第5話 エルフの少年と生体CPUの少女は街に行きたい
翌朝、ロイグは朝日より早く目を覚ました。昨日までなら木の実を採りに行くくらいしか予定はなかったが、今日は違う。
友達がいる。
エルフという種族は長命である。だから一日という時間を慌てて過ごす者は少ない。しかしロイグは珍しく朝食のパンを半分だけ口へ押し込み、残り半分を持ったまま森へ走っていた。
昨日、アル・アジフを置いてきた倒木の場所、巨大な白い機神は、昨日と変わらず静かに座っている。
「ん? んん?」
ロイグは状況が理解できないでいた。アル・アジフは昨日と同じく正座したまま。その膝の上に、一人の少女が腰掛けていた。
ロイグは立ち止まり、少女と巨大なアルを交互に見た。
少女もロイグを見た。
数秒、森に沈黙が流れる。ロイグが最初に出した結論は、極めて常識的だった。――誰か知らない女の子が友達の上に座っている。
「ごめんね。座るのやめてもらっていいかな?」
「???」
ロイグは少女へ頭を下げた。少女はロイグのこの行動に疑問符を頭に浮かべていると、ロイグは続けた
「君が座っているの、僕の友達なんだ」
少女型アル・アジフの演算装置は、この一言を理解するまで約〇・七秒を必要とした。
友達、対象、巨大機体、つまりロイグは、生体CPUであるアル・アジフと素体の方が同一だと思ってなく別人として謝っている。
結論、説明が必要であるという事。少女型アル・アジフは、自身がアル・アジフである事を説明した。
説明時間、およそ二分、使用した専門用語、三十八……これら説明に関してロイグの理解度……ゼロ。
途中からロイグは「うんうん」と頷いていたので演算装置は理解したものと判断していたが、その頷きは「長い話を早く終わらせてほしい」という意味だった事をあとから学習した。
ロイグはじとーっと生体CPU少女型アル・アジフを見つめる。まず種族がエルフではない。されどエルフのような肌の質感を持っている。服装も高価そうな素材でできたピッチリとした服装。これがパイロットスーツであるという事はロイグは知るわけもない。
結果、ど田舎のエルフの集落にいるロイグが出した答えは……
「さては、都会の女の子ですな! 残念、この森には美味しい木の実とアルしかないんだ! いや、十分すぎた!」
「ふむ、ロイグに信じてもらうには我の素体を動かすのが一番と判断」
少女型アル・アジフが素体に触れると、少女型の腕と素体が輝く。
「?? ちょっとアルにペタペタ触らないで!」
ロイグの言葉に対して、少女型と素体が同時に喋る。
「「ロイグ、まだ保護対象である君と行動をする為に、私の生体ボディを作った。にわかには信じられないだろうが、人工的に人間に近い存在を作る事ができるんだ。そして、この少女の姿、コクピット内にいた前回の契約者とロイグ、君のデータを参照しこの姿を作った」」
これは信じてもらえないだろうなと、アル・アジフの超演算システムは結論を出していたが……
「あー! ホムンクルス! えっ、一日で作れるの? あれって一年位掛からなかったっけ?」
「「マジか!」」
生体CPU生成に近い技術がこのテクノロジーが進んでいなさそうな世界にも存在しているらしい。すぐにアル・アジフは科学に似ている技能・魔法の在を再確認した。
「まぁ、そういう事で、我は生体CPUとしてロイグを待っていたわけだ」
じーっとロイグは少女型アル・アジフを上から下まで眺めてから、当たり前の如く感じた事。
「アルは女の子だったの?」
「星葬機に男性、女性という性別は存在しない。ただし、保護者・母親という概念と元々のベースの契約者を元にしている中でロイグのデータも使用しているからこのような姿になったらしい」
いまいち理解はしていないようだが、ロイグは手を差し出した。それを握るという事を少女型アル・アジフは理解し握る。
「よし! とりあえずアル、街に遊びに行こう。お母さんにお小遣いをもらってさ!」
街、という概念をアル・アジフは超演算システムで叩き出す。惑星間コロニーの中でそういった物を再現していた事を記録より引き出す。
「ロイグの住処より広いんだろうな」
「そりゃもー、凄いよ! いこ、アル!」
「あぁ、転ばないようにな」
ぴょん、ぴょんと森の中をロイグは効率よく歩く、靴だってそこまで運動能力に比例して効果があるようには思えない。されど、森の歩き方を知っているのだろう。
「さすがは我が契約者ロイグだ。只者じゃない」
田舎の集落とは楽しい事が極めて少ない。よって森の奥からロイグが帰ってきた時、その手を女の子と握りながら現れれればそりゃもう。
「ロイグが女を連れてきたー!」
となるわけである。
「我はどこか変なのだろうか? 人間の姿だが、大勢の人々がこちらをみているのだが?」
「あぁ、アルはナウイ、シティーガールっぽいからね。みんな珍しいんだよ」
そうして、昨晩ロイグの母親にアル・アジフを捨てるように言ったロイグの母親も住んでいるロイグの家の前、そして扉を開くとそこに引っ張られ、入室した。
「おかーさん! アルと街に行くからお小遣いちょーだい」
お茶を飲んでいたロイグの母親は、ロイグが女の子と手を繋いでいるのをみて、
「あんた! 次は女の子拾ってきたのかい! もう、この子は! なんでも拾ってきてぇ! ダメでしょ! お家の人が探しているかもしれないじゃないか!」
ストックがおもくそあるので3章分くらいアップしていきます




