野生動物に迂闊に手をだすと危険
趣味・家庭菜園
特記事項・動物を拾ってきます
紳士マッチョは動物にもやさしいのですという話。
本日もうんざりするほどの温かい日差しを受けたジンが、野菜に光合成を促していると頭上でけたたましい鳴き声がきこえた。
「ギャッギャッギャ」
「ぎいいい」
「ギャーーーー」
「なんだ!?」
しかし見上げた先には何も無い、どうやら鳴き声の主は移動しているらしい。
なんの鳴き声かはわからないが怪しさ満載である。
探るように空を見つづけていると太陽の光を反射させながらヒラヒラと何かがゆっくり落ちてくるのが見えた。地面に落ちる前にそっと手を伸ばす。
「羽?」
ジンの手の中には白に近い灰色の羽がある。
この辺でよく見かけるようになった小鳥の羽よりかなり大型の鳥の鳥の羽のようだ。
金属をすり合わせるような耳障りな音は断続的になっている。
「鳴き声怖っ。」
一人でいる時間が長いせいか最近独り言が多くなったと自覚しながら呟く。
手の中に納まった羽は多少ゆがんでしまっているが濡れたように光る羽の様子からかなり美しい鳥であることが想像される。
鳥の声には聞こえないような怖い鳴き声せはあったが。
「確認するべきか。」
少し悩む、この世界には魔獣というものがいる。大体は野生動物と同じ感じ生態らしいが、中には凶暴なものや自在に魔力を操り人に化けるものもいるらしい。
前に見た角の生えた兎は平和そうな顔しながらネズミ食べるとかガッツリ肉食系だったし。まあそのあと草も食べたから雑食か。
「でもなあ」
呟きながら手に持った羽を唇に当てる。
別に食べるわけではないが、すべすべしたものやふわふわしたものを見ると唇に持ってくるのは昔からの癖だ。
ちなみに幼少期実家で飼っていた犬の耳にもやっていたらしく、帰省するたびにおびえた声を出され逃げられていた。
唇にひんやりとした感触が伝わる。
・・・この羽の持ち主。
「見たいな」
きっと凄く美しいに違いない。
ニィっと口の端を吊り上げる。
ただ美しいものが見たいという純粋な探究心を乗せた瞳は、純粋さゆえにぎらぎらと露骨な光を帯びる。
交代のため早めに門にやってきたルーカスはその様子に思わず胸の前で十字を切った。
ネズミを喰う兎よりよっぽど凶悪そうだっと後にルーカスは友人に語った。
先輩であるルーカスに交代してもらいジンはそのまま先にある林に向かった。
鳴き声は収まっていたがばさばさと羽音がしている。
手に持った羽をくるくる弄ぶ。
鳴き声は何匹かいたようだったが、そこにいるのはなんとなくこの羽の持ち主であるような気がした。
確信や予想ではなく、多分に期待や願望をはらんでいたが予想はあたっていた。
「ぎぎぎぎぎ」
目の前の鳥は鷹に似た姿をしている、大きさもそれぐらいだ。飛ぶ姿はさぞや美しいだろう。
しかし今は手に持った羽と同じ色の翼をおもいっきりばたつかせ蜘蛛の巣のような細いキラキラした糸のようなものに絡まってもがいていた。
「これは」
釣り糸に絡まった水鳥を思い起こさせる姿に思わず顔をしかめるが、羽音にそんな場合じゃないとわれに返る。
「今外してやる」
通じるわけないが話しかける。
突然やってきた人間あいてにおとなしくしているはずも無く伸ばした腕に鋭い爪を立てられた。
動けば動くほど糸は絡みつく。
「おちつけっての。」
「ぎいい」
苦しいせいか鳥とは思えない嫌な鳴き声をあげられる。
触られるのが嫌なんだろう自由が利く範囲で翼を動かしジンに攻撃してくる。
動けば動くほどからまる糸、首にまで絡んだ糸は確実に苦しいだろうに暴れるのをやめない。
しかし糸はなかなか外れない。
自分を警戒して暴れるならいったん離れたほうがいいのだろうが、単に糸が邪魔でもがいているようにも見える。
どちらにしろこのまま暴れてたらこの鳥は死んでしまう!
「いい加減にしろ!」
ともかくこの鳥の動きを止めなくてはと糸をはずそうとしていた両手で鳥を押さえつける。
鋭い爪で攻撃しようとしていたのか鳥は仰向けにひっくり返されたかたちになる。
「・・・おや」
言葉が通じたかのようにとりはピクリとも動かなくなった。
そういえば仰向けにひっくりかえすと鳥っておとなしくなるって聞いたことがあるかもしれない。
はじめからそうしてれば鳥にこんなに負担かけずにすんだのに。
おとなしくなった鳥の羽をなだめる様になでてみる。
「いいこだ。」
では糸をとろうかとためしに思いっきりひっぱるとぶちぶちと切れた。
鳥があんなに暴れても切れないからもっと頑丈だとおもっていたのだが。
木刀の時も思ったがこの身体の筋力ちょっと怖い。
どっかに取り残しが無いか確認するために羽を広げたり頭のつおっと長い毛を撫でたりしたが決して遊んでいるわけではない。
最後に嘴についた血を人差し指で拭う。
ジンの血である。今に至る攻防でジンの腕は血まみれになっていた。
そこまでされても動かない鳥にジンはあわててからだの向きを戻してやる。
が、動かない。
「えっと、どっか怪我してるか?」
言っても通じないのはわかっているがついつい聞きたくなる。
当たり前だが何も言わず鳥はこちらをじっと見てくるだけだ。
「もう変な糸は無くなった、動いて平気だぞ。」
「ぎいぃ」
首をひねるようにこちらを見あげる鳥は、返事のように短く鳴いたが動く気はないらしい。
っていうかその鳴き声は通常運行なのか。
動けないのだろうか、しかしここには角の生えた肉食兎がでる。ほおって置けば飛べない鳥なんて一晩でぺろりだろう。
「暴れるなよ」
言って鳥を持ち上げる、一瞬逃げようと足をばたつかせたが服の中に収納してしまえばおとなしくなった。
門を通るのに隠しただけで、別に羽毛を全身で堪能しようとか思ったわけではい。
でもふかふかで凄く気持ちよかったということは伝えておこう。
寮に戻ると鳥をテーブルに乗せ自分は椅子に座る。
怪我を確認すると足から少し血が出ていたので消毒しようと薬を取りに立ち上がる。
ぐらり、立ちくらみのように視界がゆれる。
疲れてんのかな。
そう思いながら鳥の治療を続けるが眩暈はますます酷くなっていいく。
膝から力が抜けてかくんとバランスを崩す。
明らかに異常事態だが、この身体になってから筋肉痛の一つも起ったことが無かったため対処がよく分からない。
「寝るか。」
大騒ぎして疲れてるだけだったらなんか恥ずかしいし、寝てだめなら医務室いこう。
とりあえず鳥の足は消毒して包帯巻いておく。きゅっとリボン結びにすれば鳥はしげしげと自分の足を眺めている。そのたび結び目がゆれて非常に可愛いです。
「似合ってる」
なんだか気にしているように見えたので言って指でなでる。
鳥はおとなしく撫でられている。
撫でるのをやめると「ぎいい」と不満そうになかれるので違う場所を撫でる。
ぐらりとまた視界がゆれる。あ、これ本格的にやばそう。
目の前にこんな可愛い生き物がいるのに構えないとは・・・無念!!
などとふらついている割に元気な一人芝居を脳内で演じつつベッドに横になる前に窓を全開にした。
「もう変なもんに絡まれないようまっすぐ帰れよ。」
「ぎぎぎ」
絶妙なタイミングで返される鳴き声に、コイツ俺の言うことわかってるんじゃないかと錯覚しそうになりながら鳥の頭のちょっと伸びた毛を撫でる。
それにしても相変わらずひどい鳴き声だ。
窓枠に止まらせた鳥から離れるとジンはベッドに横になる。
腕は血まみれでシーツが汚れるのが気になったが仕方ない。
鳥はその様子をじっと窓辺から見詰めていた。




