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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
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第七話 風と雷

難産でした。


 アディンとルシフェルの試合がアディンの勝利で終わった。

 労いやあの繭について問い詰めたい気持ちがあったけれど、私は私で試合がある。それも相手はあの 《イカヅチ》の団長だ。

 アディンのことで頭を掻き乱されている今の私では太刀打ちできないかもしれない。

 そんなことは絶対に嫌だ。

 だから切り替える。

 今だけは相手に勝つことを。

 今だけは彼のことは忘れることを。

 

「────尋常に────」

 

 勝って、アディンと戦うんだ。

 

 

「────始めぇ!」

 

 

「【『ラフーガ』】───【ゼフィル】」

「【電磁発生(ジェネレート)】」

 

 試合開始と同時に霊器を具現、そして風を召喚した。

 対するミリア・リードは電気を身に纏っていた。

 

 (あれは……付与(エンチャント)じゃない付与…?)

 

 バチバチと電気が発生しミリアが度々火花に照らされている。

 速度には自信がある。

 だから見たこともない魔法を使っていたとしても、咄嗟のことでも避けられるはずだ。

 ならば先手は取らせてもら───っ!?

 

「お?、受けられるのか、期待してもよさそうだ」

 

 いつ動いたのかわからなかった。

 どれだけ速いのか。

 ギリギリ剣と身体の間に霊器を挟むことが出来たが、野生の勘が働かなければ一撃で終わっていた。

 森で感覚を取り戻しておいてよかった……

 

「これならどうだ?」

 

 (──後ろ!)

 

「やるな、楽しませろ」

 

 (──右!左!上!──何なのよこの機動力!?)

 

「いいぞいいぞ、ギアを上げるぞ!」

 

 (はや──すぎるっ)

 

「そらそらそらそら!!」

 

 どういう理屈なのか、足を殆ど動かしている様子はない。

 地面を踏む音も無い。

 

「まだまだぁ!」

 

 それと、この人のキャラがおかしい。

 こんな戦闘狂みたいな言動をする人物ではなかったはずだ。

 頼れる姉貴分のはずだ。

 これが作戦というのなら私はその術中に見事嵌まってしまっている。

 

「守ってばかりか!、攻めてみせろ!」

 

 斬り上げ。

 斬り上げ。

 斬り下げ。

 横一閃。

 次々と四方八方から繰り出される斬撃を必死に防ぐ。

 避け損なうことはないが、致命傷以外を躱なかったためか四肢や頬に浅い切り傷が幾つも生まれていた。

 このままでは拉致が明かない。

 

「【風斬(エアストブレイド)】!」

「おっと」

 

 自分で斬撃を放ちながら背後にも風の斬撃を放つ。

 一瞬で退避するミリア・リード。それを見た私も同じく地を蹴った。

 

「逃げるな」

「───っ!?」

 

 あろうことか、飛び退いたはずの彼女が先の光景を想起させるように肉薄していた。

 

「見損なったぞ」

 

 この短い間に私に何を見いだしていたと言うのだろうか。

 

「そりゃ──どうーも!」

 

 だが、圧倒されていた私にほんの少しでも猶予が出来た。

 だから然るべき準備だって可能だ。

 

「【颶風(ラファーガ)】」

「なっ!?」

 

 爆発的に出力を増幅させる風。

 パンと弾けた空気と共に迫るミリアへ剣を見舞う。

 首を狙い一閃、流石に防がれたが問題ない。

 

「【突風(ガスト)】」

 

 確実に避けられない瞬間を狙った。

 勿論ただの突風、押し出す意味はない。

 だが彼女は大袈裟に避けた。

 つまりは───

 

「────そういうことね」

「バレてしまったか」

「キャラと違う好戦的な態度もそれを誤魔化すためだったわけね」

「そうだ、そうでもしないと攻撃を食らえば解けるということに気づかれるからな」

 

 そう、彼女が付与している【電磁発生(ジェネレート)】はとんでもない利点(メリット)の代わりに酷い不利(デメリット)を負う魔法だったのだ。

 

「そういうことなら、風ほど頼りになるものはないわ」

「即行で決めようと思ったが無理だったようだ」

 

 ミリアが構えを解くと、身体に纏っていた電気が消えた。

 

「本番といこうか」

「ええ──行くわよ」

 

 そして、同時に地を蹴る二人。

 速かったのは───ジャスミンだ。

 

「【風斬(エアストブレイド)】」

「【雷撃 (エレクトリック)】」

 

 小規模の雷を風で纏った剣で弾き、背後から放った風の斬撃は地面スレスレまで身体を倒したことで回避される。

 風斬(エアストブレイド)魔斬(スラッシュ)とは違い無挙動で全方位から使うことができる。

 背後──完全な死角からの魔法だというのに、とんでもない勘だ。察知能力が高いだけかもしれないが。

 踏み込めば一瞬で間合いに入る距離に位置するミリアと睨み合う。

 動いたのは同時だ。

 私は剣先に風を集め高威力の一撃を放った。

 ミリアの動きを予想しての行動だったが、目を疑った。

 風を放った直後、回転する剣が顔のド真中に飛んできたのだ。

 咄嗟に顔を背けて回避するも、右肩を少し切り裂かれた。

 

「【電磁破裂(プラズマスパーク)】【電磁発生(ジェネレート)】【光線(レーザー)】」

「──っ…」

 

 電撃を防ぐも弾けた電流が全身を駆け巡り痺れ、あの高速移動を可能とする魔法で背後から魔法を撃ち込まれた。

 先程の簡易な解除を見れば切り替え(オンオフ)は一瞬で出来るのだろう。

 

「【強電圧(アークボルテージ)】」

「───イィっ!?」

 

 感電した。

 先程の痺れなどとは比べ物にならないほどの威力を持っていた。

 

「【魔槍(ランス)】」

「───はぁ!」

 

 これ以上いいようにはやられない。

 その意志を込めて槍型の雷槍を斬り壊す。

 

「【颶風(ラファーガ)】!」

 

 彼女へ肉薄、そして一閃。

 ようやく、傷らしい傷を与えることができた。

 ここからは私の番だ。

 

「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 風の加速も合わせて今までで最高の連斬を放つ。

 魔法発動の隙も与えない超速の嵐にミリアは為す術は無い。

 せいぜい致命傷を避けるための防御に徹する他なかった。

 

 (行くよっ──『シルフ』っ!!)

 

「【霊装───『シルフ』】っ!!」

 

 一か八かの大博打。

 他者に頼る失笑されるべき行為。

 だが、私は信じていた。

 だってあの子だから。

 彼女だから。

 私に応えてくれる。

 私も応えてあげられる。

 そう確信していたから。

 

 

 そして───『シルフ』は私の想いに応えてくれた。

 

 

 風が弾ける。

 再度包み込むのは金の風。

 その温もりに身を委ね、彼女の風に為すがままにされる。

 弾けた風によって強制的に退けられたミリアから驚愕の気配を感じる。

 瞑目を解く。

 まず頬には風ではない感触。私の伸びた髪だ。その色は金へと換わっている。

 次に判明するのが肌。闇妖精(ダークエルフ)と揶揄される褐色が白に。

 細身の長剣は装飾をさらに絢爛にさせ、存在感も増加している。

 その剣身に反射させると、瞳も金色となっていた。

 

「おいおい……流石の私でもそれは無いと思うぞ……?」

 

 明らかな動揺を見せるミリア。

 それもそうだろう。この土壇場で形勢を逆転させているのだから。いや、私が霊器を初めて成功させたとはわからないはずだ。つまり、この『シルフ』の力を間近に感じて戦いているのだろう。

 

「初めてなの、だから力加減できないかもっ!」

「──っ!」

 

 急加速。

 ミリアもあまりの変化に驚いているようだが、その実私自身も呆然とした。

 これは───慣れるのに苦労しそうだ。

 

「どうやらまだ振り回されているようだな!」

「生憎ね!───でもすぐにものにしてみせるわ!」

 

 始まるのは苛烈な剣戟。

 盛大な火花を散らしながら振るわれる両者の剣から響くのは甲高い金属音。

 絶えず動き回り剣を振るう二人の相貌には笑みが浮かんでいる。

 永遠に続くかと思われる剣の調べ。

 よく言えば意志のぶつかり合い、これについていけなくなった方が負ける。

 悪く言えば戦況の硬直、一向に決着のつかない戦い。

 見る者が見れば夢中になれる光景も、観客からすればただただ面白みの無い試合であった。

 そして、それを好しとしないのが二人である。

 

「───【来たれ終焉】」

「───【今は遠き森の記憶】」

「こ、これはっ───両者共に平行詠唱ー!この高速戦闘下で何と!平行詠唱を開始したー!興奮しますっ──興奮しますよね!?ドキワクしますぅぅぅぅっっっ!!」

 

 完全に感想を述べているだけである。

 

「【焼き尽くす雷光、駆け抜ける閃光、天より堕ちる裁きの光】」

「【宵闇に揺らぐ陽炎、美しき木漏れ火が注ぐ温もり】」

 

 加速する戦闘。

 紡がれる詠唱。

 ミリアは悠然と、ジャスミンは決然と。

 

「【大いなる神雷、雷神の憤怒、汝は神の逆鱗に触れた】」

「【妖精の導きより辿る宝物庫、巻き起これ清純の風】」

 

 加速する詠唱。

 激しさを増す剣戟。

 

「【その罪身をもって償え】」

 

 そして、先に詠唱を完成させたのはミリアだった。

 

「【焔雷砲撃(ホノイカヅチノイカリ)】!」

 

 大きく飛び退く。

 そして解放される魔法。

 展開した巨大な朱と黄の魔法円。

 引き絞った剣は勢いよくその中心へ突き刺され、発動する。

 

「【爆ぜ煌めく無数の森力、風砲を解き放ち砲珠の力を与えよ】───【風珠砲群(ルスト・エメラルド)】!」

 

 極大の緋色の雷が到達する直前、ジャスミンが魔法を完成させた。

 彼女の背後に展開する巨大な金の魔法円。

 その更に上に無数の魔法円が広がり、魔法が発動される。

 極雷に相対するは莫大な風の宝珠。

 『堕』と『昇』。

 

 

「【風刃(アルマ)】」

 

 

 雷と宝珠がぶつかる直前、そんな『言の葉』がミリアの耳朶を震わせた。

 発生する極大の光源。

 轟音と共に数多の砲珠を蹂躙する緋雷はその全てを消し去ったところで勢いを失い、ジャスミンへ届く前に止まった。

 そしてミリアの目を疑わせたのは、風を極度に集めるジャスミンの姿だった。

 金の光を放つ風。

 膨大な風が集束する。

 タンっと軽い音が鳴り響き、金髪の少女は唱えた。

 

 

 

 

「【壊嵐(テンペスト)】」

 

 

 

 

 解き放たれた金風。

 最後にミリアが見たのは、美しい金の髪だった。

とても好きですが、無表情の女剣士が元ではありません。パクってないです。ただ見ているサイトにある言葉から魔法名を選ぶとこうなってしまっただけなのです。

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