鳥と門番の一日
ルークとルーカスってなにか間違えそうだ。
ラ行の名前が好きなので仕方ないが。これ以上先輩がではってきそうならいずれ直します。
ジンがルーカスから聞いたのは雛鳥の飼育だ。
ソレだってルーカスがいろんな人に聞いたり、調べたりして獲たものなのでぜんぜん精確とはいえない。
ただ自分の体験だぞと念を押して伝えただけだ。
ただ、そんなルーカスよりさらにハードな初心者であったジンはソレを参考にしつつもさらに手を加えていた。
初心者は基本に忠実にという言葉はこの世界でも共通の理念であるはずだが、初心者の癖にそれに従わず妙なオリジナリティを出したくなるというのもまた共通であるようだった。
ジンの朝はルークの鳴き声で始まる。
とはいえソレは爽やかなものではなく、金属音、もしくは悲鳴や断末魔に近いものだ。
「ぎいいいいいいいいい」
実際悲鳴であるが鳴き声としては通常運行である。
ジンはルークを抱えて眠る。呼んだら来てくれたのでその好意に大いに甘えている。お腹に触る意外はえらく寛容にジンのすることを許している。しかしいやなことはもちろん有る。
頭部には一部分だけ長い羽があるのだが何故かジンは明け方になるとその羽を唇に挟んだりそのまま引っ張ったりしてくる。
時々自分の羽に唇をくっつけている光景を見ることがあるルークはいつか抜かれるんじゃないかと怯えていた。
「おはようルーク」
「ぎぎぎ」
それから着替えたジンと鳥は朝食をとる。
食堂は昼からなのでパンなどで済ませていたが鳥が来てから果物をつけるようになった。
ここでルーカスの教えである。ルーカスが拾った鳥は幸いにも虫ではなく果物を食べる系だった。
ジンは鳥を膝に乗せて果物をカットする。そこまではいい。
さらにその一口大にきった果物を鳥の口に運ぶのだ。
ぞくにいう「あ~ん」である。
おもいっきり子ども扱いであるそれに実際は青年であるルークは大いに戸惑った。
しかし食べないとジンは具合が悪いのかと心配したり落ち込んだりするのだ。
しかも流れるような所作でその一連の行動をやってのけるジンに、これは普通のことなのだろうかとすらおもった。とんだ誤解だ。
結局ルークは切り分けられた果物を雛鳥のごとく食べている。
これは私が元の姿に戻ったらやるべきなのだろうか、考えただけで恥ずかしい。ああでもしかし!!
とんだ誤解だ。
「行ってきます。」
「ぎぎい」
ジンはルークの目元に唇をよせて羽の柔らかさを堪能してからでかける。
理由は目元は毛色が少し違っていて可愛いからだ。
本当はあの柔らかそうなお腹に顔をうずめたいのだがルークはそれだけは絶対に許さなかった。
ジンは門の前に着くと即効で畑仕事に取り掛かる。
雑草は生える速度が尋常ではないので気がついたらすることにしている。
それから夜勤のどちらかが置きっぱなしにしていた木刀を拝借して素振りをする。
持ち方はルーカスに習った。一ヵ月後から訓練所の使用許可が下りるため恥をかかないように必死だ。
かっこつける努力は惜しまない!!目指すはマッチョ紳士である。
妄想で十分楽しめるが、あわよくばBL展開に移行したい。そんな年頃だ。
これだけハイスペックなのに股間のブツは今のところ立ちションに便利ぐらいの用途しかない。
本番で困るぐらいなら一回ぐらい女の子試してみようかな。
全くもって紳士ではない、妄想が法に触れれば間違いなく終身刑だろう。
一方ルークはジンが出かけると即効で窓から飛び立つ。
もちろんつかまるかも知れない危険は覚悟の上だ。
しばらくジンが素振りしているところの上空での旋回、ホバリングを繰り返す。
なるほどやはりあの筋肉は毎日の積み重ねか。などと観察する。
それから今度は鳥の姿で出せる最高速度で最近得た縄張りを行ったりきたりする。
その速度は軽く未確認飛行物体である。
別に部屋に帰ってもかまわないのだ。しかしこれは大事な日課だ。
朝、晩、よく熟れた果物を食べさせられ続け狩りもせず飛びもせず部屋に居たらどうなるか。
考えたくも無い。
絶対魔力が回復するまでにもっと身体を絞る!
そしてお互いくたくたになるまで動き回って帰宅。
「ただいま」
「ぎい!」
帰宅後はジンはルークをつれて大浴場に向かう。
部屋にもシャワーはあるのだが、いつも貸切なのでジンは好んで使用している。
流石に鳥類を湯船につけるわけにはいかないので大きめの桶に入ってもらう。
目や嘴にきをつけて泡だらけにする。
実際の鳥にこんなことをしてはいけない。
鳥の羽には水をはじくために油分がある。それがすっかり落とされたら湿気の多い日や雨の日に飛ぶことが出来ない。
ただルークは魔族だったので気にしないだけだ。
泡を流すといったんタオルにくるまれて桶の中で待機させられる。
その間ジンはさっさと自分の事をすます。
ソレが済めばルークはドライヤーで羽がフカフカになるまで風を当てられる。ルークはこれがお気に入りだ。
食事は羞恥心がまだあるがこれなら戻ったときやってもいいとおもっている。
それにしても人間はずいぶんスキンシップが激しいのだな。これなら服の中に入れたのもたいした意味は無かったのかもしれない。
基本的にあまり人間と接することなく生活してきたルークは根本的に人間の生活を勘違いしている。
ジンはジンでこのときばかりはおとなしく触らせてもらえる柔らかいお腹周りの羽毛を思う存分堪能していた。
流石にフローラルの香りがする羽に唇をくっつけるとにげられるが。必ずにげられるのだが、このつやつやっぷりを見ているとやらずには居られない。
セクハラしつつもルークを桶に戻しそのまま食堂へ向かう。
調理場付近はだめだがテラス付近での入室は許可されている。
ここでもルークは膝の上である。
見られて恥ずかしいという気持ちは特に無い、他の人間に触られないなら位置などなんでもいい。
その後部屋に帰ってくるとやることは決まっていないが基本的に鳥の定位置は膝である。
これは群れから離れたならさびしいかもしれないというジンの配慮であるが、ルークはそもそも一人で生活していた。だがここまで食事の時など徹底して膝の上だったのできっとそれが普通なのだとそこに落ち着いていた。
ルークははじめ逐一ジンのすることに戸惑いにげていた。
しかし慣れてしまえばどうということも無い。幼い頃に皆で集まって暖をとるのと同じようなものだと、そんなときばかり動物的な思い出を呼び起こし自分を納得させてしまった。
そうして二人で一つのベッドに就寝。
そんな微笑ましいのか痛々しいのか分からない様子を聞いていたルーカスは、実際ルークを見せられた時おもった。
俺がイメージしていたのとちょっと違うな、と。
そして長年門番として過ごしてきた彼の勘は、そもそも鳥ですらない。
と明確に告げている。
ということはこの姿は擬態、性別までごまかすことは出来ないだろうから擬態を解いても雄のはずだ。
普通は正しい見解だが青年は今鳥から元に戻れないことをルーカスは知らない。
弟の世話を焼くかんじだろうか、だが今まで聞いていたあれこれは家族や兄弟愛で片付けるにはディープ過ぎる。
しかも見る限り鳥と新人は大変仲がよさそうだ。いくら仲がよくても家族で見送りにキスはないだろう。
ルーカスは首をかしげた。
つまり新人はどうやら男もいけるクチらしい。
そして門番でありながら魔物を中に連れ込んだらしい。
さらに魔物とそういった意味で付き合っていて見る限り仲はいい。
新人の性癖などルーカスのかまうところではない。
女が好きなルーカスにとったら新人も魔物もだれと付き合っていようが関係ない。
魔物は連れ込んでるがこれだけ四六時中ベタベタしていたら魔物がなにかしでかす暇ははい。
なんの問題も無い。
「幸せそうでなによりだ。」
告げられた台詞に疑問を抱きつつジンは「ありがとうございます」と返しておいた。
男が好きだという事が妙なところでばれたわけだが、ジンの生活には特に変化はおきなかった。
しかし魔物と付き合っているという誤解から、ジンがこの先輩から風俗に誘われる可能性が一切なくなったということだけは確実である。




