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僻地の門番の話。  作者: 多喜
21/22

はじめてのお使い。

ご無沙汰しております。

パソコンはやっぱりだめっぽい。気がついたら夏が終わってしまった。

申し訳ないですが誤字脱字は後日なおしまする!

感想ありがとうございます。

くっついいてないのに日々イチャついてる二人ですよ。

男を落とすなら胃袋を握っておきなさい。

とはルークの姉の台詞だ。

姉といても血は繋がっていない。

幼い頃子供たちが集まれば年上は兄であり姉のポジションになるため便宜上そう呼んでいた。


食は生理的な欲求の一つで生きるために必要不可欠だ。

それを握るということは命を握ることに等しい。それは簡単で単純だが確かに効果的だろうとその当時のルークは思った。

ルークの解釈は恋愛や男女の問題ではなく飼育や主従のそれである。姉の言っていたことはそんな意味ではなかったであろうがそれを知る由もないルークは今になって自分の考えがいささか間違っていたことに気がついた。


「私は、なんて浅はかだったんだ。」


ルークは下唇を軽く噛みながら小さな声でつぶやいた。


「どうかしたのか?」


二人並ぶには狭い流しでルークが洗った皿を受け取りタオルで拭き棚に戻していたジンが動きを止めたルークの顔を覗き込むようにして尋ねた。

心配そうに身をかがめ、視線を合わせてくるジンにごまかすように笑む。


「・・・明日は何を作ろうかなと。」


「あんまり考えすぎるなよ。」


さきほど噛んでいた下唇を労わるように優しく撫でられてくすぐったさに身を引く。

ジンは唇から手を離すと何か思いついたように表情を変えた。


「明日は俺が作るか。」


「いえ、ジンは気にしないでください。」

すっぱりきっぱり断るルーク、しかもなぜか目が座っている。

え、何この子怖い。

最近は声をかけるたびに笑顔だったルークだが、今の表情は久々に引っ掻かれそうな予感がする。

可愛い顔して目の前の青年は割と簡単に手が出ることを知っているジンは己の本能に従いこっくりと素直に頷いた。


ジンに料理を作らせるなんて言語道断。

そんなことをすれば食後一緒に過ごす時間が減るではないか。

ジンの故郷の味を知りたいとも思うがそれは休日にでも教わればいいだろう。



ふっと息をはいてルークは先程の考えに戻る。

それにしても、食事を管理することがこんなに難しいなんて!

栄養バランスについてはジンはなんの好き嫌いも無いようなのでそこまで悩む必要もないことがわかった。

しかし問題は食べやすさだ。

スープものはジンは器を持つのでこぼす心配はないからいいとしてもやはり問題は魚などの身が崩れやすいものや果汁がこぼれやすい果物だろうか。

すべての皿を持つのは料理の種類によっては大きい皿を使うため無理があるし、かと言ってそれらを出さないにはメニューが偏るし。

それに簡単に食べられるものばかりだと食事が早く終わってしまう。

食後は本を読んだり洗濯ものをたたんだり各々まったり過ごすため食事の時間ほどくっついているわけではない。

なのでさっさと終わってしまうのはそれはそれで寂しい気もする、でも食べにくいものは面倒だろうし・・・


むうと、また唇を噛みそうになるが先ほど撫でられた感触を思いだす。

自分で触れられた部分をなぞってみるが、先ほどの様なくすぐったさはなく乾いた皮膚の感触がするだけである。


あの時胃袋を握れと言っていた彼女はいったいそこのあたりはどうしていたんだ!

なにを当たり前のことをなんて思わず聞いておくべきだった。

いまさらどこに住んでいるかなどわからないのでどうしようもないが。料理をする人間ならなにかわかるだろうか。


一生懸命考えているルークであるが彼の悩みは膝の上で食事する、という一点を改善すれば解決することである。

そして食べやすさ重視にできない理由もそこにあるため、料理をする人間に聞いたところで改善することはない。

そんなわけで曲解された姉のセリフが真に理解される日は遠そうだ。





「ところでルーク、食費っていくらぐらいかかってる?」


「食費ですか」


ジンに声をかけられ、指は唇に当てたまま首をかしげるルーク。

しかもなんでそんなこと聞くの?とでも言わんばかりのきょっとん顔だ。


あざとい、実にあざとい。


しかしルークは意識してないのだろう。ジンにだってもちろんそんなことぐらいわかっている。

わかっているが、だからといって静観できるかは別物である。


ちょ、指、そこ俺と変われ。

さっきもうちょい触っとくべきだった!

いやしかしそんなことしたら流石にルークも嫌がるかも。

鳥のときは嘴結構嫌がってたし、いまは直ぐにさわれる距離にいるこのありがたみを大切にすべきだ。やりすぎはよくない。

ああでも口半開きだしもうなんか舌見えそうなかんじだし、いったいなんのトラップだ!


いきなり唇ぷにるのは一般的に考えてありか!?いや、無い!

突然さわってビビられるのもいやだが、お帰りのチューみたいに習慣だと認識されてしまったらほかでそんな生活習慣がばれた時恥ずか死ぬ。

ってゆうか理性がもつきがしない。


ジンはのばしかけた腕をルークの肩に置き、ゆっくりと息を吐いた。



流れで首を撫でるぐらいは、さっき頑張って我慢したので許されるって信じてる!


そんな勝手な言い分が許されているかはともかく、ルークは更に言葉を重ねる。


「食費なら以前頂いた分で足りてますよ。」


「んなわけあるか。」


胸を張って答えるルークにジンは思わず素でつっこんだ。


少し前になにかあったら困るからとルークにお金を渡したが、そんなに大きな額ではない。

いや、一日、二日どこかで過ごすには十分な額ではあるが。

だが男二人しかも片方は魔族、片方は大男である。

そんな二人の胃袋を何日も満足させられる額ではないはずだ。

特に肉とか肉とか肉。

必ずと一品はつく肉料理、たぶんトータル子豚一頭分くらいは食べているはずだ。

いくら安くても渡したぶんでは足がでるはずである。


「ですが、調味料の類はもともとある程度揃っていましたし」


それらはジンが食堂のおばちゃん達にお願いして分けてもらってきたものである。

ルークが来る前もきてしばらくも食堂で食事をしていたが、マッチョを志す男児たるもの一日三食では足りない。

「朝食の果物はジンが買ってきてますし。」


他に特に買い足すものありますか的な反応である。


「・・・・」


え、なにそれ、っつか肉どころか野菜すら買い物リストに入っていないだと!?


調味料以外買わないとか自給自足生活にも程がある。


いやしかし必要なものは買わなきゃいけないとかそのせいで変な魔術師に狙われた的な話もしてたし、根っから自給自足な発想なワケじゃないはずだ!

そんな生活しなきゃならないと思うほどうちの財政ヤバそうにみえたのか、いや確かに買い物行って美味しそうな果物とかルークに似合いそうな服とか情動的に買ったりしてるけど、そんなんルークが知ってるはずないし。

ちなみに買ったモノはいつか使うかもしれないからとルークの目につかないところに大切に保管してある。

ついでにYシャツもルークの目につかないところに保管してある。


うっかりするとルークに布にされるためだ。彼の目指すスムーズなボタンつけまでの道は険しそうである。


「野菜とか買わないのか?」


とりあえず自給自足の原因を探らなくては、そしてもしマジにそこまで金がないと思われているならば訂正の必要がある。

尋ねるジンにルークは笑顔で答えた。


「ジンの作った野菜がありますから!」

・・・原因は俺か!

違うんだ、あれは別に食べるのに困ってたから栽培していたわけじゃなくどっちかっていうと趣味の園芸なんだと主張したいジンの心の声は育てた野菜と別の野菜を交換してきた話をしているルークには伝わるはずもない。

だがせっかく育てた野菜を食べないという選択肢はない、しかも自家栽培なので安全性は保証されている。

それらはジンだけでなく、僻地の門番たちの好奇心や努力の賜物である。

っていうか前にルーク触手は俺がよく行く八百屋にあるとか言ってたのにまさかの買いに行ってないとか。

なら何故知ってるし。


ジンはぐるぐる答えの出ない質問をめぐらせるが、そこのあたりはまあ契約者が何をしていたのか知りたい年頃の魔物の行動力のなせる技であるとだけ言っておこう。



うん、野菜はまあ仕方ない。美味しく出来たんだししかたない。それなら買う必要ないよな。

ジンは答えを出すことを放棄してとりあえず答えの出そうなものから片付けることにした。


「肉とかは買わないのか?」


「どうしてわざわざ買う必要があるんですか?」


「・・・・。」


「・・・・。」



暑いわけでもないのにじわりと背中に汗のにじむ感覚がする。

あついどころかひやりとしてさえいる気がする。




このこ、まさか狩って・・・・!!?


このへんにいる食べられそうな生き物ってことは・・・角の生えたあれしか思い浮かばん!

いやいやまさかそんな。


ルークは一点の曇りもない瞳でジンをみつめている。

そこには嘘やごまかしは一切ないように見える。


「・・血抜きとか大変じゃなかったか。」


おそるおそる尋ねたジンにルークは笑顔でこたえた。


「それほどでもないですよ」


アウトオオオオオー!!

うわああ魔物って食べられるんだ、っていうかもうとっくに血になり肉になってるよな。

前の体では花粉症とかアレルギーとかそこはかとなくあったのになんの苦もなく消化できるんだ。

まったく異変を感じさせないこの体のスペック怖い。


ジンの中ではは角の生えたうさぎで決定したようだが、ルークがなにを狩ってきていたのかはいまとなっては不明である。


しかしこれは本気で金がないと思われてるんじゃなかろうか。


一般的なこちらの収入はわからないが、さすがに食事に困るほどではないとジンは思っている。

しかしそれを示すためじゃあ好きなもの買ってきなさいとお金を渡したところできっとルークは気を使ってしまうだろう。

それならば、とジンはルークの肩に置いた手をぽんぽんと上下させなんどか肩をたたいた。


「なあルーク。明日お使い頼まれてくれないか?」






翌朝、窓から出かけて行くルークをジンは笑顔で見送った。

もちろんハグちゅーは基本装備である。


しかもルークの中では出かけるもの帰宅したものからやるという設定なのかルークからしてくれました。わりと本気で専業主夫になろうか検討した。


ちなみにお使いといってもなんてことはない。

ジンがいつも言っている八百屋に新しく入った果物を買ってきてもらうだけである。

お金は多めに渡してあるし、おつりは好きにしていいと伝えた。

そもそもジンはルークにお財布事情をどう思われているのかわからないので、とりあえず買い物になれてもらうう作戦である。

ついでになにか買ってくればそこから好きなものとか聞くきっかけになればいいなとも考えている。


ジンが知る限りルークが一番気に入っているものは初めに贈ったペンダント、あれはいつも肌身離さず身につけている。

お風呂にまでつけたままなのを目撃して一人じゃ外せないんじゃないかと心配になり外そうかと提案したら全力で逃走された。

さらに外にうかんだまま窓から生首のように頭だけ覗かせて睨まれるという、多分ルークにしかできない謎の威嚇をされた。

気に入ってくれているようで何よりだ。


しかし他のものにたいする執着はかなり薄いようで、本もジンが読んだものをあとから読むぐらいで、これといって好みがあるわけでもなさそうである。

食事もそうだ。

服に至っては何着も同じデザインをもっている始末なので、好みがわかったところでほかのものを着てくれる可能性が下がるだけに終わる。

ジンが似合うと言ったものは積極的に身につけてくれているし、料理も好きだといったものを作ってくれている。

それはルークの優しさなんだろうと言うことはわかるが、おかげで好きなものがよくわからない。


いまだ進展する予定はないがいちおう情報収集だけはしておきたいジンである。


や、だって知ってて困ることないじゃん。

まだ進展しなさそうだとかこのままほのぼの関係も大事だけどきっかけってどこに転がってるかわかんないから。逃して後悔するのは切ないし。少ないチャンスをものにするためにも情報があるに越したことないから。


誰に対しての言い訳かはわからないがこの男、必死である。


「しかし、いいのか。」


「なにがですか?」


ルーカスの言葉に、ジンは今だ手つかずだった地面の石を取り除く手を止めた。ここはいつもの門の前である。

街に魔物が出ようが魔術師が街から一人消えようが基本業務は通常運行である。

門前の菜園が日々広大になっているが夏野菜の恩恵をうけたルーカスはそれについては言及するきはない。彼が気にしているのはいつもはジンの頭上を旋回飛行しつつ見守っているっぽい空飛ぶ青年のことだ。


「だって翼って見えないだけであるんだろ、ぶつかったりしたらバレたりしないか?」


「あ」


日々一緒に寝たり膝抱っこしたりして存在になれていたためジンはその事実をナチュラルに忘れたいた。

今朝もルークを窓から見送ったばかりである。

飛んだり、してないよな。っていうかルーク結構かっこいい顔してるし、店の人に絡まれたり。


そわそわとあたりを見渡すジン。


「今日はこのままここに居ますか?」


「肌寒くなってきたから帰る。」


「ブランケット貸しますから。」


「時間外労働はしない主義だ。」


ルーカスはいつになくきりりとした顔で答えたそうである。



そうしてジンがそわそわ心配する中、ルークは全く関係ない方向で頭を悩ませていた。

お使い自体はごくスムーズに完了した。

ジンの前でこそ敬語だったりするが基本的にルークは誰に対しても上から目線である。さらに言えば特に用もなければ話しかけようとも思っていないため無口、なので店員の女性陣に絡まれることはなく。

しかも服装はすっぽり頭まで覆白い布をかぶり口元だけを出した状態。

とても怪しい。


そんなかんじであるので滞りなく買い物はすんだ。

彼を悩ませているのは残ったお金の使い道である。

別になにも買わなくともいいんだろうが、普段はそんなこと言わないジンがわざわざ言ってきたのだからきっとなにかあるに違いない。

そんな考えを巡らせていた。


わざわざ私に買いに行かせたということは、この八百屋でなにか見せたいものがあったということだろうか。

いやしかしそれならばジンは一緒に来たはずだ。


初回からなにも言わずに帰らせようとしたり、鳥から戻った時にわからないふりをしたりして驚かせたりしてきたのだから、きっと反応をみて楽しんでいるにちがいない。

だからここにジンがいないと言うことは驚かせたいとかではないはずだ。


むむむと眉を寄せるルークは実に考えすぎである。

上記の二つ、ジン自身も大変驚いていたので反応楽しんでいる余裕はそんなになかった。

まあ楽しくなかったといえば嘘だろうが。


昨日のジンの言葉や最近の様子を思い起こしながらルークは通りにある店を見て回る。

わからない、欲しいモノがあればジンは自分で買ってしまうし。

ならば自分が贈られてうれしいものはどうだろう。


ルークは服のうえからきゅっと胸のあたりを握った。


そうして小さく首を横に振る。こういうものはそんなついでのように買うものではない。

ならばやはり必要なものだろうか。しかし私に好きなものをといったのだから好みを反映させるべきなのだろうか。ならばきっと私にも少なからず影響があるものにちがいない。


そうして探し回り最初の八百屋に戻ったルークはハッとなにかに気がついた。


今の時期に買うもので私の好みを反映させられるもの!あれにちがいない!!




そわそわしていたジンがいそいで部屋に帰ると待ち構えていたようにルークが腕に飛び込んできた。


「おかえりなさい。」


毎度のことなのにあいも変わらずキュンとしながらジンはルークを抱きしめ返す。


「ただいま~~~~~。」


さくっと挨拶を終わらせるとルークは何かを手渡してきた。

それは頼んでいた果物と


「・・・・」


なんだろう。

なんか薄い紙につつまれている。

薬っぽい見た目だが。


「秋に植える野菜の種ですよ!」


ルークはどうだと言わんばかりにキラキラした目線を贈ってきた。


野菜の中には調理しづらいものもあるし、ルークの好みも反映されている。

そして夏野菜が収穫されたいまジンにとっても必要なものである。


俺が思ってたのとなんか違う。

・・・ちがうが。


「ありがとな!お疲れ様!」


にこにこ頭をなでればルークは照れたように頬を赤らめながらも抵抗しなかった。

ジンは褒めて育てる主義である。

まあお使い自体は完遂してるのでなにも買わなくともお礼は当然だが。


とりあえずわかったことはルークは葉野菜より根菜系が好きということだ。

役にたつだろうかこの情報。

まあルークが満足げだからそれで良し。


ジンはそんな結論を出したが実はルーク、ちゃんと自分のものも買ってきている。

ジンの瞳の色と同じ真っ黒な器だ。取り皿にする予定である。


後にそれに気がついたジンが、ルークは黒が好きっぽいとクラウンに話したがジンの贈ったペンダントの話を聞いていたクラウンは「なにそれ惚気?」とげんなりしたという。

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