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第57話 幸先の良いスタート

 拓也と双子の妹、そして二人の幼馴染み、五人によるボウリングが、ついに幕を開けた。


 最初にレーンへ立ったのは、拓也。


 ここは、決める!


 第一投。流れを掴むためにも、確実にストライクを取りたいところだった。


 ボールを手にし、静かに構える。喧騒に満ちた場内の音が、ふと遠のいたように感じられる。


 ――集中。


 ゆっくりと助走を始め、滑らかなフォームで腕を振り抜いた。


 放たれたボールは、レーンの上を滑るように真っ直ぐ進む。やがて、わずかに軌道を変え――


 一番ピンと三番ピンの間へ、吸い込まれるように突き刺さった。


 次の瞬間。


 規則正しく並んでいた十本のピンが、爆ぜるように弾け飛ぶ。


「よっしゃあ!」


 思わず拳を握り、ガッツポーズ。


 そのまま振り返り、仲間たちのもとへ戻ると、全員と軽快にハイタッチを交わした。


「一投目からストライクなんて、中々やるじゃない」


 夏香が感心したように言う。


「当然だろ」


 拓也は不敵に笑った。


「お前に勝つためには、このくらいはな」


「へえ……分かってるじゃない」


 口元に浮かぶ余裕の笑み。


 そうだ。こいつに勝つには、全部ストライク狙いくらいじゃないと足りない。


 それほどまでに、夏香の実力は本物だった。


「次は、あたしね」


 夏香が前に出る。


 無駄のない動きでボールを構え、静かに助走へ。


 そして――


 拓也以上に洗練されたフォームで、ボールを放った。


 ボールはレーンの右端をなぞるように進み、そこから大きく弧を描いて左へと曲がる。


 鋭く食い込む一投。


 ピンが激しく弾け飛ぶ。


「あ~あ……一本残っちゃった」


 夏香が軽く肩をすくめた。


 見ると、右端に一本だけピンが残っている。


 ……助かった。


 内心、ほっと息をつく拓也。


 こいつ、前にパーフェクト出してるからな。


 あの記憶が脳裏をよぎる。


 ここで勢いに乗られたら、マジで勝ち目がない。


 だからこそ――


 今のうちに差をつける!


 決意を固める。


 夏香は二投目でその一本を正確に倒し、きっちりとスペアを取った。


「まあ、最初はこんなもんかな」


「随分余裕だな」


「だって、最後に勝つのはあたしだし」


 さらりと言い放つその自信。


「その余裕も、今のうちだ」


 拓也は一歩も引かない。


「本気の俺ってやつを、じっくり見せてやるよ」


「はいはい。せいぜい頑張ってね」


 軽く流される。


 このやろう!


 胸の奥で、闘志がさらに燃え上がった。


「二人とも、すごいね……」


 感心したように春菜が言う。


「ストライクにスペアなんて……。わたし、一本倒れるだけでもすごいのに」


「まあ、あれだ」


 拓也は少し考えながら言った。


「とりあえず、真ん中狙って真っ直ぐ投げることだけ意識しろ。それで何とかなる」


「う、うん……頑張ってみる」


 不安げに頷く春菜。


 ボールを抱え、恐る恐る歩き出す。


 小さな歩幅で進み、ファールラインの手前で止まると――


 ぽとり、とボールを落とすように投げた。


 ゆっくりと転がる球。


 その軌道は、確かに中央を捉えていた。


 やがて少しずつ左へ逸れ――左端のピンを一本だけ倒して落ちる。


「あっ……!」


 ぱっと顔を明るくする春菜。


「拓ちゃんの言う通りにしたら、倒れたよ!」


「おう、いいじゃん」


 拓也は頷いた。


「二投目もその調子でいけ」


「うん!」


 そして二投目。


 今度は右端のピンを一本だけ倒し、春菜のフレームは終了した。


「次は、わたしで~す!」


 元気よく前に出る秋穂。


「それじゃあ、いっきま~す!」


 勢いよく投げられたボールは、多少ぎこちないフォームながらも真っ直ぐ進む。


 そのままピンの中心へと突っ込み――


 激しく弾ける音。


 だが、倒れきらずに残ったのは、後方の左右に一本ずつ。


「ああ、もう! あとちょっとなのに~!」


 悔しそうに地団駄を踏む秋穂。


 二投目ではしっかりと一本を倒し、フレームを終えた。


 なかなかやるじゃん。


 拓也は内心で感心する。


 俺や夏香ほどじゃないにしても、十分うまい。


「次は……わたし……」


 静かに前へ出る冬香。


 その投げ方は、春菜とよく似ていた。


 慎重に、ゆっくりと。


 だが――


 転がり出したボールは、レーンの半ばにも届かないうちに、コロリと溝へ落ちていく。


 ガター。


 二投目も同じ結果。


 結局、一本も倒せずに終わった。


「どんまい! 冬ちゃん!」


「冬香、次は頑張ろう!」


「わたしも下手だから、一緒に頑張ろうね」


 三人が口々に励ます。


「はい……頑張ります……」


 小さく頷く冬香。


「冬香、次は一本でいいから倒そうな」


「うん……」


 それぞれの一フレーム目が終わった。


 だが――


 勝負は、ここからだ。


 拓也は静かにボールを見つめる。


 気は抜かねえ、全力でいく!


 視線の先には、最大のライバル。


 夏香。


 絶対に叩き潰す!


 胸の奥で、闘志が静かに燃え続けていた。


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