↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/22

第3話 拾ってきたスーパーロボットを元の場所に戻すようにお母さんに言われる。

「いやー、カッコいいわー。アル」

「それはどうも、ロイグもよくあの戦いで力を貸してくれた」

「まぁ、100年程度の寿命だからね。大陸横断フルマラソンに出るくらいだよね」

「ははっ……その催しについては聞かない事にしよう」


 ロイグは、先程の星蝕機群ネブラ・ヴァイラスを倒した様子をアル・アジフが再編集して露骨に内容を盛り盛りにした動画を何度も見て楽しんでいる。そこにはやる気に満ち溢れ、命に変えてもお前を倒すとか言っているロイグと、ロイグと同じポーズを取っているアル・アジフ、本来瞬殺だったのだが、長々と死闘が繰り広げられ、最後の切り札と言わんばかりに放たれるラグナロク、どこも破損していないのに映像の中のアル・アジフはボロボロで、ロイグも額から血を流し、ぐったりしながら故郷の惑星を見つめ「勝ったよ。みんな」といもしない戦いで散った仲間たちに思いを馳せて映像は終わる。


「うん、何度見てもイイ。これはイイものだよアル!」

「ははっ、そうか。それはよかった」


 コクピットの中には木の実が一杯、星蝕機群ネブラ・ヴァイラスとの戦い中、と殆ど動画鑑賞で最初に集めた木の実を食べてしまったロイグの要望でアル・アジフが木の実を集めてコクピット内に持ち込んだのである。


「これだけあればお母さんも道草食ってたとかは言わないだろうね。道、木の実食ってたけどさ」

「しかし、ロイグ。私の役目は終わった。機能を停止し、新たなる害意が現れるまで再び眠りにつく事で、君との契約関係が終わり、君は我から解放されるのだが、本当にいいのか?」

「うん、聞けばアルとの契約で中に乗ったり動かしたりする程度だと人間の寿命換算で十年から百年の寿命消費なんでしょ? だったら僕は君との友達を続けるよ。魔法もなしに空も飛べるし、それにエルフ以外で同じ時間を生きて友達になれる相手って少ないからね」


 アル・アジフの中で一つのアンノウンが生まれた。役目を終えたのに、自分が稼働し続けるという本来分岐しえない未来。これに関してはデータが何もない。


「それは構わないのだろうか?」

「いいんじゃない? ずーっと戦ってきたんでしょ? これからは羽根を伸ばしたらいいじゃん。アルは羽根なくても飛べるけどさ」


 一つだけ、超演算で叩き出せる事がある。これからもし戦いがずっと無かったとして、アル・アジフの構成物質の自己修復機能が完全に停止する方がロイグの寿命が尽きるより早いだろうという事。今まで多くの人間の最後を看取っていたアル・アジフがロイグに看取られるかもしれないという未来。

 アル・アジフの中でこの感覚に関してアンサーが出ない為、しばらく様子を見る事とした。


「しかし、エルフという種族はそんなにも長命なのに支配者にはならなかったのだな?」

「あー、そうだねー。アルがいれば世界征服もできるかもねー」

「ロイグ! 私の力は」

「分かってるよ。僕は戦いとか喧嘩とかそんなに好きじゃないし、友達のアルが戦うのもあまり賛成はしないよ。まぁ、エルフってだいたいこんな感じだから支配とか興味ないんじゃない?」


 ロイグは何も考えていないわけじゃない。星葬機アル・アジフの力に関して理解した上でその力を使うつもりはないと断言した。アル・アジフの契約者の中には、この力を星の危機ではなく自身の復讐の為に行使した者もいた。精神の不安定さ、そういった揺らぎがロイグは一切ない。そんなロイグは木の実を食べるのには飽きたらしく何らかの生物を干物にした物を炙ってかじっていた。


 どうやって炙っているか?


「暗き道を照らせ。フィア!」


 と言って指に火を灯す。アル・アジフはロイグとの会話ログを瞬時に確認する。ロイグはこの現象と思われる言葉を言っている。“《《魔法》》”と。


「ロイグ、魔法とはどういう力なのだろうか?」

「えぇー? 魔法? あー、そうだねー。うーん。なんだろう。物心ついた時に読み書きと一緒に学ぶ技能かな? あー、やっぱ違うかも。こんな感じ」


 にょきっと伸びるアル・アジフの内部カメラに対してロイグは右手を見せるとその指一本一本の上に、火、水、風、雷、土と小さく出現させて、それをぱっと消してみせた。


「今、ロイグの心拍数が少し上がり、少し疲労が増えたのを確認」

「そうなんだ。アルも飛んだり、さっきの悪い奴やっつけた時に魔法使ってなくなかった?」


 魔法ではない。あれは究極的科学の頂きが成せる技。ロイグの異質な力の解析が不可能だとアル・アジフは判断すると、全天周囲モニターを表示し、ロイグの集落と思わしき場所を表示した。


「ロイグの家はこの中にあるのか?」

「僕の家はねー。あの風車小屋の三つ隣にある。四角い家だよ」


 ロイグが指指す先を確認すると『承知した。安全な場所に着陸する』と言って周囲に何の振動も衝撃も与えず。ロイグの家の前に降り立った。とはいえ、空から巨人が降りてきた事で集落の人々が集まってくる。コクピットからロイグはアル・アジフの手の上にのると、ゆっくり、アル・アジフはロイグを地面に降ろす。


 ロイグだ!


 とまわりから声が聞こえる中、騒ぎを聞いたロイグの両親が家から出てくる。父親はロイグ同様無表情で少し小太り、母親はロイグと同じ黄金比率の身体的特徴を持ち、状況に唖然としている。


「ロイグあんた! どこかで道草でもくってると思ってたら、なにこれ? 都会のゴーレム? こんな色とりどりの、どうしたのよコレ?」

「これ? アル。森の奥で拾ったんだ。僕の友達! ね? アル」

 

 ロイグにそう言われて、アル・アジフはロイグの両親、そしてエルフの集落の人々に対して胸に手を当てて最高の礼儀を持ってして自己紹介を行った。

 

「我が識別名称は第四位相星葬機・アル・アジフ。銀河終焉評議会が制定した 星葬律第九八七条に基づき、Ω級外宇宙因果災害 星蝕機群《せいしょくきぐん》ネブラ・ヴァイラスへの対抗措置として第零星環から射出された、第四世代クロノ・セフィロティック・フレームである。本機は通常の星間航法ではなく、アルカ・ディラトン偏移航法により第十三観測宇宙へ位相侵入を実施。だが、降着直後に発生した グラン・ノクス偏向の影響で因果座標が八・七エーテル秒ずれ、本来接触予定だった 星鍵保持者との同期に失敗した。その代替として検出されたのが、局地生命群 エルフ種に属する個体識別番号未登録――ロイグ。本来、別種族は 第一樹海協定により契約対象外である。しかし、当該個体は体内に疑似アーカーシャ回路および零相マナ・スパイラルを自然形成しており、星葬因子適合率が理論限界値である九十九・九九九八七%を突破。観測不能領域《ルミナス・ブレイク》への到達を確認したため、仮契約保護条項Δを強制執行。これにより 星葬機関第三拘束鍵 エデン・リミッターを一時解除し、ロイグを**暫定契約管理者 クロノ・マスター**へ昇格。なお、本契約はアストラル・カルマの逆位相共鳴による双方向魂魄接続を前提とするため、契約解除には世界樹監査局による承認印章、または 終焉銀河議会議決番号Ω-000の提出が必要となる。以後、両者は星喰い災群(ヴォイド・ハウリング)ならびに 外殻知性体ネクロフェイズの侵攻阻止を目的として、超因果殲滅計画――ケルベロス・ネビュラを遂行する。ただし、ケルベロス・ネビュラの詳細は第二資料群 ヴァニシング・クロニクルを参照のこと。※現在、その資料群は欠損している」

 

 それはそれは長い専門用語を使って全てのシークレット情報も含めて答えた結果。全員がアル・アジフを見上げて宇宙エルフと化していた。

 そして、ロイグの母であるテミスはこう言った。

 

「こんなデッカいの家には置けないよ。都会の難しい言葉ばっかり使うのも鼻につくしね! ロイグ、元あったところに捨ててきな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。