『正義の見方』先行公開
『女子プラモ部』に投稿連載予定の、『正義の見方』を先行公開します。
但し、公開時期は、「活動報告」でもお知らせしているとおり、
新連載の時期は未定となります。
予めご了承ください。
「あのぉーー。すみません」
庭で土いじりをしていた佐竹清吉に、玄関の門をくぐって入ってきた男が声を掛ける。
佐竹清吉が土いじりをやめて、男の顔を見上げると、酷いくせ毛頭の背の高い男が、軽く頭をさげる。
男はスーツ姿で、見たところ四十代半ばに見える。
「なにか用ですか」
そう佐竹老人は聞いた。
「あちらの柿の木。随分と立派ですね。ちょうど生っている実も美味しそうだ」
男は、枝の先が隣家との柵を越えて伸びている、立派な実の生っている柿の木を指して言った。
そう言われて、佐竹も悪い気がしない。
「そうだろう。どうだい。一つ食べてみるかい」
この男の気さくな態度に気を好くした佐竹は、そう言った。
「では、ぜひ一つ、頂いてもよろしいですか」
男はそうお願いする。
「待っててくれ。今すぐに美味いのを取ってくるから」
佐竹は、少し足早にその柿の木に向かい、途中で家の壁に立て掛けてあった脚立を使って、その美味しそうに実った柿の実を取ると、笑顔で男にその柿の実を渡した。
「甘柿だから、そのままでも食べられる」
そう佐竹は言った。
「そうですか。では」
そう言って男は、その柿に噛りつく。
「美味い!」
男は、その柿の美味さをそのまま佐竹に伝えた。
「良かったら、どうだい。あと二、三個持っていくかい」
美味そうに柿を食べる男の顔に気を好くした佐竹がそう言った。
「そうですか。すぐそうしたいのは山々なんですが……」
男は、スーツの胸元の内ポケットに手を入れると、名刺入れを取り出して、名刺を一枚佐竹清吉に差し出す。
「初めまして。弁護士の刀根新八です」
そう男は言った。
「弁護士!? 弁護士が一体なんの用でウチに!?」
佐竹老人は、目の前の男が弁護士だと聞いて、途端に警戒した態度を見せる。
「あっ。大丈夫です。ご心配なく。別にあなたを訴えに来たわけじゃありませんから」
そう刀根新八という弁護士は言った。
「じゃ、なんで」
佐竹は、刀根の屈託のない顔を見て、少しだけ安心してそう聞く。
「実はですね。あの柿の木の枝の事なんですが」
そう刀根は言って、その本題に入る。
「それがなにか」
そうは聞いたが、佐竹には思い当たることもある。
「その柿の木の枝がですね。隣の家の敷地内まで伸びていて、となりの佐々木さんが少し迷惑をしているそうなんです」
やはりそれは、佐竹の予想通りで間違いはなかった。
「その……佐竹さんは、その柿を落ちたものでも取るなとおっしゃったそうで」
そう佐竹が言ったのにも、もちろん理由がある。
「それはウチの柿の木に生った実だからな」
そうは言ったが、実は本当の理由はそれではなかった。




