敵の敵は敵!!俺はもう助からないだろう
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「え、待って!?こんな魔女裁判みたいな感じの処刑方法なの!???」
俺は池の上に作られた即席の櫓?っぽい感じの建物を登らされ、その櫓の端っこに張り出した、いかにもめでたい感じの装飾がされた飛び込み台の先っちょに立たされていた。
「魔女裁判?処刑?」
俺の腕を拘束しているゴリラ獣人が首をかしげる。
「神聖な儀式なんだから形代として池に還れることを喜んだ方がいい」
怖い怖い怖い。
言葉が通じなさ過ぎて怖い。
村人が何を言ってんのかわかんなくて怖い。
さっきから思ってたけどもしかしてこれはアレか。
処刑じゃなくて謎の儀式の供物として俺は選ばれたってだけなのか?
頭の中を疑問符の嵐が行ったり来たり。
わかってるのはこいつらの殺意が本物で、俺が超ピンチってことだけ。
こんな袖が長くて生地が分厚い服で水に落ちたら助からないだろ。
俺は周囲を見渡した。
櫓の下には魔法っぽい電飾が灯り、村の獣人達が酒を片手にどんちゃん騒ぎ。
祭りという名目で処刑ショーを肴に酒を飲むなんてなんとも野蛮な連中だ。
あっちの丘とか教会っぽい建物があるし、あっちにはかなり広大な畑が見える。
かなりちゃんとした村っぽい集落を形成してるのに、こんな前時代的なことをするなんてヤバすぎるだろ。
祭りのお囃子部隊みたいな奴らが奏でるBGMが控えめなものに変わった。
地上ステージの壇上に豪奢な着物を纏った人物が現れる。昨日俺の独房に来た狼獣人の男だ。
司会進行っぽい女性から『村長』と紹介されていた。
村長のスピーチが始まる気配に、どんちゃん騒ぎが一気に静かになる。
咳払い一つ。
村長が話し始める。
「今年も無事に例大祭を開催できたことを嬉しく思います。さてーー」
「あのーー!」
雑踏の中で勢いよく前足があがり、村長のスピーチを中断する。
「……メラニー!」
雑踏の中から猫獣人が前に進み出て、当然みたいな顔で壇上に上がった。
「今年の形代がやらかしたことについてなんだがー!くだらないしきたりに囚われて明らかな不用品を自由にさせておいたせいで子供の命が危険に晒されたことは村長の責任はどの程度あると考えているんだい?」
メラニーが俺を指さす。
村長は苦虫を噛み潰したような表情でメラニーを睨みつける。
「くっ、私はーー」
「ナディアの主張を受け入れてアレを期日まで生かすと最終的な判断を下したのは村長だったよね?未遂で終わったからいいものの、ウォレス君はいまだ記憶が混乱しているらしいじゃないか」
村人たちにざわめきが戻る。
村長がじろりと見渡すとその声はデクレッシェンドするが、ぼそぼそとした話し声は止まらない。
「アレの研究を止めたのをまだ根に持っているのか、メラニー?」
「話を逸らすのはやめてもらいたいな。危うくケモナーおじさん事件の再来になったこと、どう責任を取るんだい?この場でハッキリ言ってもらおうか。まさか、『しきたり通り』アレを池に還してそれでおしまいじゃないだろう?」
「……」
「ウォレス君は死ぬかも知れなかったんだぞ?」
なんか仲間内で揉め始めたな。
今のうちに逃げたい、が……
腕に力を入れてみるものの、俺を後ろ手に捕まえているゴリラ獣人はびくともしない。くそ、下の騒ぎに気を取られてる今がチャンスなのに。
いっそ一度池に落ちて……
「古臭い因習なんてもうやめにしよう!村の発展のためにも、この悲劇を有耶無耶にしないためにも!この儀式の中止を提言する!」
おん…?流れ変わったな。
「アレは研究所で預からせてもらう!池に還して終わりになんかさせない!村の皆さんのためにも骨の髄まで研究する!」
メラニーの高らかな宣言に、村長が気圧される。
助かった…訳じゃないよなこれ。もっとまずい展開じゃないか!?
聴衆たちもなんとなくメラニーに同調しているし、村長は言い返せないし。
おいおいおいおい。敵の敵も敵じゃねーかよ。
「待って!!」
この不穏なざわめきを鈴のようなかわいらしい声が打ち破った。
会場の端にいた声の主に視線が集中する。
あと2話で完結すると思う
次話、『ペーター、池に落ちる』




