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僻地の門番の話。  作者: 多喜
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契約しました?

なんとなく短めです。ルークは自由な発想の持ち主です。

とある老いたエルフが調べたことには魔族と人間の契約にはしなくてはいけないことが三つあるとのことだ。


まず一つは魔力の交換。

この条件により大半のものはふるい落とされる。最も難しい条件であるといえる。

交換できる条件は今だ不明瞭であるが最も長い時を生きる種でさえ契約できるものを見つけられた者はほんの一割だったそうだ。


もう一つは名前でお互いに呪をかけること。

これは魔族同士の契約には特に必要ない条件だ。なぜなら名前など普段から呼んでいるからだ。

人間は魔に属するものの本名を正確に発音することが出来ない、ゆえに名をつける。

名前は最も短い呪だ、これは〇〇である。という認識をもって相手を縛る。

もちろん名前は付けられた側が認めなければ何の意味も無い

付ける名前は必ず、名づける側の名の一部をとってつけられる。

自分の名を相手に渡すことで相手に自分をあけわたし、名を与えることで相手を縛る。


私は貴方のモノ、だから貴方は私のモノ。


ちょっとしたヤンデレな気がしないでもないが、ソレがいやな者はもともと契約なんて望まないので今の所この条件に突っ込むものはでていない。



残る一つは相手の姿をお互いに認識していること。

これにいたっては何も言うことは無い。

この条件を満たさず上二つの条件をクリアする事なんてまず不可能であるためだ。

自分の名を呼ぶものがだれであるかわからずに己が呼ばれていると認識するのは難しい。

ならば名前を認識させるのは困難だろう。つける側とて見たことも無いものに名をつけることは出来ない。

名で縛るというのはお互い自覚があって初めて成り立つものだからだ。


万が一出来たとしても「このなかの誰かが俺の契約者。」なんてざっくりした認識ではそもそも契約するメリットがなにもない。


この三つを行う順番は特に決まっていない。ともかく三つの要素さえ満たせれば契約は成り立つのである。


しかしその三つの条件を正確に知っているものは少ない。

大抵の場合一番最初にあがった条件が厳しすぎてそこばかり気にするためほか二つの知名度が低いのだ。

それゆえ、間違った知識が広がり正せるものが居なかった。







「あれ。」


風呂上がり、部屋で着替えていたジンは自分の腰骨の上あたりにできた痣に首を傾ける。


こんなところに痣ができるようなことしたか。


覚えはないが痣はそこに有るのだからきっとなにかしらしてしまったのだろう。

なにやら花の形に見えなくもない痣についてジンはそう思った。


しかしルークの反応は違った。


「ぎぎぎぎ!!」


「どうしたルーク」


最近では至極おとなしくしていたルークが突然暴れだし、ジンは驚いてルークをみやる。

ルークは睨むようにジンを見てからかなり不満そうにギイギイ鳴いていた。


その鳴き声の意味はわからない、しかしその様子は最初に連れてきた時と似ている。

嘴をカチカチ鳴らすのは怒ったときの癖なのかもしれない。


「なにか不満があるのか。」


「ぎいー」


ルークは同意するように一声鳴き窓からそのまま飛びったってしまった。

ちょ、えええええええ!?さっきまで普段どおり俺の膝でもこもこしながら眠そうにしてたのに何事!?

なんでいきなりテンションあがっちゃった!?


とはいえ、ルークの逃走はなにもこれが初めてではない。

前に果物をしこたま与えて、そのまま眠ってしまった日の朝も逃走したし、眠ったまま無意識にお腹に顔をうずめていた日の朝も翼で打たれ逃走された。

はじめてのときは心配しすぎで食堂のおばちゃんに心配をかけるほどだったが、時間が経つと気分が落ち着くのか仕事から戻ってくる頃には先に部屋にいて出迎えてくれる。

きっと今回も自分が何かしたんだろう。何かはさっぱりわからないが。


窓は常に開けっ放しにしてあるのでそのうち戻って来るだろう。

しかし、ルークが居ないと読書をする気分にもなれなくてジンは早々にベッドに入った。




飛び出したルークは一定速度を保ちながらぎゅんぎゅん縄張りのなかを行ったり来たりしている。

鳥達も心得たものでこんなふうに飛んでいるルークに近づこうとするものは誰もいない。


何故!?

どうして!!

どういうことだ!?


ギュンギュン風を切って飛ぶルーク。

スピードは鳥に出せるそれをもはや完璧に超えていた。

ジンのところに居る間に魔力はほとんど回復していて、もう明日明後日にはもとに戻れるぐらいまで来ていた。衣食住の全てが保証されていたため魔力をほとんど消費する事無く予定よりかなり早い回復である。

ルークは戻れる日を楽しみにしていた。それは、とてもとても。


だこらこそジンの様子は許せるものではなかった。期待があった分、服の中に押し込められた時以上に怒っていたかもしれない。


なんでこのタイミングで!!


ルークが考えていたのはジンの痣のことだ。

開きかけのつぼみのような痣。

あれは誰かと契約した証拠にほかならなかった。


いったいどこのどいつだ。自分以外の魔力の気配なんてしていなかったのに!!


そう、ルーク以外の魔族はジンの近くには居なかった。そもそもそう簡単に魔族がほいほい入り込むなど門番たちが許さない。


私が、いつまでもこの姿だから。・・・呆れられてしまったのだろうか。


しゅんと肩を落とすルーク。その哀愁漂う姿をジンが見ていたら多分抱きしめて頬ずりするくらいはしただろう。そんなことルークは知らないだろうが。


呆れて、ほかのものと契約しようとおもったのかもしれない。

いやしかしそんなふうには見えなかった。

スキンシップの頻度は日々高まっていたし、どうかんがえても私以外の魔物が近づく暇などなかったはずだ。ならば他の魔物との契約は相手にはめられたに違いない!


・・・許すまじ。


彼の思想の大半は思い込みと考えすぎでできている。

思い込んだら止まれない方のルークは暴走しながらあいての魔物探しを開始した。


ルークはあれだけ契約契約といっていたのもかかわらず、条件を正確にはあくしていなかった。

正しくはルークが調べた時点で条件はかなり歪められて伝わっていたのだが。


ルークは条件を、魔力及び名前の交換だと思っている。

だからこそ本来の姿に戻れることを楽しみにしていたのだ。

彼はジンが一緒に~云々を言った時点でかなりその気があった。だから名前を付けられたときも即効で頷いたのだ。


しかし魔族の名前は人には難しいらしい。

さすがに鳥の鳴き声じゃ細かい発音を伝えるのに無理があると思っていたから、自分の名前を伝えるのはやはり本来のすがたでと決めていた。


ルークの中ではそれでようやく契約が完了である。


魔力の交換もされていたし、名前、しかも誰も呼ばないということは彼の真名だろう。それももらった。

そう思って楽しみにしていたのである。そしてようやく名乗れると思ったところであの痣だ。


飛び出してきたくもなるというものだ。


まあ、そもそも鳥の状態の鳴き声の意味をジンはひとつも理解していなかったが。

彼はいまだにしっかり、ルークを賢い鳥だとおもっていたのでいたしかたない。

故に契約うんぬんにしてもジンの意識の外である。なので他の魔族と契約出来るはずがない。


しかしあの痣は確かに契約のあかしである。

ジンは拾った鳥に名付けたつもりであったが、鳥の姿もルークであるということには変わりない。

魔力の交換はすんでいたしルークは素直に名を受け入れた。


最近になってようやく痣が目に見えるようになったのはルークの魔力が本来の量まで戻ってきたためだ。

そのことにルークが気がつくのはすっかり魔力がもどり、翌日が終わったころだった。



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