23話 ゲーム開始
《ゲーム開始》
その放送合図とともに6人の兵士たちはジェット機を使い、それぞれ飛んで行った。
「絶対に私が優勝してみせますよ!」
サナはそう言い、風船を割りに行った。ビルとビルの細い隙間を飛び、サナはようやく一つの風船を見つけた。
「あれだ!」
サナはビームソードで軽く突いて風船を割り、割った風船の中から出てきた札を手に入れた。
その札には10という数字が書いてあった。
「これで10点ってことですね!よーし!」
サナはさらに点数を稼ごうと、再び風船を探しに飛んで行った。
一方、ラルフも一つの風船を見つけ、その風船をビームソードで割ろうとしたとき、左のほうから何かが飛んできて、ラルフが割ろうとした風船を割り、札を取って行った。
「一歩遅かったな」
それはヴァンだった。ヴァンはさらにビルとビルの間の奥に浮かぶ風船を見つけ、その風船目掛けて飛びながらラルフに聞く。
「俺が恐いか?」
その瞬間、ラルフはヴァンに散々頭を蹴られたことを思い出した。
「こ、恐くなんかねーよ‼」
するとラルフはヴァンの速さを越す速さで滑空し、風船目掛けてビームソードを振った。
だが、風船と同時に風船の中にある札まで斬れてしまい、何の数字が書いてあったのかわからなくなってしまった。
だが、ヴァンは少し動揺していた。
(あいつ……、一瞬だが、俺よりも速く滑空しただと……)
そのころ、その訓練の様子を訓練所の全てを映していたカメラを見ていた男たちがいた。その中の一人の男の名はカルラ・エフォナード。エイリアンの武器は扱わないが、人類の兵器を存分に扱う姿から人類最強と謳われた男であった。
「なるほど、これが人類の希望と言われている0班ということですか」
「そうだな。この中でも特にブレの無い動きをしている奴には期待できそうですな」
カルラの問いかけに答えたのは、キシリム大将だった。
「奴とは?」
「ヴァン・アイマンだ。カルラ兵長、アレは君の後継者になるかもしれんのぉ」
「奴が兵長になるということですか。いや、ヴァンも気になりますが、俺はもう一人も気になりますね」
「もう一人?」
一方、春香はというとまだ一つも風船を割れていなかった。
そのため春香は全速力で滑空しながら風船を探していた。
「どこなの⁉どこにも風船なんて……」
パァンンッ‼
「い、今のは風船が割れた音!そんな、見つけられない!」
そして、春香は一つも風船が割れないまま訓練は終了した。
みんな割れた割れたと満足な顔をしていたのだが、春香だけは満足できなかった。
《ご苦労様だ諸君。今日はこれで解散。明日に備え休養を取ること》
0班はこの放送後、解散した。
春香は今まで避難民だったため、路上で生活していたが、軍に入り所属班が決まった今、軍人のための生活施設。いわば寮を使うことができた。
だが、部屋の数が少ないがために、春香の部屋にはサナとティアルも同居することになった。
春香は就寝前にティアルに今日の訓練の風船割りについて色々聞いていた。
「どうやったら、風船を見つけられますか⁉私、今日一つも風船を見つけることができずに終わってしまって……」
「見つけられるか。と聞かれてもねぇ。うーん。視野を広くするんだ」
「目を大きく開くということですか?」
「違う違う。きっとこの訓練の風船は、ただの風船割りではなく、エイリアンの討伐と考えないと成功しない。エイリアンはのこのこと春香の目の前に現れたり、道のど真ん中に立っているわけではないだろう」
「つまり、どういうことですか?」
「無責任に聞こえるかもしれないが、目で見るのではなく、感じるんだ。微かな空気の揺れ、微かな音、殺気を完全に消したエイリアンを相手にするには、目で見つけるのはできない。感じ取るしかないんだ」
「てぃ、ティアルさん!ありがとうございます!」
ティアルからアドバイスをもらった春香は、次の日の訓練で、そのことを意識し始めた。
翌日、この日の訓練も風船割りだった。
また昨日と同じようにスタートし、みんなそれぞれ飛んで行った。
(感じるんだ……。音、空気)
目を閉じて滑空している春香は、何を感じ取ったのか、ビルとビルの隙間にレーザー銃からレーザーを撃ち放った。
そのレーザーはビルとビルの隙間にあった風船をかすり、風船を割った。
割れた風船の中から落ちてきた札を春香は手に取り、再び飛んで行った。
「できた!私にも!」
その調子で次々と風船を割り、ポイントを溜めていく春香。その光景をその日もカメラで見ていたカルラ兵長はキシリム大将に言う。
「やはり、奴も期待できそうですね。天野春香。アレには何か必死な訴えと決意を感じる」
「天野か、確かに昨日は一つも風船を割れなかったのに、今日はもう6個目だな。成長力はありますな」
「それと、もう一つ」
カルラ兵長はカメラに映る春香の風船を割る姿を見て答えた。
「何かに対する悲しみと復讐心を感じる……」




