27話 殺したい
「なに⁉貴様らはあの大艦隊に突入するとでも言うのか⁉」
「そうです!この突入作戦が成功すれば、人類の勝利は目の前になる可能性があります!」
「今まであの大艦隊に突入するどころか、小型原子爆弾を落とすこともできなかったのだぞ!どうやって突入すると言うのだ⁉」
「作戦があります。成功確立は50%ですが、実行する価値はあるものです」
アメリカ軍本部の軍法会議ではキシリム大将を含めた上役たちが会議をしていた。
そこにはカルラ兵長の姿もあった。
「まず0班から一人、そして他の部隊の者らで囮をやってもらいます。エイリアンか小艦隊が出てくれば囮は成功です。すれば大艦隊を操縦するエイリアンは少なくなり、安全に大艦隊に侵入できます。そして、侵入した後、朱谷 塊を奪還します」
「それが失敗して、0班が全滅したらどうするのかね?」
上役たちの質問にカルラ兵長は答えた。
「0班は死にません。それに、もし死んだらとこのままアメリカに放置しておいても宝の持ち腐れです。逆に今なんです。0班を投入し、人類の反撃のチャンスは」
「わかった、認めよう。作戦開始は2日後とする。各自準備を整えるように」
キシリム大将はそう指示し、会議は終了となった。
その会議の内容はすぐに全部隊に知れ渡った。中にはもう戦いたくないという者もいたが、春香はやっとこのときが来たかの様だった。
その日の夜、春香は寮の庭で一人で夜空を眺めていた。
「待っててね、カイ。もうすぐそっちに行くから」
そんなことを言っていると、誰かがその庭のベンチに座り込んだ。
それはヴァン兵長だった。どうやらタバコを吸いに来たらしい。
「あ、こんばんは」
「三日後に奪還するカイって奴もエイリアンの武器を使えるらしいな」
「え、ええ。それが、どうかしたのですか?」
「面白そうだと思ってな。戦力になるなら欲しい」
「この前はどーでもいいとか言ってましたが?」
「あぁ、気が変わっただけだ。そいつが本当に使える兵士になれるのだろうか、気になってな」
「私、ずっと今までカイの仇を打つために軍で働いていたんです。それが、まさか生きていたなんて。ヴァン兵長はなんで軍に入ったのですか?」
「……理由は無い。あるとすれば、殺したかったからだ」
ヴァン兵長はベンチに寝転がり、そのまま目を閉じ、過去のことを思い出した。
「母さん、ただいま」
「あら、おかえりなさい。今日は早いのね。あまり無理して学校に行くのはダメよ。筋肉が弱まる病気抱えてるんだから」
フランスのとある家に一人の少年が帰宅した。歳は8歳くらいであろう。
少年は帰宅し、いつも通り勉強を始めようとすると、玄関から何か物音が聞こえた。
「何かしら?見てくるわね」
「うん」
少年の母親はそう言い、玄関を見に行くと、玄関から悲鳴と激しい物音が聞こえて来た。
少年はただ事ではないと感じ、玄関の方向を見た瞬間、少年がいる部屋に二人の男が母親を拘束した状態でやってきた。
「……母さん?」
「おい、ガキ。金はどこにあるか教えろ。じゃねぇとてめーのママがどうなるかわからんぞ」
「ヴァン!教えちゃだめよ!早く逃げて!」
母親はそう言うと、男は母親の頭に銃口を突き付けた。
「さぁ、言え。そうすれば助けてやる」
「……あのタンスの上にある箱です」
少年はタンスを指差して答えた。二人の男のうち、一人の男がその箱を調べると、通帳とともに札束が何札も入っていた。
「これでもう良いですよね⁉早くお引き取り下さい!」
拘束されていた母親は男たちにそう言ったが、一人の男がにやけながら答えた。
「そうだな、次の命令に従ったらだ。おい、ガキ」
すると男は少年の足元にナイフを投げ、少年に命令した。
「そのナイフでママを刺すんだ。従わなかったらこの銃でお前らを撃ち殺す」
「母さんを⁉」
「そうだ。大丈夫、お前のママは天国に行くだけだからな」
「そんなこと……できない!」
少年は身体をガクガクと震わせながらナイフを構えた。だが、母親を刺すことはできなかった。
しかし、母親は少年に言う。
「ヴァン、あなたが生き残るためには私を殺すしか無いの!私だってヴァンに殺されるなら死んでも良い。このままじゃ二人とも死んじゃう!」
すると一人の男が脅すように天井に銃弾を撃ち込み怒鳴った。
「さぁ、殺れ!ガキ!」
「早くしなさい!ヴァン!早く!」
「やはりできないのか?なら、殺すしかねぇみてぇだな」
「やめて!ヴァンは病気なの!私は死ぬわ!だからヴァンだけは殺さないで!ヴァン!早くして‼私を殺して!‼」
少年は涙を流しながら、雄叫びをあげながらナイフを構え母親に突進した。
「ウアアアアアアアアアアア‼‼‼‼‼」
そして、少年がナイフを母親に刺した瞬間、少年の迷っていた心は一つの目的を見つけた。とにかく殺すということを。
「良くやったな、ガキ。じゃあな」
「ふ、ガキも使えるもんだな。警察に連絡されたら困っていたのだが」
二人の男たちはそう言いながら、そこから去ろうとしたが、二人の背後にはとてつもない殺気を放った少年がいた。
「殺す、お前らも、殺してやる」
「あぁ?ガキ、今なんて言った?」
一人の男が少年を殴ろうと近づいたとき、少年はその男の腹にナイフを深く突き刺した。
「殺す」
一人の男が腹を押さえながら倒れ込むと、少年はナイフを引き抜き、もう一人の男に向かって走り出した。
「殺す‼」
「このガキっ‼」
もう一人の男も銃で対抗し、銃弾を少年に放ったが、少年は銃弾をナイフで弾き、そのままその男の首をナイフで切り裂いた。
「殺したい!この感覚、忘れたく無い!もっと!もっと!もっと‼もっと‼‼」
ベンチで眠っていたヴァン兵長は目を覚ました。もう夜明けの時間で春香も庭にはいなかった。
「また同じ夢か」
ヴァン兵長は起き上がり、夜明けの空を黙って見上げていた。




