表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/76

第30話 気合いの入れ直し

 拓也は一人で簡単に朝食を済ませると、妹たちの分として取り分けておいたおかずにラップをかけ、冷蔵庫へとしまった。


 夏香と冬香が起きてくれば、いつものように勝手に冷蔵庫を開け、適当に食べてくれるだろう。


「さてと……」


 小さく伸びをする。


「春菜が迎えに来るまで、少し寝るか……」


 重たい瞼をこすりながら自室へ戻り、ベッドへ倒れ込むように横になった。


 ほんの少しだけ。


 そう思ったはずだったが、意識はすぐに浅い眠りへと沈んでいく。


 それから暫くして――。


 いつものように、春菜が迎えにやってきた。


 結局ほとんど眠れた気がしないまま、拓也は家を出て、春菜と並んでバス停へと向かう。


「ねえ、拓ちゃん? 大丈夫?」


 隣を歩く春菜が、不安そうに顔を覗き込んできた。


「え? 大丈夫って……何が?」


 眠気の残る頭で問い返すと、春菜は少し呆れたように、けれど優しく言う。


「何がって……。もしかして拓ちゃん、昨日一睡もしてないでしょ?」


「うわっ、何で分かるんだよ?」


 思わず足を止めかける。


「だって……ほら」


 春菜はそっと指先で、自分の目の下を示した。


「凄いくま、できてるもん」


「ええ!? マジで……?」


 慌てて顔に手をやる。


「それは、結構みっともないな」


 苦笑を浮かべる拓也に、春菜はますます心配そうな表情を深めた。


「どうしたの? 寝られない理由でもあったの?」


「いや……理由っていうかさ……」


 拓也は少しだけ視線を逸らし、頭をかく。


 ほんと、心配性だよな、春菜は。


「実は、妹たちの希望に合う温泉旅館をさ、昨日の夜からずっとネットで探してて……」


 小さく息を吐く。


「気づいたら朝になってた」


「ええ……」


 春菜は目を丸くし、それから納得したように頷いた。


「そっか……今日からゴールデンウィークだもんね。人気の旅館は、もうどこもいっぱいだよね」


「まあな……」


 拓也は苦笑混じりに肩をすくめる。


「結局さ、俺の見通しが甘かったってだけなんだけどな……」


「拓ちゃん……」


 春菜の声が、少しだけ柔らかくなる。


「でもまあ、頼まれた以上はさ」


 前を向き、歩きながら続ける。


「学校から帰ったら、もうちょい粘ってみるつもりだよ」


 すると、春菜の表情がぱっと明るくなった。


「うんっ! 拓ちゃんが諦めなければ、きっといい旅館見つかるよ!」


 そう言って、胸の前でぎゅっと両拳を握る。


「わたしも、家に帰ったら手伝うから。一緒に探そうね!」


 小さく気合いを入れるその仕草は、どこか無邪気で――。


 思わず、拓也の頬が緩む。


 なんだか、癒されるな……。


「おう。ありがとな、春菜」


「うんっ!」


 春菜は満面の笑みを浮かべる。


 その屈託のない笑顔は、朝の眠気や疲れを、ほんの少しだけ軽くしてくれるようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ