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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
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第十話 決勝


「これがこれが最後の戦い!帝都闘技大会本選が最後────決勝戦でございますっ!。予選から始まったこの大会では数々の選手が敗れ、勝ち進んで来ました。そして数々のドラマが生まれました。嬉しさ、悔しさ、ありとあらゆる感情があったことでしょう────」

 

「────だがしかぁぁぁし!、刮目せよこの戦いを!今は全て捨て去りっ見届けろー!───《蒼の双星》団長アンナ・ハリス対《蒼の双星》アディン・ネルヴァ!お二方は入場してくださいっ!」

 

『おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

「あの大雨も本気ではないと豪語する天才の中の天っ才!、皇帝の妹ではなく『水神』の二つ名を持つのは伊達じゃない!《蒼の双星》団長アンナ・ハリース!」

 

「対するドンドンドンのどんでん返し!逆転に次ぐ逆転!どこまで力を隠しているんだぁー!ダークホースっ《蒼の双星》アディン・ネルヴァー!」

 

「ではここで解説の方々をご紹介します!」

 

「よぉ!、アーサーだぜ!戦況だ!」

「皇帝でーす、魔法でーす」

「陛下はふざけないでください。補佐としてエレン・コークが務めさせて頂きます」

「《イカヅチ》団長ミリア・リードだ。武術についてだ」

「そしてわたくしアキナ・パープルでーす!大雑把にいきまーす!」

 

 観客を盛り上げようとトークが続けられる中、二人は表情を変えず向き合っていた。

 二人の間を満たしていた沈黙を破ったのはアディンの方だった。

 

「後で、話す」

「貴方が何を考えてるかぐらいわかっているわ。だから、見ておきなさい」

 

 交わされたのはそれだけ。

 だがそれだけでよかった。

 二人は己の得物をそれぞれに、構える。

 

「それでは最終試合───決勝を開始しますっ!────いざ尋常に───」

 

 

 睨み合う両者。

 息を呑む観客。

 一瞬の静寂の後に、火蓋は切られた。

 

 

「────始めぇ!!」

 

 

「【『聖厄(セントディザスター)』】──【神器解放】───【神化】」

「【我が身を喰らえ】【我が身を喰らえ】【我が身を喰らえ】────」

「おおっと!?開幕即行だー!」

 

「【濁流カワイア・イヌンダシオン】」

「【崩落(コープス)】」

 

 放たれる濁流。

 発動される強重圧。

 

「効かないわ」

「こっちもな」

 

 どちらの魔法も互いに有効打を与えることはなかった。

 

「行くぞ」

「掛かってきなさい」

 

 そして始まるのが剣戟。

 

「オラァ!」

「よっと」

 

 烈迫の斬撃が軽い口調で躱され、彼女の手に持つ大剣が双剣へと姿を変える。

 

「ついて来られるかしら?」

 

 高速斬撃。

 連続斬撃。

 圧倒的手数を前に防戦一方となってしまう。

 このままでは埒が明かないと大きく弾こうとした瞬間、それを読まれたように双剣が斧へと姿を変えた。

 

「そぉーれ!」

 

 ガアァァァァァァンと斧と刀がぶつかり、強化された肉体でも耐えきれず吹き飛ばされる。

 それを即座に追ってくるアンナ。

 手の中の斧は既に槍へと変わっている。

 瞬速で放たれる突きをバク転で躱しその矛先を蹴り上げ、着地の瞬間にアンナへ突貫する。

 

「───甘い──甘いわよ」

 

 次は大剣。

 自分が蹴り上げた勢いを使って後は振り下ろすのみ。

 脳天に迫る刃を前に俺は唱えた。

 

「【武器召喚──『吸水盾』】」

「あら……」

「【我が身を喰らえ】──【光線(レーザー)】」

 

 先の試合を見ていればジャスミンと同じく範囲系は効かないことは自明。

 強化された魔力をもってアンナの魔力障壁を貫通する。

 

「わざわざ小魔法でやるなんて、レットちゃんへの皮肉かしら?」

 

 そんな意図はない。

 軽々と避けられてしまったがまだまだだ。

 

「【破導砲】」

「そんなも───っ!?」

 

 俺の〔破導〕は質量を持った炎。

 障壁ごと壊してやれる。

 

「───【光輝小剣(シュヴェールト・オー)】」

 

 そして、俺の刀を受け止めたのは何と光属性の小剣だった。

 

「人のこと言えねぇだろ!?」

「神器の魔力が何だか忘れたの?」

 

 確か〔水聖〕だったはずだ。

 つまり『水』で水、『聖』で光ってことか。

 

「──って三属性!?」

「【光輝重圧(グロリアスプレス)】」

「───ぐ……」

 

 光の重力魔法。

 

「【我が身を喰らえ】」

 

 だが、そんなもの強化を上乗せれば済む話だ。

 

「【破導波】っ!」

 

 ただの衝撃波じゃない、実体を持った炎の爆発。

 物理に対しての耐性が低い魔力障壁は一瞬で砕け、破導がアンナの体を打つ。

 彼女の足は衝撃に軽く浮かされ、その身を無防備にした。

 

「【破導砲】」

「【(シールド)】」

 

 生じるのは甲高い金属音。

 盛大に撥ね飛ばされるのはアンナ。

 寸前で間に盾が挟み込まれたのを見逃さなかった。

 

「あっぶないわねぇ…」

「何ちゅー戦闘センスだよ……」

 

 確実に入るタイミングだった。

 がしかし異常なまでの反応速度と行動速度が完全に上回っていた。

 魔導師のくせに高い『身体魔力』のせいか【破導波】による打撲が見られる気配はない。

 

「厄介過ぎる……」

「来ないのなら私から行かせて貰うわ───【拡蒸気(スチームイレッジ)】」

「何だこれ?────熱っ!?」

 

 突如として戦闘場に拡がる蒸気。

 それは直接的な威力は無くとも俺の冷静を欠くには十分過ぎるほど厄介であった。

 この魔法の本当の使い方は目眩ましや『凍結』の状態異常を解くことである。それをここまでの広域で、しかも通常より高い温度を持たせていることがアンナの魔導師としての実力の高さが窺える。

 

「【氷爆(フロストノヴァ)】」

「クソっ、防げねぇ!」

 

 やはり、無詠唱で威力の高い魔法を放つことができる魔導師は厄介極まりない。

 特大魔法を無詠唱(ノータイム)で発動させ確実に当てに来ているのが何とも嫌らしい。

 

「おぉー!これは綺麗ですっ!アンナ選手演出をするほどの余裕を持っているのかぁー!?」

「どうかな?」

「───え?」

 

 実況のアキナの間抜けな声が響いたとき、俺は背中に冷たいものが走った。

 チラリと氷の結晶の合間から見えた、アンナの薄笑いが見えたからだ。

 頭にはこの数瞬が過る。

 戦闘場全体に蒔かれた高熱の蒸気。

 戦闘場全体を吹き飛ばすほどの威力を以て放たれた冷気の爆発。

 そしてアンナの杖に煌々と灯る光。

 

 ────しまった───

 

 そう気づいたのは遅過ぎで、、魔法が放たれてしまった後だった。

 

 

 

「【光柱照射(アークセラフィム)】」

 

 

 

 前の試合を想起させる天よりの光。

 だがあれは強化に使われたもの。

 たがこれは殺意の籠められたもの。

 その光はこちらに着弾する前に分裂した(・・・・)

 宙を舞う氷の結晶に反射される光柱はその身を幾多にも分け、そして角度を変えてその光線(レーザー)全てが俺に向いた。

 これには驚愕を禁じ得なかった。

 三つの属性を組み合わせたこともさるものながら、光を操作する───則ち氷自体を操作していると同義なのだから。

 四方八方から光速で迫る光線(レーザー)を前に俺は為す術は無く、ルシフェルとの試合のときのように身を縮め暴威が過ぎ去るのを待つしかなかった。

 どれだけ経っただろうか。

 全身を撃ち抜かれて、その光の熱量に血も流せぬままヨロヨロと立ち上がる。

 次の瞬間、凄まじい殺気に閉じていた瞼を勢いよく開き刀を構えた。

 

 

「───おしまい」

 

 

 そして、視界に飛び込んできたのは眼前に迫る大剣の刃と、その奥で三日月型に嗤うアンナの相貌だった。

 異常な恐怖と焦りを覚えた俺は咄嗟に叫んだ。

 

 

「来いっ!【宵闇竜(ダークナイトドラゴン)】!!」

 

 

 そしてズゥっと。

 

  

「────え?──くっ!?」

 

 

 大きく弾かれるアンナ。

 俺も、無我夢中だったためか現象の把握がいまいち出来なかった。

 破導の魔法円から伸びているのは人一人簡単に握ろ潰せるだろう巨大な手。その指先には大剣と見紛うほどの鋭利な爪が生えている。

 すると、手の主の巨躯に合わせているのか、動く巨腕と共に魔法円がその大きさを変動させ、姿を露にしていった。

 会場全体が絶句したことがありありとわかっえしまった。

 何せ、実況でさえも押し黙ってしまったのだから。

 その原因は勿論、俺が召喚したであろうこの怪物だった。

 

 腕と同様の脚。

 

 大蛇の如き長尾。

 

 蝙蝠(こうもり)を連想させる巨翼。

 

 短剣の生え揃った鰐のような顎。

 

 悪魔を象った歪んだ両角。

 

 そうまさに─────(ドラゴン)だった。

 

 だが、畏怖と恐怖と嫌悪が渦巻く中、俺は歓喜でいっぱいだった。

 

 そしてはっきりとした。

 

 何故この竜の名が咄嗟に口からでたのか。

 

 何でこんなにもすんなりと召喚できたのか。

 

 どうして無詠唱かつ思念も殆ど無い状態で喚べたのか。

 

 まだ起こせない記憶の中でこれだけははっきりと判った。

 

 だから言うんだ。

 

 

 

「────クロっ!!」

 

 

 

 その名を呼ばれた竜が、少し笑った気がした。

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