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如月の結論2



「ふざけんなよ」



私は今、キレられている。


「えーっと、落ち着きましょう」



ヒールの低いパンプスなのに足にタコを作りながら、なんとなく意地を張り、最後までタクシーには乗らずに帰って来た。

その、直後。


知らない番号からの着信が8件も続いた。そしてチャイム。今もう夜10時なのですが。そーっと覗き穴をのぞけば、怖い顔をしている若手俳優。いや、待って。なんででしょう。本当に今日はキャパオーバーだからやめてほしいけど、これ以上のチャイムは近所迷惑なので静かにドアを開ける。



開けた瞬間、きっと世間でいう「壁ドン」というのを初体験中。壁ドンからの「ガンギレ」って感じですね。はい。



「えっと、お久しぶり。」



わざとらしく、左手を頭の中まで持ってくる。無邪気を演出、、できない。


あれだけ感傷に浸って会いたいと願っていた相手が目の前にいるのに感情がどうにもついていかない。感情の前に現実に頭が追いついていないのだ。



私の中に残っていた猫のような笑顔の面影はなく、凄まじい目力でジリジリと顔を近づけてくる。私、目力だけで殺されるんだろうか。

そして一言、




「ふざけてる?」

と言い放つ葛城将平。

はい、逆鱗触れたようですね。すみませんでした。だけれど一体全体どうなっているの。




「あのさ、一旦、一旦、部屋で話しませんか。」


なんだかお茶できる雰囲気ではないけれど。思い描いていた再会でもないけれど。だけど、その怒っているのに冷たいのに哀しそうな目はキリキリとわたしの心臓を痛めつけてくるからやめてほしい。




「じゃあ、ご飯作って」


腰と頭のすぐ真横にあった手はスルスルと離れていき、勝手知ったら様子でうちに入っていく葛城将平。

怒っている様子だけれど、部屋に入るなりハムスターを見るなり、テンションがとても上がっていたのでその隙に私もよたよたとやっと自分の家に上り込むことができた。




残っていた野菜たちで申し訳ないほど適当に、(いや申し訳なくはないか。)サラダそうめんを作る。

そうめんの上に彩り豊かに具材を盛り付ける。卵は白だしをいれてできるだけ空気を入れずにといた後、薄く焼いておく。細切りにして、きゅうりとトマトと一緒にそうめんの上にそっと乗せる。ナスはたっぷりの油で少しだけ炒めてあげて、ネギを散らし、熱したごま油を上からかければジュッと美味しそうな音がして完成。

自己満足をしてお皿を居間に運ぼうと思えば、



「相変わらず手際いいね。あいつにも食べさせた?」



なんて、いつの間にやらキッチンに侵入してきていた男の声が上から降ってくる。



「あ、あいつって誰ですか。」



「また敬語に戻ってるし。さみしいなー。はーーあ。」



わざとらしくため息をつかれても困る。今更変えられない。少し会わないとすぐ敬語に戻ってしまう。私の悪い癖。




いただきます!と満足そうに猫のような笑顔に戻った男は箸をとった。




「はーーー。うまい!

胃袋捕むってこういうことだよな!」





どういうことだよ!と心の中で突っ込むが、とりあえずこの人の笑顔が見れてよかった。と、心がくつろいでしまう。




「ふふ。」


ほろ酔いの頭では、この嘘みたいな現実が願ってやまなかった現実がまだ信じられなくて。


何故ここにいるの?


何故さっきはあんなに怒っていたの?


何故あんなに突き放すような視線で私を見つめたの?


何故ここで笑っているの?


何故君の笑顔を見てこんなにも私は嬉しくなっているの?




そんな素朴な疑問たちは全部棚の上に持ち上げておいて、見ないふりをして、君の笑顔をずーっとずーっと眺めていたいと思った。



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