第7話 チュンチュンむにゅ〜〜
イラストに、うちのチャピ子がもこもこに変わって出演しています。第2話は第7話の間違いです。
秋なのに、昨日から激しい雨が降りました。
ようやく雨が上がったのは、お昼過ぎのことです。るいは、大好きな黄色いカッパに袖を通しました。フードを深く被ると、カサカサと耳の奥で静かな音がします。
足元には、お気に入りの青い長靴。
くるぶしのところについている小さな白いねこのマークが、お出かけが嬉しくてたまらないというように、るいの足の動きに合わせて小さく揺れていました。
パシャ、パシャ、パシャ
濡れたあぜ道を歩くたびに、長靴の底が泥水を跳ね上げて、楽しいリズムを奏でます。
でも、今日はるいにとって大切な宝物の杖のような、大きな黄色い傘は、玄関に置いてけぼりです。
だから、いつもの、
ズリ、ズリ、ズリ
という、地面を擦る音はしません。
すこし進むとあぜ道の石の上に、カタツムリさんがいました。
すると近くにスズメさんがパタパタと飛んできて、カタツムリさんと何やらひそひそとお話しているみたいです。
気になったるいは、近くにいって、話しかけてみました。
「スズメさん、カタツムリさん、こんにちは」
「チュン、チュン」
「むにゅ〜〜、むにゅむにゅ〜〜」
スズメさんからは元気に挨拶がありましたが、スズメさんとカタツムリさんが本当は何を言ったのか、るいにはよくわかりませんでした。
るいはすっかり困ってしまいました。
少しの間、じっと考えたるいは、もこもこに相談してみることにしたのです。
近くにあるあの大きな水たまりの前にしゃがむと、るいは右手で握った見えない虹の筆を、水面へ向かって優しくそっと滑らせました。
すー、すー、すーん
水たまりの濁った水が、時間が経つにつれてしんと静まり返り、やがて一枚の不思議な鏡へと変わっていきました。
るいは足元の大きな水たまりをそっと覗き込みました。
『ん、るい、どうしたの?』
水たまりの奥のペンシル屋根の洋館から、気づいたもこもこが優しく問い掛けてくれました。
るいは、もこもこに会えたことが嬉しくて、「やったー!」と心の中で大喜びしました。
「もこもこ、スズメさんたちが何かお話してるんだけど、なんて言ってるかわからないの」
『そっか。それなら、るいの右手の虹の筆で、スズメさんとカタツムリさんを優しく撫でてごらん。きっとお話が聴こえるようになるよ』
「スズメさん、カタツムリさん。この筆で撫でるよ」
るいは少し驚きましたが、立ち上がると、スズメさんとカタツムリさんの近くにいって、見えない虹の筆でそっと空気を撫でました。
サラ、サラ、サララ
すると、るいの耳に「チュン、チュンチュチュン」と声が届くと同時に、頭の中へ直接あたたかい音が響いてきました。
『るいちゃん、アタシ、スズメのチュンよ。こっちはカタツムリのむにゅ。よろしくね』
続けて、「むにゅ〜〜、むにゅ〜〜、むにゅ〜〜」という声と一緒に、のんびりとした音が響きます。
『ぼく、むにゅ。ぼく、ゆっくりしか動けないんだぁ』
るいは嬉しくなって、水たまりに向かってニッコリ笑いました。
「もこもこ、教えてくれて、ありがとう!」
『るいは、ちゃんとありがとうが言える良い子だね』
もこもこも水たまりの中で、嬉しそうに尻尾を振っています。
ブン、ブン、ブン
るいは、自分のひみつを優しく助けてくれるもこもこのことが、益々、大好きになるのでした。




