アルコールでも飲み下せないものがある。
感想ありがとうございます!とっても嬉しいです!
っていうかこんないきあたりばったりなの読んでくれている皆様に感謝!お礼の気持ちはうまく言い表せないので喜びは小説を書く事で表させて頂きます。
誤字脱字、明日にでも見直して直す予定です。
ここはクラウンの執務室。ここでクラウンは自室だというのに妙なアウェイ感を感じていた。
部屋にはなぜか先ほどの魔物、魔物と抱き合っていた男、傭兵を助けた新人二人、副官のコリーがいた。
コリーは優秀な副官なので、ジンの話に感動しつつもきちんと裏づけ調査をした。
鳥のルークをジンがやたらつれまわし可愛がっていたことは食堂やその他施設の人には承知の事実であったので、保護したことや時期の証言はすぐに取れた。食堂のおばちゃんたちからすればあくまで鳥の保護としての認識であるが。
ついでにルークの脅迫により魔術師が不在のため呪の証拠を探すための家捜しもしたい放題。
そして証拠がそろうとさくっと書類を作成した。
その仕事の速さは賞賛に値するが、コリー曰く「これぐらい出来なきゃ副官は務まりません」とのことだ。普段どれだけ激務だというのだろう。
「まずこれを見てください!」
差し出された紙束は魔術師が違法な薬品を作っていたことや、ルークにしかけた呪がどれだけ悪質なものかがみっちり書き込まれていた。
常に空気を読むというスキルを発動しているクラウンはその書類で副官の言わんとしていることを察してしまった。
今回の一件、クラウンはあの魔術師が狙われている理由も知っていた。
なのでコリーが肩入れする理由も分からなくはない、しかし素直にのってしまうのも癪だったので「で?」と先を促してみた。
するとそこまで計画されていたのだろう。
今回のことは事情があったのだとコリーは時系列順に語っていく。そしてそれに補足するように魔族の青年がその時々の状況を詳しく説明する。
しかしだんだん雲行きが怪しくなってきた。魔術師とのくだりはいい。
問題はジンが登場したあたりからである。つまりかなり前半戦から物凄い速度で話の流れがおかしくなっている。
これ惚気じゃねえ?俺の耳がおかしいのか。
クラウンは渋い顔で話を聞いていたが他の皆は普通に頷きながら聞いているようだ。
しかし、クラウンの耳は正常である。
ただ受け取る気持ちが違っていた。
これは彼が始めに感じていたアウェイ感に起因している。ほかのメンバーはジンの話の感動を若干引きずっている。なのでいくらルークが惚気たところで物語の一環ぐらいの気持ちで聞いていた。
童話の中でお姫様の美しさを称える賛美がどれだけ過剰でもそういうものだと納得するように、今のルークの話のジンがどんなことになっていてもそういうものだと納得することが出来た。
しかしクラウンはその話を聞いていない。
加えて抱き合っているところまで見ているので割り切って聞くなどできようはずも無い。
「初めはちょっと怖かったんです、あっでも今はそんなこと無いですよ!」
「あの時はこちらを見てもくれないので、嫌われてるのかと思いました。」
といったどこか乙女っぽい発想の発言
「お腹が柔らかいなんて言うのは流石にジンでも失礼です!」
「私の羽は食べても栄養になりませんよ、というか美味しいんですか?」
といった普段どんな生活送ってんのお前らと、問いたくなるような発言。
さらに、いつも鍛錬はかかさない、そういうところを尊敬してる。などのスタンダードな惚気を挟みこみ
「側に居てほしいといわれたときは凄くびっくりしましたが、凄く嬉しかった。」
と思い出すように目をつぶり語る、語る。
さらにそこから始まる非常に仲睦まじい様子。
ちょっと誤解があってジンを疑ってしまったこと、そのあと元の姿にに戻ったときのやり取り。
当然ながらすべてルークの視点から語られるソレは、いろいろ見て歳相応に大人なクラウンですら「なんだそいつマジ男前!」と思うレベルであった。
しかしこれは御伽噺ではない。
実際の人物がお送りしているわけでクラウンはジンを見て、こいつそんなに情熱的なのか・・・いや想像はすまい。
と、大変いたたまれない気分に陥った。
一番つらいはずである惚気られている本人のジンは薄い口元だけの笑みを絶やさぬまま、時々振り返るルークに話の続きを促すように頭を撫でている。
自分は聞いてるだけで恥ずかしいのに、ネタにされても動じないとか最近の若者の感性って凄い。
もう他人の恋バナを素直に楽しめるほど若くない。
しまいにはクラウンが年齢のせいにして逃避し始めた頃ようやく話が終わった。
「よくわかったそういう事情ならしかたない!」
言って書類をまとめるスピードはいつに無く素早かったという。
必死である。
しかしここで決まったのはルークのことだけである。
クラウンが考えていた面倒ごとは別に魔族が出たことだけではない。
その魔族と傭兵が知り合いで、抱き合っていたようすから見るに魔族が非常に懐いているということだ。
しかも今回の惚気で、人間の方で安全か分からない魔族を門の中に連れ込んだことが判明している。
契約云々に関しては未確定であるが、ここまで親密なようすであるから試すぐらいのことはしたはずだ。
魔術師の中には薬品や呪をもって魔族を従属させようとするものが居る。
今回のソレに当たるかどうかは分からないが調べてみなくてはいけない。もしも魔族を使って何かしようとしているならそれなりの処置をしなくてはいけないからだ。
二人の様子を見る限りそんなことは無いだろうと想像は付くがそれでも裏づけは必要なのだ。
それでなくともどれだけ危険か分からない魔族を連れ込み、仲間である傭兵に怪我を負わせている。さらに言えば助けるのは良いが、魔族と知りながら上に何の報告もしていない。
単に危機管理能力の問題ではない。わざと隠しておいて何か企んでいるのではと言われても仕方が無い状況なのだ。
しかし
見る限り平気そうだし、魔族が暴走しないようにジンに言いつけて放置してしまいたい。
クラウンの正直な感想だ。
似たような状況において放置を決め込んだ男が既に一人居たわけだが、クラウンはソレを知らない。
そして残念ながらクラウンは放置を決め込めるような立場でもなかった。
うまいこと取り繕わなければ上からとやかく言われるからだ。
だが今そのあたりを聞けばどうなるか。
確実に惚気の再来である。
その状況に耐えられる気がしなかったクラウンはとりあえず皆を解散させることにした。
後でジンだけ呼び出せばいいと、自分に言い訳するあたり彼は現状の惚気回避を優先させたのだろう。
全員が退室した後、少したってから廊下で何かどさっと重いものが落ちるような音にクラウンは何事かと思い扉を開けた。
そこには廊下の観葉植物の鉢に隠れるように壁に背を預け座り込んでいるジンがいた。
とはいえ身体の大きさ的には丸見えである。
「は、ちょっとおいどうした!?」
クラウンが慌てて側にいくと、ジンは抱えた膝に額を押し当てるようにしながら小刻みに震えていた。
横から見える顔色は紙のように真っ白だ。
めっちゃ震えてるんだけど、でかい図体でいきなり産まれたて?
ってかなんだろうコイツ死ぬの?
尋常ではない様子にそうおもわざるえない。
「大丈夫か?」
もう一度呼びかけるとジンは顔を上げないままぼそっと何かを呟いた。
「ハードルが高い・・・」
「は?」
「惚気、出会いからの惚気を聞かされる意味。羞恥で人が死ぬなら俺の死因は確実にルークだ。なんで俺が居る前で惚気るせめて不在の時にしてくれ頼むから。っていうかなんで全員無反応だよ、だれか止めようよ、あれでいいの。本当にあれで納得できたのか。」
ひーとか、わーとかいいながら大きな身体を小さく丸める姿は滑稽だ。
しかしどうやらあの惚気にダメージを受けていたのは自分だけではないようだとクラウンは少し安心した。
若者すべてがあのノリだというのならクラウンは今期の新人とやっている気がしなかったからだ。
しかしダメージが深刻すぎるのかジンはクラウンに気が付かない。
ルークが見えなくなるまで微笑を浮かべ続けた自分を褒めたい。
っていうか自然的に別れる言い訳思いついた俺の想像力グッジョブ!
恥ずかしいことを言うのはいい。寧ろすらすら出てくる。だって一種の演技だし。自分を見せるというよりこうみられたい自分になりきるって感覚に近い。
だがしかしソレをうっとり語られる時のこのダメージはなんだろう。
めっちゃうっとりしてたね、その顔を俺がさせてると思うとそれはそれでありだけど。
しかしルークそれどこの国の王子様?少女漫画じゃん、マジ俺カッコイイ!いやそんな馬鹿な!
やっている事は何一つ違わないのにルークの目を通すとむっちゃ素敵に聞こえる。
おそるべしルークフィルター、俺であれならほかももろもろ世界が輝いて見えるに違いない。
マジで勘弁してください。おかげで俺のライフはもうゼロよ。
たしかにイメージ作りすぎたけどそんな!そんな・・・。
「ハードルが高すぎるだろ、寧ろ越えられない壁レベル。」
がくっとさらに肩を落とすジン。震えは止まっていたが今度は変わりにほの暗い空気が漂っている。
そろそろいいかとクラウンが声をかけるとジンは顔を上げた。
「・・・」
「・・・・・・」
そして何事もなかったかのようにすっくっと立ち上がる。
「失礼しました。」
ぺこりとクラウンに礼をして去ろうとする後姿はしゃんと背筋が伸びているが、どこかふらついている。
「ハードルは越えられそうか。」
ためしに後ろから呼びかければジンはびっくっと肩を震わせ、震える声で見逃してくださいといった。
その背中を見ながらクラウンは思った。
そんなに辛いのにさっき耐え切ったのか、あの笑みはいっそ悟りの境地か、どれだけかっこつけてんだこいつ。これは下手な罰を与えるよりダメージでかそうだな、と。
「いや、これから飲み会のたびに語り継ぐ。」
クラウンの宣言にジンは膝から崩れ落ちた。
なんでもするのでもう勘弁してくださいと俯く。
「お前今かなりかっこ悪いぞ。」
人気の無い廊下につっぷす屈強な大男、そこはかとなく事件の香りのする図だが、実際は羞恥で死にそうな若者とそれを面白がっている中年が居るだけである。
ジンはクラウンの発言に誰のせいだと言いたげに恨みがましい半眼になる。
見られたクラウンは面白そうにニヤニヤしているだけである。
「・・当面ルークがかっこいいと思ってくれればそれでいい。」
言ってふいっと顔を背けるジン。
それも結構惚気だからな、自覚があるかは分からんが。
コイツに下手な処罰与えたら魔族から攻撃されそうだし今回は全力でからかって罰は軽めで許してやるか。
上がうるさいのはいつものことだし、相手をするのは面倒くさいが仕方ない。
クラウンはふっと笑って、座り込むジンの腕をとり立つように促す。
「仕方ないから語り継ぐのはやめてやる。代わりに酒に付き合え。」
ニヤリと大人気ない笑みを浮べるクラウンはからかう気満々である。
おあつらえ向きに酒も樽で買ったわけだし、と飲む気満々だ。
「遠慮しておきます。」
「なんでもするって言ったよな?」
「・・・・。」
「これから飲み会のたび語り継ぐぞ。」
「是非参加させてください。」
そして始まった酒盛りでジンは初めは上司だからと気を使っていたが、クラウンが下ネタを乱発しだした辺りから色々諦めた。
さっきかっこ悪いところも見られたことだし、あげく酒の肴に根掘り葉掘り聞かれればそんな気分にもなるというものだ。
「かっこ悪いついでにどっか剣術基礎から習えるところとか紹介してください。」
「どんなついでだよ!?」
「俺が怪我をして帰ると犯人探しに精を出す子がいるので、出来るだけ強い人を御願いします。」
「闇討ち前提なのか!?あーまあ心当たりあたってやる。だからあの魔族のことはしっかり見張っとけよ。今度問題起こしたら次はこんなもんじゃすまないからな。」
ちなみにクラウンが今回ルークに下した処置は、この都市内での魔力使用の制限、それとほとぼりが冷めるまで翼は常に隠しておくこと。
破れば罰はジンに与えるということ、ルークの様子を見るにそちらのほうが罰になりそうだったためである。
結局今回は副官の尽力でほぼ無罪に等しい。
真剣な顔で言うクラウンにジンは拳を握る。
「言われなくとも!!おはようからおやすみまで何時だって見守ってますが!」
「高らかになに言ってんのお前!?もーやだ若者の感性が俺にはよくわかんねえ、だって俺巨乳派だもの!」
「そんな!貧乳には夢が詰まってるのに!」
「そんなもの知らん、大は小を兼ねる!ソレが真理だ!」
「真理だと!?」
ジンの場合貧乳云々よりまず男が好きなわけだが、酔っ払いにとってそんなことはどうでもいいことだ。
翌日になれば彼らは本日の会話の半分も覚えていないことだろう。
そんなグダグダの飲み会は酒樽が一つあくまで続いた。
そろそろお開きの時間も近づいてきたころ。
クラウンはジンがぶつぶつ呟いていた越えられない壁とやらについて聞いてみた。
「越えたらなんかあんのか。」
ジンは少し考えて神妙な顔で「なにも、むしろ更に高い壁が出来るだけです。」と答えた。
半ば本気で「大変だな」といえばジンは首を横に振った。
「好きでしてることです。」
だから平気ですとでも、むしろ楽しいですよとでも言いたげな表情だ。
好きな人に対する努力はおしまないと、つまり好きだからなんでもいいと。
突き詰めらばただの惚気だ。
察するが標準装備のクラウンがそれに気がつかない訳がなく、最後の最後で盛大に惚気られたことに
最近の若者の感性ってこわい。と再び思い、今期の新人とのこれからの付き合い方を本気で考えたそうである。




