第56話 二度目の対決
拓也たち五人は部屋を出て、賑やかな廊下を抜け、ボウリング場へと向かった。
三階にあるその施設へは、エレベーターで一気に上がる。軽い振動とともに扉が開くと、すぐ目の前には明るい照明と楽しげな音が広がっていた。
同じフロアにはカラオケルームも並んでいる。ボウリングが終われば、そのまま移動できるというわけだ。
扉をくぐった瞬間――
視界いっぱいに広がるレーンの数に、思わず足が止まる。
何十本ものレーンが整然と並び、あちこちでボールの転がる音と歓声が響いていた。
「すっご~い! こんなに広いボウリング場、見たことな~い!」
秋穂が目を輝かせる。
「ほんと……広すぎ……」
冬香も小さく呟きながら、きょろきょろと辺りを見回していた。
二人とも、すっかり圧倒されている様子だ。
「みんな、ここで待っててくれ。俺が受付してくる」
そう言い残し、拓也は受付へと向かう。
手続きを済ませると、受付の女性から説明を受けた。
このボウリング場は宿泊客向けに無料で開放されているが、プレイできるのは一人二ゲームまで。
無料か……太っ腹だな。
内心で感心しつつも、拓也は納得する。
まあ、この後カラオケもあるし、二ゲームくらいがちょうどいいか。
最後に『五七番レーン』と書かれたプレートを受け取り、皆の元へ戻った。
「兄貴、どこのレーンでやるの?」
夏香が腕を組みながら尋ねる。
「五七番だな。ここからだと……あっ、あそこだ」
指差した先、やや右側の奥に目的のレーンが見える。
五人は揃ってそこへ移動した。
備え付けのシューズに履き替え、それぞれが自分に合った重さのボールを選ぶ。指に馴染む感触を確かめながら、自然と空気が引き締まっていく。
「よし、準備はいいな?」
拓也が振り返る。
「いいなら、始めるぞ」
「うん、わたしは大丈夫」
春菜が頷く。
「わたしも準備できてま~す!」
秋穂は元気いっぱいに手を挙げた。
「あたしもオーケーよ」
夏香は余裕の表情。
「わたしも……大丈夫」
冬香も静かに答える。
よし、全員オーケーだな。
拓也は小さく息を吸い込んだ。
「それじゃあ、始める前に」
ふと、視線を夏香へ向ける。
「なあ、夏香」
「何よ?」
「卓球のときと同じだ。負けた方は、勝った方の言うことを聞く。それでどうだ?」
一瞬の間。
だが、夏香はすぐに口元を吊り上げた。
「いいわよ。どうせ、また勝つのはあたしだし」
このやろう!
その自信満々な態度に、拓也の闘志が燃え上がる。
今度はそうはいかねえ!
ボールを握る手に、力がこもる。
この勝負、絶対に勝つ!
胸の奥に渦巻くのは、リベンジへの執念。
夏香をギャフンと言わせてやる!
さらに――
そして、家族風呂の最大の障害を攻略して……。
頭の中に、密かな野望が浮かぶ。
みんなで風呂に入るという夢……絶対に叶えてやる!
「ルールは簡単だ」
気持ちを切り替え、拓也は言う。
「二ゲームの合計スコア。高い方が勝ち、それでいいな?」
「オーケー、それでいいわ」
夏香が即答する。
「よし、それじゃあ」
拓也はゆっくりと構えた。
「ゲーム開始だ!」




