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僻地の門番の話。  作者: 多喜
5/22

交代勤務の三人

ほかのキャラを出してみるがこいつらは本編にかかわらない。

ちょっと主人公にあきたから息抜き。

門番という仕事は忙しいときは忙しいがそれ以外の時は果てしなく暇である。

しかも犯罪者ぐらいしか通らないであろう裏の裏の門ならなおさらである。


だから彼らは本を読んだり、一人素振りに励んだり、おのおの好きに時間をすごしていた。

それでもとがめられないのは彼らの実績と上司が温厚な性質なためだ。


暇をもてあまして集中力を切らすものは門番には向かない、そういえる。

しかし今回の新人はなにか色々規格外であったらしい。

はじめ何をしているか気が付かなかった三人は日がたち、何をしているか気が付くにつれソレを眺めるのが楽しみになっていった。



はじめのうちは特に何も変化は無かった。

いつものごとく眼科に広がるのは荒れた獣道である。

しかし変化はじわじわと訪れていた。


草が無い。

精確にはぼうぼうに生えていたものが短く刈りそろえられていた。

その週が終わる頃には荒れ果てていた草が一面綺麗な状態になった。


無愛想なのか言葉すくなに挨拶してきた新人があの大きな背を丸めて草むしりに励んだのかと思うと少しほほえましい。


次の週、草の一部の土が掘り返されていた。

掘り返され、むき出しになった土から砂利が取り除かれ綺麗にならされている。


そこからはしばらくなんの変化も無い。しいて言うなら定期的に草が刈られていた。

それから数日、夜担当のケビンは嬉々としてもう一人の夜担当のマルシェを呼び出した。


掘り返された土からは何か芽がでていた。

二人は踏まないようにそこに月光で光る白い石を目印代わりに置いた。


昼間、ジンの後を引き継いだルーカスは思わず噴出した。


掘り返された土の一角が白い石で囲まれた姿はどう考えても花壇である。

なにあの新人めっちゃほほえましいことしてるんだけど!

石を置いたのがケビンとマルシェだということを後で知って、自分も何かしたくなりこっそりとジョウロを門の影においてみた。


石を置かれたことで流石のジンも他の門番に自分がしていることを気づかれているのだと悟った。

しかし踏まないように配慮してくれたということはとがめられるわけではないのだろうと理解し、せっせと土いじりにせいを出した。

しまいにはジョウロまで完備されだしたため一気に花壇っぽさがアップした。


マルシェが門に向かうとケビンが何かを見張っていた、真剣な顔に事件かと思い音も立てずに駆け寄る。

そこにいたのは野生の兎。マルシェは、はっと気が付く。

兎は草食動物、つまりこいつらはこの花壇に生えた新しい芽や蕾を狙っている!

それから二人と兎の攻防が三日ほど続いた。


やけにやつれた二人を見たルーカスが理由に思い当たり、小動物が苦手としている香りのするハーブを周りに植えたことで事態は収束した。


ちなみにこのときジンは毛虫とカタツムリ退治に忙しかった。


そうして花壇には紫や黄色の花が咲き、おいしそうな実をつけた。


実はトマト、きゅうり、ナスなどの夏野菜他色々。


家庭菜園かよ!!

三人は各々の時間に心の中で突っ込みをいれた。


三人ともうすうす気が付いていたのでなんともいえないが、まさかの菜園。

いまさらながらにあの体格のいい新人は何を考えてるんだろうと不思議になった。

しかし引継ぎの時挨拶を交わすぐらいの最低限の会話しかしていない身としてはいまさらソレ聞くのはなにか違う気もする。

お互い気が付いているであろうに何も言わず各々で活動するこの関係が楽しかったのだ。



いつの間にか収穫された野菜たちに三人は少しの寂しさを覚えたが、それとなく日々が過ぎていく。

あくる日の食堂にて、頼んだものの他にサラダやトマトスープが付いた。


首をかしげると食堂のオバサンがにっこり笑顔でさらに追加してきた。


「いつもありがとうございます、ってさ。」


その追加メニューは野菜がなくなるまで連日続き、一緒に食べにきた友人に理由を聞かれたがとうとう三人とも口を割らなかったという。






余談だが、小動物を穏便に排除する方法を聞かれた四人の上司であるカイン。

彼らは何をやっているのかとこっそり様子を見に来た。


荒地だったそこにはさまざまなハーブや野菜が植えられ見る限り普通に畑だった。

彼らが守っているのは門なのか畑なのか。

しかし結果的に犯罪は起きそうもない。


「まあいいか。楽しそうだし。」



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