若者と魔族の想像力
なにかながくなったので分断。
うあっと終わった!書いてると無駄に話に関係ない会話とか入れたくなります。
恥ずかしい!ものっそい目があったぞ、どうなんだあの状況!
この身体になってからまあ色々恥ずかしいこととか試してみたけど!
穴があったら入りたい。いやこの身体のスペックなら入れる穴ぐらい軽く掘れる!いっそ掘る!
ジンは現在ひたすら人気の無いほうへ走っていた。
「どこへ向かっているんですか?」
ぐんぐん上がるスピードにルークがジンを見ようと上体をひねる。
ジンのルークの抱えあげ方はお姫様抱っこ的なものではなく肩に俵担ぎである。
よってルークからジンの顔は見えない。
したかったよ俺だってお姫様抱っこ。でも翼が!とっさに抱えあげるには翼が邪魔だったんだ!!
しかしいくら恥ずかしかったからといっていつまでも走り続けるわけにはいかない。
クラウンに見られて慌てて逃げ出しただけなので目的地なんて無いわけだし。
ルークを地面に下ろすと少し不満そうな顔をされた、ので。
「ルーク、このまま俺と一緒に遠くに逃げないか?」
きゅっとルークの両手をまとめて握りこんでみる。
抱きしめる時とかも思うんだけどさ、ルークって基本硬いよね。
「駆け落ちですか?」
あほなことを言った自覚はある、にもかかわらず弾んだ声で返される。
案外ノリ気のルークが可愛かったので俺は握った手を上に持ってきて指にキスをする。
それにしても駆け落ちか、多分最近読んでた本に状況が似てたからそういったんだろうけど意味分かって言ってるのか。
ルークがオッケーなら俺はいつでも嫁に迎える準備は出来てますが。
でも駆け落ちはないな。極力したくない、だってルークの両親だよ。つまりこの容姿の製造元だろ、ぜったい美人に違いない!!
別に美人に嫌われたくないとかだけじゃなくても、駆け落ちとかそんなルークに苦労させるようなことしない!
時間がかかったとしても俺ちゃんと説得して見せるし!!
だって駆け落ちとか、知り合いにばれないように隠れなきゃいけないだろ。俺は余裕だけどな、そもそも知り合い居ないから。やだそれ切ない。
でもルークは違う、こんな目立つ翼とかあって逃げたり隠れたりとか無理だし、絶対普通の人より大変だし。
「俺はルークに苦労させるようなことしない!」
「苦労なんてそんなっ私はジンと居られればそれで幸せです!」
「ルーク!」
「ジン!」
お互いを抱きしめあう。
とりあえずルークは飛べるので本気で逃げようと思ったら雲の上をとんでしまえば見つからないし、翼は魔力で隠せる。本人が自覚するとおりジンはこの世界に知り合いなど数えるほどしか居ないので隠れる必要は無い。
ルークがまた鳥になっても呪ならばジンがとけるし、戸籍などの制度が整っているわけでもなく、街がきちんと整備されているわけでもないので自然は沢山残っていて木の実も豊富。
なのでジンが想像するほどルークが苦労することはそう無いとだけ言っておこう。
勢いで抱きしめてみて、ちょっとどうなんだこれとジンが少し冷静になりルークを離す。
さてこれからどうしようかとかんがえ始めたところで自分を呼ぶ声がした。
「ジン!良かった無事で!」
今にも泣きそうなウィル。
「だから無事だっていったじゃねえか。」
鼻声のロキ。
「そいつから離れろ!」
ものすごく険しい表情の・・・だれだ。どっかで見たことある、あるけどでてこない。
こう・・・犬っぽい感じの名前だったんだが。
「コリー副官!なんでジンに剣向けてるの!?」
そうそうそんな名前だった。
「あいつは魔族だ!」
「はあ、ジンが魔族なわけねえだろ!」
勢い込んで言うロキの発言は何気に失礼である。
「隣の男の翼が見えないのか!?」
「うおっ」
「本当だ!羽触らせてください!」
そして魔族だと気がついたウィルの発言はゆるぎない。
泣きそうな様子は一瞬にしてどこかへ行ったようである。
そもそも何故泣きそうだったかといえばジンを心配してのことだ。
ジンは先ほどの魔術師と魔族の諍いで攻撃している魔族がルークだと知っていて近づいた。
しかしウィルとロキはそんなこと知らないので囮になって傭兵を逃がしたジンを探していたのだ。
コリー副官は、ついうっかりとかなんとか彼が理解しがたい理由でクラウンが逃がした魔族を追っていた。
「ジン大丈夫だったのか!?」
「離れろ!」
「え、ジンまさか知り合い!?紹介して!!」
「なぜあの魔術師をねらった!魔術師はどこへやった!?」
「ジンどういうことだ?」
「ジン友達とか!?他にも知り合い居るの!?ねえジン!」
「この・・・」
ルークが三人のほうを睨みつけている。
ふわっと風が通り抜けた。
その感覚に覚えがあったジンは慌ててルークを止めようと腕を伸ばす。
しかしジンが止めるまもなくルークは飛び出した。
「ジン、ジンって連呼するな!私だってそんなに呼んでないのに!!」
ルークが掴みかかった先はウィルだった。
先ほどの傭兵には攻撃しようとしたというだけでボコボコ攻撃を仕掛けていたはずだが、剣を向けているコリーを軽くスルーしてウィル一直線だ。
ウィルは服の首元をつかまれ前後に揺さぶられているが視線は翼から離れない。
どんだけ羽ほしいんだ。俺も見たけど、拾って今も大事にとってあるけど。
つやつやして綺麗だしな、今ならもれなくフローラルの香りだし。
なぜか誇らしげなジンである。
「呼べばよくないか。」
ルークの勢いに驚いていたロキの呟きは正論だ、しかし正論だからといって受け入れられるとは限らないのが現実である。
「そんな、用も無いのに呼びつけるなんて出来るわけ無いだろう!」
くわっと噛み付く勢いで今度はロキに狙いを定めたらしいルーク。
ロキは勢いに後退りながらも不思議そうに返す。
「いや、普通に話してたら呼ぶだろ。ってかよばなきゃ誰に話しかけてるか分かんねえだろ。」
「そんなことせずともジンはわかってくれる!」
自信満々に言い切るルーク、基本的に二人きりなので分からないはずが無い。
「そんなだから呼ぶ機会少ないんじゃないの?」
指摘され初めて気が付いたのだろう、ルークは目を見開いてウィルを見返した。
そうだったのか!!
だが私がなにか言おうとするときジンはいつもこちらを見ていてくれたから呼びかける必要が無かったので気が付かなかった。
たとえ他の事をしていても私が何かしようとすればジンはすぐに気づいてくれたし。
最近は少し忙しそうではあったが、それでも朝、夕の食事は一緒にとっているし。あの食べ方は今だ慣れないが決して嫌というわけではない、凄く恥ずかしいがジンは嬉しそうだし。
もちろん私だってあの時間は幸せだといえる、ただ恥ずかしい、ジンのように視線を合わせたまま食べさせられるようになるにはもう少し時間が必要だ。
それに眠るときだって体温を分け合うように寄り添ってベッドに入る、ジンの魔力に包まれるようにして眠るのは酷く安心してできてぐっすり眠れる。
ただ安心しすぎて朝まで目が覚めないのは、魔族としてちょっと不味い気もする。まあジンの隣で危険なことなんて起るはずもないが。
側を離れるときといえば風呂に入っているときぐらいだろうか。まあソレについては大きな風呂があればいいらしいので解消される予定だが。
必要以上に優しくされて、恥ずかしいぐらい構われていることが当たり前になりつつあり、その距離感について考えたことも無かったが、ソレが仇になっていたなんて!!
だがソレを悲観することも無い、一緒に居れば呼ぶ機会なんていくらでもあるはずだ!
だから今問題なのはそこじゃない。
「お前達はジンの何なんだ!!」
ルークはびしっと指をさす。行儀が悪いといいたいところだが、妙に似合っていたためソレを指摘する人間は居ない。
「心の友と書いてシンユウ!」
「!!」
「・・・」
「・・・」
ウィル、俺のことそんな風に思ってくれてたなんて!とか感動すればいいんだろうか。
ジンは思わずロキと顔を見合わせる。
あきらかに話を盛っている。というか完全に悪ノリせある。
しかしそれに気が付かないルークは攻撃の手を緩めた。ルークの中の優先順位的に友人はわりと高位のようだ。
「じゃあ俺は真の友でシンユウで。」
なぜかさらに乗っかるロキにジンは、普通に親しい友人のほうの親友がほしいと思った。
「これってどういう状況ですか」
いつの間にかジンの隣来ていたコリーはジンを見あげた。
街で暴れた魔族が居るので剣に手をかけては居るが、今までのやり取りを見ていて少し警戒心が薄れたらしい。
とりあえず自分以外が名前を呼ぶのが嫌とか妙な嫉妬を見せている魔族からは先ほどの残忍さは見られない。
なので明らかに知り合いっぽい雰囲気のジンに事情を聞くことにしたのだ。
「色々あって。」
どうやってごまかそうとジンが思考をめぐらせているとさらにコリーがずいっとジンの側に寄ってくる。
「ごまかすとためにならないですよ。」
剣は下ろしたとしても目的を忘れたわけではない彼は逃げられないようにがっしりとジンを掴んでいる。
するとコリーだけではなく、ロキもウィルもなぜかルークもジンのほうを見ていた。
四対の瞳に問われジンは仕方なく口を開いた。
三人に嘘をつくのは簡単だ。
ジンにはこの世界においておおよそ過去というものが無い。
調べられても一年にも満たない過去しかたどれない。なので真実だと証明することは出来ないが、嘘だと決め付けることも出来ないはずである。
しかしここにはルークも居る。
下手なことを言って話しにズレが生じれば芋づる式に余計なことまでばれる可能性がある。
なのでジンは素直に今まであったことを語るしかなかった。
後から知ったルークが鳥になっていた経緯、拾ったときルークがどれだけ弱っていたか、怪我の治療、ルークが元に戻ったときどれだけ嬉しかったか。
まあ鳥だと思って拾ったとかいまだに膝抱っこしてるとかはさすがに省いたが。
それらをジンは自分が思いつく限りそれはそれは感動的に語ってみた。
普段から妄想という名のイメトレに勤しみ、無から有を生み出せる妄想族にとって元ネタが有る状況での語りなど容易いことである。
実際起ったことは崩さず、そこに自分がどう思ったかを盛り込み、聞き手の様子を見ながら間を取り、時に煽りながら語られる物語は大変ドラマチックに聞こえたらしい。
「と、言うわけだ。ルークをここに引き止めたのもいわば俺の我侭。だから今回のことで責めを負うのは俺だけにしてほしい。」
とジンが締めくくる頃にはウィルとロキは涙目になっていた。
事情聴取気分で聞いていたコリーにいたっては途中から話に入り込みすぎて今はぼろぼろ涙を流している。
ルーク、当事者で内容を知っているはずのお前までなんでそんなウルウルしてるんだ。
いや、それ以前に別にそんなに感動する要素無かった気がするが。
「そんなの!そんなの全部ルークに呪をかけた魔術師が悪いんじゃん!」
「ジンだけ酷い目にあわせるようなこと絶対嫌です!なんといわれても側を離れたりしませんからね!」
「なにか困っていることがあれば言え、俺に出来ることならしてやる。」
「・・・あー、うん。ありがとう」
それにしても皆、本とかあんまり読まないタイプなのか。だからこれほど免疫無いのか。
こんだけ感動屋さんばっかり揃うと詐欺とかに引っかからないか地味に心配だぞ。
「俺・・・」
コリーが顔を上げる。
「俺、上に掛け合ってみます!街の破壊はともかく、そういう事情が有るなら魔術師のことは情状酌量の余地があるはずです!」
「・・・・・」
決意を固めた副官にジンはとりあえずクビになったら物書きにでもなろうかと割と本気で思案した。




