第1話 エルフの少年、スーパーロボットを拾う
剣と魔法の世界リディンワールド、そんな世界に空よりも高い、星よりも遠いところから二つの白と黒の影が揉み合うように墜落してくる。
それは黒き者を星々を侵略し惑星そのものを金属に書き換える金属生命体、星蝕機群ネブラ・ヴァイラス、白き者をそれらネブラ・ヴァイラスを打ち砕く為に遥か遠い惑星の超科学によって生み出された人造神、もとい終局兵器が一つ、星葬機アル・アジフ。
生体炉が尽きてどれだけの時間が経っただろうか?
あと一歩、もう一歩で最後のネブラ・ヴァイラスを討ち滅ぼし役目を終える事ができる。
アル・アジフは多くの生体炉と契約してきた。ある者は家族を守る為、ある者は奪われた惑星の復讐を果たす為、人間という生物の生体炉としての使用時間は長くて10年程。色んな人間がいた。
でも全員、自分に同じ事を言った。
“お願い、世界を救って”
あと一人、あと一人生体炉がいれば最後のネブラ・ヴァイラスを滅ぼしこの惑星の危機は去る。
アル・アジフのカメラに映し出されたのは木の上に上り、この世界に自生しているであろうなんらかの実を齧りながらこっちを見ている耳の長い人間の子供だった。
目があったのが分かったのか、木の実を隠そうとする。
「あげないよ」
静かな感情をあまり隠さない表情と声だった。それにアル・アジフは周囲に他の人間がいない事を確認し、最終決断をした。
子供を生体炉に使う。
これ以上、不幸な惑星を産まない為に……
「力が欲しいか?」
「いや、別に」
「この星に未曾有の危機が迫っている」
「怖い怖い。なにこの巨人、ボケてるのかな?」
今ひとつ状況を理解していない少年だったが、漆黒の巨人、星蝕機群ネブラ・ヴァイラスが起き上がりアル・アジフに襲いかかった。その反動で少年の座ってる木は折れて倒木。そしてどすんと倒れたアル・アジフのコクピットが開いた。
「うわ! 白骨化して干からびた死体だ!」
驚いてそう言っているが表情は全く変わらない。そういう人種なのかとアル・アジフは思いながらも危険な状況の為、少年をコクピットに入れて立ち上がった。
「なになに、えっ、白骨死体と一緒じゃん、こっわ」
全天方位のモニターが表示される。この世界にこれほどのテクノロジーはないと思われるが、少年は落ち着いた様子で、
「すっげー、たっかー」
と周囲を見渡している。白骨遺体の膝の上に座りながら状況を理解しようとしていた。そして彼がエースパイロット以上の精神力を持っている少年だとアル・アジフは理解した。
「我が名は星葬機アル・アジフ。そなたが我の次なるマスターに選ばれた」
「怖い怖い。勝手に選ばないで、僕はロイグ。よろしくね。アル」
「ロイグ、そなたの真名を我に刻み星葬炉の契約を」
「しないって、アルってもしかしてあれ? ポーションを安く売るとか言って水で薄めたの売りに来る商人? だとしたら降ろして!」
アル・アジフの中に備わっている超演算システムが叩き出した答え。ロイグは今、アル・アジフが詐欺行為をしようとしているのではと疑っている。星葬炉契約はお互いの信頼なくしてありえない。
「違う。我はこの惑星を守る為に星蝕機群ネブラ・ヴァイラスを追い、星間ターボエフェクトでここまでやってきた。最後の一体、それをデストロイドクリアする事を目的としている」
じとーっとロイグはコクピット内で木の実を食べながらアル・アジフの話しを胡散臭そうに聞いて、そして言った。
「エルフは外の世界に疎いからってさも難しい言葉を使って説明して凄い事みたいに言って騙してくる人多いんだよね。お母さんとお父さんが言ってた」
アル・アジフは、超演算システムでロイグにわかりやすく説明する為、何通りもの説明方法を考えた結果、コクピット内にモニターを展開した。
「よく分かる。これまでの我と契約者達」
子供にはアニメーションを見せるのが一番だと、判断した。
“世界には様々な星々があり、みんな平和に暮らしていました。が、ある時星を金属の固まりにしてしまう悪い奴がでてきたのです。それらを退治する為に凄い賢い人たちが金属に変わった星を葬る機神、アル・アジフ達を作りました。アル・アジフは人間と契約し協力する事で悪い奴をやっつけてきました。そして今、ロイグの星に悪いやつがやってきたのでそれをアル・アジフは倒したいのです。最後の一匹で、今までの契約者達との約束でもありました!
「次回、星葬機アル・アジフ。ロイグと契約できたら世界を救えて約束も守れるの巻」
「なるほど、それは大変だ。ところでさっきの動くお芝居の続きは?」
アル・アジフの超演算システムがこれはいけると叩き出した。先程まで怪しんでいたロイグが明らかに興味をもっている。
「それは、我とロイグが契約をしたあと、あの黒い巨人・星蝕機ネブラ・ヴァイラスを倒したら」
「よし乗った!」
「ロイグの真名を我に」
「真名ってフルネーム?」
「そうだ」
「ロイグ・フェル・アーディル・ル・ヴァン・エルディオス………ええっと、ええっとあと二つか三つあったけど忘れちゃった。僕の事はロイグでいいよ」
「……特例承認、我がマスター、ロイグ!」
「《《友達》》でいいよアル」
そんなこんなで温度感の違う二人が契約する事になった。目の前には惑星を金属の固まりにしてしまう怪物、今ひとつ状況を理解していないロイグと、やる気、もとい殺る気満々のアル・アジフ。二人の共闘が始まった。
どうぞよろしく、最新作です。
SFとファンタジーのスーパーロボットをエルフの時間感覚で捨てに行く話です。
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