第2話 寿命をエネルギーに、契約の終命印<タナトスシール>
黒い巨人・星蝕機ネブラ・ヴァイラスは両腕をドリルに変形させ、アル・アジフに襲いかかる。
「なにあれ、凄い殺意高そうだよ。こっわ」
とは言うが心拍数も全く変わってないロイグ、アル・アジフは星蝕機ネブラ・ヴァイラスのドリルを受け止めながら指示を出す。
「ロイグ、反撃を開始する」
「可愛そうだけど、森の環境破壊する外来種なんだよね?」
「…………の非常に悪質なやつだ」
「じゃあ、やっちゃえアル!」
「承知!」
ドゴンとアル・アジフは星蝕機ネブラ・ヴァイラスのドリルの回転を止めるとねじ切った。そして星蝕機ネブラ・ヴァイラスに光の鎖を巻き付け締め付ける。
「いまこそ、永きに渡る因縁、終わらせてくれる! ロイグ、必殺の一撃を叩き込む」
「おうよ。ガンバ!」
木の実をボリボリと食べながらアル・アジフが星蝕機ネブラ・ヴァイラスに向けて背中にある大砲らしき物から何かを発射しようとしている事を他人事のように見つめている。
少しだけ手がドクン、ドクンと脈打ってるけど気にしない。
「ロイグ、どこまで力を貸してもらえるだろうか?」
「ぜーんぶ、どーんとやっちゃえ!」
「そなたが《《最後》》のマスターで良かった。システムオールグリーン。タナトス・シール侵蝕率300%。生体炉ユニット残存寿命……照合。トリニティ・アインソフ。使用制限解除」
その瞬間、ロイグの操縦席ががっちりとホールドされる。「うわ、なにこれ」と困惑するロイグを無視してアル・アジフは続ける。
「終極解放『ラグナロク』承認、星葬機アル・アジフ……終局戦闘形態へ移行」
「あがががが、舌噛んだ!」
もの凄い振動、これこそが星葬機神の惑星すら破壊する科学の頂きの成せる技、最強にして最大最後の究極的破壊力をもってして、人類の悲願であった星蝕機ネブラ・ヴァイラスの完全撃滅を果たす。
星蝕機ネブラ・ヴァイラスが惑星に侵食の種を撒く前に原子核すら残さない光の速さで宇宙空間まで分解しながら飛翔する。
「我がマスター。ロイグ」
アル・アジフがロイグを呼ぶ、脳がシェイクされすぎて一瞬意識が吹っ飛んでいたけど、すぐに覚醒する。でもまだ気分が悪いので、「ウプ、吐きそう。ちょっとアル。《《魔法》》使うね」と言ってロイグはエルフの魔法トータルケアをかけ、乗り物酔いを治す。
そして眼前に広がる宇宙空間を見てロイグは驚く。
「うわぁ、凄い綺麗だねぇ!」
薄いピンクと緑の色をした大きくて丸い物。
「ロイグが守った故郷の姿だ」
「えぇ! あれが僕の住んでるピリアの森なの?」
「いや、ロイグの住む森はここからでは確認できない。だが、我がマスター。ロイグは終わらせたのだ。宇宙を喰らう邪悪なる星蝕機達と我ら星葬機の戦いを」
「マジかー。おつかれ、アル」
とてもいい景色で、見とれていたロイグだったが、ずっと浮いたまま。不思議に思ったロイグがアル・アジフに尋ねた。
「うん、もう十分。宇宙見物はしたから家に帰らないとお母さんブチギレると思うんだ」
ロイグは家に帰りたい、そして母親の名前を出した。それは超科学、超文明が進んだ世界で作られたアル・アジフにとって、人の感情というものを理解できるレベルに達していた悲劇ともいえる。
「すまない。我がマスター、ロイグ」
「えっ……帰り方分からない系?」
「違うんだ。もうロイグ、君には時間が残されていない。こうして話しをする時間がある事の方が不思議なくらいだ」
ロイグはアル・アジフの中にいるわけでアル・アジフの表情は分からない、というかそもそも対面しても分からないのだが、何か含んだ物言いに聞いてみた。
「くわしく」
「君の手に赤い紋章があるだろう?」
「赤い紋章? うわ、タトゥー? これお母さんに怒られるやつじゃん……新しい魔法呪印とかで騙せないかな……」
「そうだ。その紋章はタナトスシール。終命印と呼ばれている。私と契約する事でマスターは生体炉となり寿命を使い私の力を引き出すのだ。その印が消えた時、生体炉は役目を終え、命が尽きる」
「いや、それ先に言わなきゃ! アル。それはよくない! すごくよくない。違法契約だよ?」
ロイグの言う事は最もで、超科学の超演算システムをもってしても少しばかり長考してしまう。そしてアル・アジフは答えた。
「あの時は目の前の惑星の命がかかっていて、説明する時間はなかった」
「いやいやいや、あったね。あの僕に説明する時のお芝居みたいな画面を見せてた時だよ」
ぐうのねも出ないロイグのつっこみにアル・アジフは少し長考してからこういう場合は許しをえれないとしても己の過ちを謝罪する他ないと超演算システムが叩き出し、
「本当にすまない」
「すまないではすまないよ。アル、僕はあとどのくらい生きられるのさ?」
あまりにも冷静にそう言うロイグ、今までの契約者達も覚悟ガンギマりの者達がいたが、ここまで落ち着いて終わりの状況を確認しようとした者はいない。というか、ロイグは普通の少年である。
「腕のタナトスシールが消えた時、もう薄っすらとしているだろう?」
「いやいやいや、めちゃくちゃ濃く出てるよ。というかこれ、困るんだけど! お母さんに不良になったって怒られちゃうじゃん」
「濃い?」
タナトスシール、終命印はその個体の寿命と濃さが比例する。コクピット内部にアル・アジフは小型カメラをニョキッと出してロイグの腕を確認。
「……判定、生存寿命。おおよそ99.99%存命可能……ロイグ、君は先程の終極解放を使った事で100年近い寿命を消費したんだ」
本来、使用後にそのまま眠るように息を引き取る程の寿命の消費である。アル・アジフは何かの間違いではないかと演算を再度行おうとした時、ロイグから出た言葉。
「なーんだ。たった100年? まぁ、いいよ。そのくらい」
「…………は?」
100年の寿命をたったそのくらいとロイグは言った。すぐさま、アル・アジフはロイグが長寿の種族であると認識を更新した。だが……たった100年。今まで長寿の人間は確かにいた、それでも長くて300年程。
「ロイグ、君の寿命は一体どのくらいなんだい?」
「僕の寿命? さぁ? 病気とかもあるから分からないけど、ひぃひぃひぃひぃひぃひぃひぃおじいちゃんが死んだのが40万才とかじゃないかな?」
星葬機アル・アジフは契約者とシンクロする、なので思考や言葉遣い等が学習されていく。そこでアル・アジフの超高度な文明で生み出された超演算が出した答え。
「なにそれ、怖っ!」
プロローグの4話は本日全部投稿予定です。




