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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
43/195

第四話 炎剣よ

凄く長くなりました。


 パチパチと火の粉を散らす豪炎。

 外界からの音が断絶された世界。

 燃え盛る炎に囲まれる中対峙する大男。

 油断なく大剣を構える姿は雄々しく、自分が矮小に思えてくる。

 強くなったと勘違いしていた。

 今ならわかる。

 本当の強者とは何者なのかを。

 そして紛れもなく。

 目の前の戦士は真なる強者であった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「帝都闘技大会本選!、記念すべき第一回戦第一試合は~~~?───この二人だっ、アディン・ネルヴァ対グレン・バーナレク!。入場してくださいっ!」

 

 実況を自称するアキナに促され、二人が戦闘場へと姿を現す。

 

「グレーーーンバーーーナレーーーーク!!、ギルド 《焔の旋風》団長加えて非公式ギルド 《スカーレットファンクラブ》会長!、彼女に対する愛と大剣と炎を操る姿は熱い!熱い!熱いぃぃぃぃぃ!」

「団長ーー!」

「グレンー!」

「バーナレクさーーん!」

 

 盛大な声援に拳を突き上げ応えるグレン。

 

「そして相対するはぁーー?───アディーーーン・ネルぅヴァぁーーー!!、ギルド 《蒼の双星》所属の戦士だぁー!突如として頭角を現し予選をギッタバッタと勝ち上がってきた猛者だー!。ダークホースと成り得るのか、はたまたまぐれなのかっ、この戦いは必見だぁー!」

 

 そしてアディンに対する声は上がらない。

 

「………あーでは位置についてください、笛の合図と共に戦闘開始となります!」

 

 彼我の距離は遠い。

 魔導師の詠唱時間を稼ぐためだろう。

 はっきり言って無駄であるが。

 この場に立つ者達からすればそんなものすぐに詰められるし、無詠唱で魔法も行使できるためだ。

 俺には遠距離の魔法も無いしレオみたいに一瞬で肉薄なんてできないがな。

 

「ドキドキ、ワクワク。あ、中からの声のみを遮断する結界を展開します。応援や迫力あるぶつかり合い、魔法の音は消えません。面白味に欠けるので。因みに戦闘開始直後に仮想空間が展開されますので、戦闘終了後には例え死んでいても無傷で済みます」

 

 確かに娯楽として開催しているのに音無しだと拍子抜けだな。ギルドにもあるが本当に便利な機能だと思う、仮想空間は。

 

「それではそろそろ始まります!、お二方は全力で、戦いを楽しんでくださいっ!──では尋常に───」

 

 

 ビイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!

 

 

「───始めぇっ!!」

 

 

 

「【我が身を喰らえ】」

「【付与(エンチャント)】」

 

 戦いが───始まる。

 

 

 

 

「まずは手始めに──【魔球(ボール)】」

 

 火球が大剣を握る右手とは逆の左手から放たれた。

 

「始まりました本選第一試合!、最初に動いたのはグレン選手だぁ!皆さんもご存知の小魔法【魔球(ボール)】!挨拶といったところかぁ!?」

 

 確かに挨拶ほどの威力しかないだろう。

 だが、俺はこれを避けるわけにはいかない。

 

「【召喚──『吸炎剣』】」

 

 喚び出すのは水色の片手剣。

 左手に握ったそれを迫り来る火球の中心を斬るように振り抜く。

 

「───っ!」

 

 召喚自体を見るのが初めてだろう。それに加えて起きた今の現象にも驚かされているはずだ。

 なにせ、剣身に触れた火球は掻き消され、散った火の粉がマナごと『吸炎剣』に吸収されたのだから。

 

「召喚、それに俺対策とはやってくれるじゃねぇか」

 

 返答もやらずに『吸炎剣』を待機、手首に緋色の魔法円が生まれた。

 

「【来たれ大海の守護者、侵し者に裁きを下せ】──【召喚『滅海槍』】───【呑み尽くせ(ウェルタホエール)】」

「なっ!?、ちょ、お前っ!」

「食らえ!」

 

 間髪入れず放たれる大津波。

 戦闘場を埋め尽くすほどの大量の水が鯨を型どり大口を開けてグレンに迫る。

 

「そっちがそう来るなら俺にだってやり方ってもんがあんだよっ!」

 

 まだ決着がつけられるとは思っていない。

 だが有効打ぐらいは与えられると思っていた。

 そんな俺の予想を裏切りグレンは構えを解いて腕を突き出し、唱えた。

 

「【白熱榴弾インケンデスハウイッツァー】」

 

 そしてその手の平の先に生まれる炎に作られた球体。

 グッ、と掴み取り大きく振りかぶる。

 彼の視線が向かう先は水鯨。

 大きく開いた口の中へ放り込まれたそれは一瞬その輝きを失い、次の瞬間に力を解放した。

 

「【呑み尽くせ(ウェルタホエール)】っ!」

 

 荒れ狂う熱波に吹き飛ばされた鯨の代わりにまた新たな鯨を生み出す。がしかし、放った直線上には男の姿はなかった。

 

「【火柱(アグニフレア)】」

 

 響いた声に振り仰ぐ。

 彼は上に跳んでいたのだ。

 展開したのは足下、赤の魔法円。直ぐ様待機していた『吸炎剣』と変換し、地面に突き刺す。

 パリンと硝子の割れる音と共に魔法円が弾けた。

 

「その剣、厄介この上ねぇぜ…」

 

 タンと身体の大きさに見合わぬ音を立てて着地。

 そして一瞬の間にグレンは迫っていた。

 

「──っ!?──【我が身を喰らえ】!」

 

 身体強化。

 凪ぎ払われる大剣を右手の刀で弾いて逸らし、生まれた安地へ身を逃す。

 避けきれた、だが安堵するも束の間。

 

「オ──ラッ!」

 

 流された勢いそのまま左脚を軸に右足が振り上げられた。

 

「──ガッ…」

 

 額に突き刺さる爪先。

 バチッと火花が散る。

 

「そぉーれっ!」

 

 振り回した右足で地面を踏み締め、残った足で蹴り飛ばしたと理解したのは、背中をぶつけて地面に転がったときだった。

 

「拍子抜けだな」

 

 どうやら名も知らない相手に期待していたらしい。

 逆に言えばそれだけということだ。

 期待にしか値しないと思われていた。

 

「……俺、は……まだ自分で──動いてないぞ…」

「ああそうだな、それが俺を吹っ飛ばしてから言ってるとしたらまだ格好もついたんだがな」

 

 その通りだ。

 相手に動かされている時点で遠吠えに過ぎない。

 

「まあ諦めてくれや───【──時はきた、誰そ知らぬ炎聖の神殿】」

 

 開始されたのは詠唱。

 『言の葉』の響きからするに恐らく詠唱されているのは極大魔法。

 慈悲なく、俺が奮い立つとは思わず、圧倒的な力の差を見せつけようとしてくれているのだ。

 

「【彼の処に召されし一振りの魔杖、触れることさえ儘成らぬ灼熱、尽く蹂躙せしめる爆炎】」

「おぉーと?、これは詠唱しているようです!、しかしアディン選手は動かない!」

 

 実況がああ言ってるが仕方ない。

 今も、詠唱を邪魔してこない俺に彼は冷めていることだろう。

 

「【立ち塞ぐ者は忽ち一掃し、破滅と絶望を汝に刻まん。火焔に縁取られし世界を前に終焉を迎えよ】」

「何かトラブルでもあったのでしょうか!?、どうしたアディン選手!」

 

 観客は彼と同じように拍子抜けしているはずだ。

 予選を勝ち上がってきた猛者を待っていたのに、現れたのは詠唱中の相手を前にして一歩も動くことのない弱者なのだから。

 だが、それでもいい。

 

「【災厄を打ち砕く破錠の一手となれ。無慈悲の業火をもって理不尽を焼き尽くさん】」

 

 だって俺は───


「【来たれ焰の魔王、地獄をも焼滅せよ】──」

「魔力の高まり──詠唱の完成でございます!!」

 

 ───俺には───

 

「──【焔剣の絶界(ラーヴァテイン)】」

「極大魔法ーー!! 絶体絶命のアディン選手っ、どう出るのでしょうか!?」

「───坊主、生半可な気合いでよく耐えたな」

 

 

 

 ───これがあるのだから。

 

 

 

「──【融合召喚──『吸魔炎海剣』】」

 

 足下に展開する巨大な緋色の魔法円。

 魔法が発動する。

 だがその間に手首に開いていた魔法円と『滅海槍』が割れ、一つになる。

 そして──

 

 

「【換装召喚】───【完全吸収(アブソーブ)】」

 

 

 ───手に握っていた剣から放たれた魔力光が身を包み、赤と青に彩られた鎧をこの身に宿していた。

 

『────っっ!?』

 

 次の瞬間、全ての人間の驚愕を受けた。

 展開していた緋色の魔法円から上方に放たれた幾多の巨大な炎剣。

 それは真っ直ぐ上に突き進むものもあれば、曲がりくねって対象に向かうものもある。つまり、全ての炎剣が俺に向けられたということだ。

 だが、その尽くを展開した球型の魔力吸収障壁に受け、全てを霧散させた。

 マナに分解された極大魔法はスゥと右手に持つ剣へと吸収されていく。

 

「なんだ……それは…?」

 

 驚くのも無理はない。

 誰にも見せたこともないし、今まで召喚の魔力を持っていた者達が残した記録にはなかったものなのだから。

 換装召喚。

 対象に設定した召喚武器の特性を持った鎧を召喚、武器の性能に合わせて身体能力を強化し力を得るものだ。

 そして『吸魔炎海剣』は『吸炎剣』と『滅海槍』それぞれの特性を融合させた力を持ち、属性が炎、海、吸収となっている。炎を吸収する、海水を放つ、たったそれだけの能力だった武器を掛け合わせることで、魔法を吸収し炎と海水を放つ高性能の武器となったのだ。

 

「俺の切り札、決められたぞ?」

「──…………いいねぇいいねぇ、熱くなってきたぜ!」

 

 大逆転とは言わない。

 相手にはレオには劣るものの凄絶な剣技とスキルがあるのだから。

 

「こっから本気だぜぇ!──【炎剣展開──炎華(コロナ)】!」

 

 グレンの言葉に従った魔法円が展開したそばから炎の剣を生み出していった。

 その数──八。

 

「すぐにくたばんじゃねぇぞ?──【爆発(デトネイト)】」

 

 肉薄──じゃない!

 爆発を利用してぶっ飛んできやがった!

 

「両手のソレ、扱えんのかぁ?」

「もっ─ちろん……だっ!」

 

 速度と力、炎を乗せた一撃を右手の刀と左手の剣を交差することで受け止める。

 

「【刈り取れ(リープ)】」

「──っ!?──【完全吸収(アブソーブ)】!」

「鬱陶しいんだよそれぇっ!」

「お前のソレもなぁ!」

 

 襲い来る炎剣を吸収するもグレンの背中に存在する火円から新たに生み出される。

 両者共に力を加え、跳ね退く。

 生まれた間合い。

 

「【炸裂散弾(フレイムバレット)】」

 

 炎剣の先から放たれる炎弾。

 

「【呑み尽くせ(ウェルタホエール)】」

 

 それを容易く消火し襲いかかる水鯨。

 

「【大火炎(コンフラグラ)】」

 

 途方もない火力に鯨は身を蒸発させられ、膨大な蒸気が戦闘場を満たす。

 

「【焼き尽くせ(バーンアウト)】」

 

 そして、水煙を越えて牙を剥く炎と対消滅した爆炎。

 

「埒が明かねぇ!」

「こっちのセリフだ!」

「─────ま、俺の勝ちだけどな」

「────は?」

 

 ──ドス──

 

「───ガッ……」

 

 突然の衝撃と熱に剣を手放してしまう。

 カランという音と共に俺は地面に倒れ伏した。

 

「──ぁ─」

 

 背中に感じる熱と痛み。

 頭を満たすのはやられた、という想いだ。

 

「これで終わりにするぜ──【燃え盛る太陽、我らをあまねく照らす太陽、美しき天上の太陽】」

「何と何と!炎を目眩ましに剣を忍ばせていたー!」

 

 立ち上がらなくては。

 さっきとは違うんだ。

 

「【渦巻け、脈打て、汝は恒星なり】」

「これはどうする!?アディン選手!今回も大逆転を見せてくれるのかー!」

 

 勝つんだ。

 約束したんだ。

 

「【炎波を以て地を這う矮小を燃やせ】」

 

 《蒼の双星》掟其の一───強さを求める。

 求めるだけじゃ足りない。

 強くならなければならないんだ。

 

「【小太陽(ヴォルケーノバースト)】」

 

 展開する魔法円。

 召喚される炎の球体。

 一度脈打ち、炎を纏って渦巻かせる。

 炎波が放たれた。

 衝撃波と炎が蹂躙すること三回。

 辺り一帯を焼き尽くし、硝煙を立ち上らせた。

 

「特大魔法ぉー!これは決まったかー!?、立ち上がるのかっアディン選手!」

「へっ、それは無理だろうよ」

 

 ──そんなことない。

 

 ──まだ戦うんだ。

 

 ──まだいける。

 

 ──負けない。

 

 ──絶対に。

 

 ──勝つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────【罪の解放(リリースルード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 帝都闘技大会。

 

 帝都の第九ブロックの大会場で今本選が行われている。

 

 現在はその本選の第一回戦第一試合。

 

 アディン・ネルヴァ対グレン・バーナレク。

 

 《蒼の双星》の団員と《焔の旋風》の団長の対決だ。

 

 私はこの組み合わせは少し酷だと考えていた。

 

 ああ、私はアキナです。

 

 実況を務めていますがアディン選手、彼には分が悪いと思っていました。

 

 しかし、蓋を開けてみれば何と互角に戦っているではありませんか。

 

 戦闘開始時に見せた勢いは序盤で減り、ああやっぱり駄目だったと思うところもありましたが、彼は切り札を隠していました。ええ随分驚きましたとも。

 

 終始優位であったグレンさんも楽しみ始めていたようですし。

 

 まあそれども、やはり敵わなかったというか。

 

 アディン選手は巧みに、とは言わなくても上手い手にやられました。

 

 まああれくらい普通避けられると思いますがね。

 

 そこのところグレンさんは戦っていてわかっていたのでしょう。彼には避けられないと。事実その一撃で倒れてしまったわけですし。

 

 で、グレンさんはやはり優しい人でした。

 

 戦闘不能のタイムアップではなく自ら止めを差そうとしたのですから。

 

 私自身の感想としてはアディン選手はよく頑張っていたと思いますし、奇想天外で見たことのない魔法──つまり召喚魔法ですがそれで観客を楽しませていました。

 

 彼らは未知の力を前にワクワクしていたことでしょう。

 

 なので最後まで諦められては白けると思い、精一杯励ましの実況をしました。

 

 無理だと思っていましたけど。

 

 だから、私は一瞬のことに思考と口が止まってしまっていました。

 

 観客も応援と野次を飛ばすのを止め、黙り込みました。

 

 肉薄どころか結構努力してきた私でさえも見えませんでした。

 

 アディン選手はその姿を消し、秒も経たない内にグレンさんは倒れました。

 

 そして仮想空間が解除されます。

 

 それはつまりアディン選手が勝ったと同義でしたが、私は勝利のコールをすることでさえ呆然としていて忘れていました。

 

 消音結界は仮想空間と共に解除されたので、アディン選手が発した声もこちらに届き、私はようやく意識を戻しコールしました。

 

 覇気はなかったと思います。

 

 けれどもそんな余裕を、私だけでなく観客も、誰もが持っていなかったでしょう。

 

 しかし最後に思いました。

 

 とんでもない戦士が現れた。

 この大会は荒れる、と。

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