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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
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第三話 開会式


「ただいまより、第一回帝都闘技大会本選の開会式を執り行います」

 

 その声が拡声魔道具(ミーガホン)から発せられた。

 次の瞬間、甲高い女の叫び声が上がった。

 

「ではではっ、放送に代わりましてわたくし──、アキナ・パープルが実況を務めます! ハイ皆さん拍手ぅ~!」

『ワアアアァァァァァァァァァ!!』

 

 ここは帝都南東に位置する第九ブロック、大規模な娯楽施設が多く建つ区画である。そんな帝都の隅で行われるのは一霊以上前から企画されていた大会の開会式だ。勿論そのあとには一回戦も行われる。

 

「ハイっ、ありがとうございます!!。では最初に皇帝陛下からのご挨拶となりますっ、お願いしまーす!」

「はい、僕が皇帝ユーリ・ハリスだよ。ごきげんよう。広告にもあった通り優勝した人には特別な褒賞がある、期待しておいてくれ。僕個人も楽しみにしていふものだ。余り長くしても実りはないね。では、清く気高く逞しい意思のぶつかり合いが見られることを楽しみしているよ!。アキナ、よろしく頼むよ」

「ハイっ、ありがとうございました!。よろしく頼まれました!。では皆さん、皇帝陛下のお言葉に違えないようじゃんじゃん頑張ってください!。皆さんの活躍をこのわたくしめも期待しております!」

 

 この大会の予選は《蒼の双星》の全員が通過できたことを明らかにしておこう。

 本選に出場する一六名の強者の内六人、つまり三割は同ギルドで埋まっていることを考えれば既に快挙と言っても甚だしくはない。

 

「今回の大会には出場できなかった皆さんも存分に楽しんでください!、では《カイズ》団長アーサー・サークブルの言葉ですっ!」

「みんなこんにちはー!」

『こんにちはー!』

「良い子のみんなも、美しい彼女も、格好いい彼も、今日は頑張る選手を応援しよう!。戦う君たちも声援に応え、全力を尽くし優勝を目指そう!。目指すはテッペン──優勝した者は帝都一という称号肩書きが得られる!。戦闘系ギルドが大陸一多いこの帝都の一番とは、魅力的に見えないか?!」

『オオオォォォォォォォォ!!』

「うむ、いい返事だ。これで挨拶は終わる、アキナ君、よろしく頼む」

「まっかされましたー!、いやーやっぱり団長は格好いいですねぇー!」

 

 今の言葉からわかる通りアキナ・パープルは《カイズ》所属である。

 

「はい!、ではっ、次は!、何とっ!、特別前座(スペシャルサプライズ)の登場ですっ!!。『ジュエリーズ』の皆さんどうぞっっ!!」

 

 そして何やら興奮した様子で唾を飛ばすアキナ・パープルは持ち前の身体能力を使って舞台上から横に飛び退いた。

 何事か、と会場の全員が固唾を飲んで見守る中、ソレは突如として現れた。

 

「水と氷の天才魔導師!───冷たくするけど嫌いじゃないわ───ジュエリーサファイア!!」

「アンナぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!、可愛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 一名が狂乱しているが殆どの人間が凍りついた。

 

「闇と頭脳の敏腕秘書──全て私にお任せを──ジュエリーアメジスト」

「エレンーー!決まってるぞーー!」

「エレンさーん!」

「副団長イケてるぅー!」

 

 野次を飛ばすのは恐らく《カイズ》の団員だろう。

 数名がノリ始めているようだが大半の処理が追い付いていない。

 だが最後に、最後に現れた人物によって会場の空気は一変する。

 

「ど、ドジと炎の美魔剣士!──私の炎で満たしてあげりゅ!……………ジュエリールビーッッ!!」

 

 噛んでしまったことを誤魔化すかのようにキランと決めポーズ。口上のドジに違わぬ噛みっぷりに吹き出しそうになった、がしかし。

 次の瞬間、突如として揺れた会場に有らん限りに目を見開いた。

 

『スカーレットちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんっっっっ!!!!』

 

 会場にいる全員が叫んだかのような大音声。

 いや、それは間違いだ。

 隣に並ぶ男の叫び声が尋常ではないほどデカイためそう感じているだけだ。というか耳が痛い。

 

「「「三人そろってジュエリーズ!!」」」

『ウオオオォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!』

「歌います!、『ラブリージュエリー』」

 

 どこまでも連続で頬がひきつり、恐らく一部を除けば殆どがこの状況を理解できていないだろう。

 もうこれ以上考えるのは神経に悪い。

 

「イエー!!」

 

 なので、全力で隣の男と一緒に跳び跳ねることにした。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「いやぁーー素晴らしいライブでしたねー!、皆さんの興奮冷めやらぬ中、組み合わせ発表といきますよぉー!」

『イエェェェェーーーー!!』

「何とイイ返事っ!ハイではどん!本選の対戦相手はこちらっ!」

 

 バサッ、と横に広い垂れ幕が正面に拡げられた。

 

「「あ、一試合目だ」」

 

 ウソ、だろ……?

 

「マジか……」

 

 俺の対戦相手は、どうやら隣で共に跳ねていた男なのであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「アディンの相手はグレン・バーナレク、《焔の旋風》の団長であり非公式ギルド 《スカーレットファンクラブ》の会長を務める実力者だね。恐らくクライス氏が見ているだろうから彼は実力以上のものを発揮するはずだよ」

 

 開会式が終わり、途方もない衝撃を受けたアディンは茫然とジャックへ問い掛けていた。内容は対戦相手の男──グレン・バーナレクについてである。

 まさか一緒にはしゃいでいた相手と戦うとは。

 いや、考えればわかることである。

 少なからずあの場に身を置いていた時点で大会本選出場者と何かしらの関係があるに違いないに。それに歴とした強者の風格もあった。

 今うちひしがれているのは自分の頭の悪さを自覚したことにも起因している。

 

「勝てない相手じゃないわ。レオの魔法寄りって考えれば対処は考えられるはずよ」

「俺っていうかアンナの物理寄りじゃねぇか?」

「二人の言葉を纏めると剣の方が割合的に得意としているけれど魔法技術も十分高いってことになるね。……アディンは大丈夫かい?」

 

 あんなに馬鹿にみたいに叫んでいた男が三人に評されるほどの人物だとは。見かけによらないとはこのことだ。

 

「何よ、アディンが勝てないって言うわけ?」

「そうは言ってないわ」

「難しい相手だってことだ」

「大規模ギルドの団長だし、簡単に勝てないことぐらい明らかだと思うけど」

「………頑張ってね?、アディン」

「ああジャスミン、全力で戦う」

 

 心配するだけ無駄みたいね、とアンナが微笑む。

 胸を貸してもらうつもりで、何て甘えたことは言わない。

 全力で勝ちにいくだけだ。

 

「アンナ、水について教えてくれ」

 

 取り敢えず水だ。

 相手が炎魔力だとわかっているならそれしかない。

 軽く瞠目して再度微笑んだアンナ。

 彼女を前に俺は不敵に嗤ったのであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「お前は二回戦でアイツと当たるんだな、しくじるなよ」

 

 丁度陰になっている階段の裏、黒髪の少年の肩に手を置く男がいた。

 

「勿論だ」

「何人かは仕込んだが恐らくお前しかアイツと当たらないだろう」

「ああ?、まさか他の奴らが負けるって考えてやがんのか?」

 

 少年の問い掛けに男が本気で残念そうにため息をついた。

 

「はっきり言って無理だな、本選に上がる前にアイツと当たれていればよかったんだが…」

「今更仕方ねぇ、俺がやればいいだけの話だ」

「そうだな、都合の良いことに情報の漏洩とやらで中の音は洩れない。お前がどんなことを話そうと他の奴らには知り得ないということだ」

「だからこそこの場を選んだんだろうが」

「その通りだ、だからこそ、お前に掛かっている」

「何べんも言うな、俺に任せとけ、アイツの顔を歪ませてやるぜ」

「程ほどにな」

「さあな」

 

 そして二人は挨拶も無しに互いに背を向ける。

 関係のない男はこの場から立ち去り、少年は自身の席へと戻る。

 戦いが繰り広げられる戦闘場を見据え、これから見られる光景を思い浮かべ、その相貌に昏い笑みを浮かべた。

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