。」
翔太のその言葉の意味を聞こうと口を開こうとすると、その前に翔太が言葉を発した。
「知りたい?"あの日"の事。」
翔太が発した言葉を理解するのに時間がかかった。
つまり、翔太は"あの日"の事を知っている?
何故オレが独りになったかを知っているということか?
そうだとしたならオレは…
「知りたい。やっぱりさ、ちゃんと知りたいんだよ。
それが知らなくてもいい事実だとしても。」
「多分だけど、お兄ちゃんはその言葉を後悔するよ?」
「まあ、後でなんで7歳のお前が、後悔なんて小難しい言葉を知っているのかを問い詰めるとして…」
それでも知りたい。
やらずに後悔よりも、やって後悔って言うだろ?
そういうことだ。
この場合、知らずに後悔よりも知って後悔かな?
後悔。おそらくオレはそれをするのだろう。知らなくていい事もこの世の中には確かに存在する。
例えば、オレが大事に取っておいたプリンを弟に食べられたと勘違いして、10歳くらい歳の離れてる弟とマジ喧嘩したにも関わらず、犯人は親父だったこととか。
楽しみにしていた番組を録画して、学校から帰ってきたら見ようと思っていたのに、録れていなくて、オレの設定ミスかな?って自己完結したのに、お袋が裏番組を録画するためにオレの録画設定をいじっていたこととか。
オレの誕生日に親のお金とはいえ、弟がプレゼントをしてくれて素直に喜んでいたら、浮いたお金をお小遣いにしていたこととか。
でも、それでも家族と生きていた元の世界の意味を。
独りになって喜んだり、絶望したりしたこの世界の意味を。
知らずに生きていたいとは思わない。
どちらの世界も今のオレには大切なものだと思えるから。
……昔はどっちの世界も嫌とか言ってたんだけどなぁ。
今とは大違いだ。
まぁまぁ、それもオレが大人になったと言うことで。
「知りたいと思うよ。むしろ知って後悔したい。」
声に出してみると意外に恥ずかしい事を言っている気がした。
オレのその言葉に翔太は満足げに頷いた。
「じゃあ、教えてあげるよ〜。」
瞬間、夢の世界が反転した。反転というより、暗転か?
そして、"あの日"の再現。
オレは"あの日"起きた事を夢で見る。視るの方が正しいかもしれないが。漢字って難しいよなぁ。
日本語って世界でもトップレベルで難しいらしい。
なにせ、漢字、カタカナ、平仮名があるからな。
3ヶ国語あるようなものだ。
では、無駄話もここら辺にして、視るとしよう。
オレの後悔すべき"あの日"を。




