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如月の結論


夢であってほしい。





なぜ孤独と(それからハムスターと)お友達だった私が愛の言葉なんか囁かれているんだろう。

いや、囁くなんてもんじゃないか。叫ばれていると言った方が正しいか。



それはとても突然だった。

急に生活の隙間に入ってきた大月くんは、鯛めし屋さんの翌々日、飽きもせずに「仕事に少し空きができたから。」と私をご飯に誘ってきた。

この間でだいぶ仲良くなれたような気がした私はうっかりとその誘いにOKを出してしまったのだ。



連れていかれたお店はやっぱりどこか懐かしい雰囲気の和風なお店できっと大月くんと再会したあのお店も彼が選んだのだろうなと思った。


そして、シラフの彼はスマートすぎるお会計術を披露した後、こう言い放ったのだ。




「如月さ、自分に自信なさすぎて、信じてくれないと思うけど。

俺、お前のことすげー好きだよ。あの中学の時から引きずってた。何言っても相手してくれないお前にヤケになって冗談みたいになってたかもしれないけど、12年も経ってるけど。

やっぱり再会して如月のこともっと知りたいって思った。結婚を前提に付き合ってほしい。」





「へっ?!!」



一体全体どこから声が出てるんだろうというような素っ頓狂な音を出してしまった。


いろんな女の子と付き合いすぎて気が狂ったのだろうか。最後の一口、と取っておいた日本酒に手がつけられなくなった。

いやそれどころではない。いったいどうやって返答をするべきなのか。




「どんだけ驚くんだよ。ちょっとくらいは予想してろよ。」



ポリポリと少し気まずそうに頭をかく大月くんは、どこか昔の坊主頭の面影を見せた。それがなぜかすごく笑えてきて、ふふふふ、と怪しい笑みをこぼしてしまった。

すごく、場違いな気がする。





「なんか、ほんとごめん。こういうの慣れてなくて。」



素直に反省しよう。でもそういう性格作ったのは君達だからね、といつか罵ってやろう。と腹黒い私が顔を出す。



「こんな展開にこなれてて欲しくないけどな。返事はまた後日でいいからさ。本気、なんで、、考えてみてください。」



ぽん、と頭を優しく叩かれる。「じゃ、行くか。」やっぱりどうしようもなくスマートにエスコートをしてくれるこの人はなぜ私のような人類に告白をしているんだろう。



はてなマークしか浮かんでこないけれど、その日はこれから仕事だという彼とはお店の前で別れた。タクシーを拾ってくれようとしたけれど、丁寧に断って。

「またね」と言われて、私は曖昧な笑顔を見せた。




日本酒で少しぼーっとする頭を夏の夜風で冷まして帰ろう。ゆっくりと息を吸い込んで、深呼吸をする。



深呼吸をすればするほどわからなくなる。いったい私のどこに惹かれたというのだろう。これが悪質な結婚詐欺だったらどうしよう。


そこまで考えてなぜこんなにも人が信用できないものかと悲しくなる。そして、心の中にふんわりと残してある暖かい感情を思い出してみる。

元気かな。軟禁状態の彼は一体全体どんな可愛い、はたまた綺麗な人と写真を撮られてしまったのだろう。



「ふふっ」

と、自然に笑みがこぼれる。と同時に涙が溢れてくる。順調に家までの帰り道をたどっていたら、皮肉にも葛城将平と出会った店の近くに来ていた。

この川沿いを歩いていればまた追いかけてきてくれるだろうか。





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