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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
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第一話 帝都闘技大会

 アディン達がダンジョンに挑んでから二年、ジャスミンがある情報を持ち帰って来た。それは『帝都闘技大会』開催の知らせであった。出たいとせがむ彼女に折れた 《蒼の双星》の面々は特訓を開始する。順調に進行されていく大会、その裏に人知れず潜む闇の存在とは………。

 これは、数奇な運命を生きる彼彼女らの物語である。


「…………あ、落とし──た、わよ。………行っちゃった。でもこれ──」


 走り去る男の懐からひらりと舞った一枚の羊皮紙。

 落としたと伝えようとするもその男の姿を見つけることはなく、半ば上げ掛けた腕を下ろして記述内容に目をやった。

 

 

 『帝都闘技大会』

 

 集え力を持つ者達! 君達の威を示す時が来た! 今こそ立ち上がる時だ! 数多の猛者を下しこの帝都の頂点に名を刻め! 見事優勝を為し得た者にはこの皇帝ユーリ・ハリスが直々に報酬を授与してあげよう! 集え帝都の民よ! 力を示す時がきた!

 

 ・参加条件:Eランク以上のアビリティ保持者

 ・開催日時:予選…水霊一番 本選…水霊三○

 ・受付場所:《帝都中央案内所》

 ・賞品

 :優勝 蓄積薬×10 100万デル 皇帝の御心

 :準優勝 蓄積薬×3 10万デル

 :三位 蓄積薬×1 1万デル

 

 

「あ、これ出たい、みんなに教えよ!」

 

 パアッと顔色を明るくさせて彼女はギルドハウスへ足を向けた。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 昼下がり。

 帝都所属ギルド 《蒼の双星》では甲高い刃の打ち合いが鳴り響いている。

 振るわれる得物は赤と黒。

 血色の大剣と無反りの黒刀。

 激しい剣戟には火花が散り、止まることのない戦闘は苛烈だ。

 魔力を用いない純粋な白兵戦。

 赤──レオの美しい剣技は大剣という取り回しの悪さをもろともせず退路を阻む。

 黒──アディンの荒々しくも繊細という矛盾した体捌きはスレスレで剣を回避し、身体能力と駆け引きで隙を作り出しては刀を振る。

 レオの優勢が続くもののアディンが堪える素振りは見せず、その一進一退の攻防は激烈になっていた。

 

「俺が勝つっ!」

「お前が行けっ!」

 

 両者譲れない想いを胸に対峙する。

 烈迫の一撃によりレオの大剣がかち上げられる。

 千載一遇の好機だと頭部目掛けて一閃するアディン。

 しかし、甘かった。

 バク転、その足に切っ先が蹴り上げられ逆にアディンが無防備となる。

 そして峰打ち。

 ドゴン、という生々しい音を響かせて軽く浮いたアディンは地面を転がった。

 

「お前の負けだ」

「───くそっ!」

「約束は守ってもらうぞ」

「何で俺がアンナと買い物なんだ……」

 

 そう、彼等が必死の形相で戦っていたのはただそれだけの理由だった。どちらが団長──アンナの買い物に付き合うかという。

 

「毎度付き合わされている俺の身になれ」

「こんなことしてたら一生俺が荷物持ちじゃねえか!」

 

 何がそこまで嫌なのかと言うと、無駄な時間の拘束と買いもしない店を回らされるということで、さらに荷物を持たされるのだ。勿論彼女は何も持たない。故に苛立つという最悪の状況に陥らされるのだ。

 

「へっ、俺に勝てないって言い方だな」

「ああ、勝てないさ…」

「珍しく素直だな、何かあったのか?」

「今のでな、まだまだ全然レオに敵わないって」

「そういうことか、まあそれは買い物んときにアンナにでも聞いてもらえや。あいつそういうの得意だからよ」

「結局人任せかよ、まあありがと」

「ああ、どういたしましてだ!」

「んじゃ行ってくるわ」

「おう、機嫌だけは損ねるなよ」

 

 レオと別れたアディンはそのままアンナの元へ向かった。

 

「汗臭いわよ、着替えてきてちょうだい」

 

 青筋がこめかみに浮かぶアディンであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「ふぅー、買ったわー」

「アンナ……」

 

 通りを歩く男女。

 アンナとアディンである。

 悠々と足を進める彼女は満面の笑み、対して荷物を肩に手に肘に持つアディンは仏頂面で彼女の名を呼んだ。

 

「次はパンでも買おうかしらー」

「まだ行くのかよ!?」

「まだまだよー」

「まだまだ!?」

「いらっしゃいませー」

「はぁ……」

 

 アンナが傍若無人に入店したのは『メリッサおばさん』、《蒼の双星》のギルドハウスの近くにあり良心価格かつ味も保証された人気店である。

 

「クロワッサンはジャスミンが好きね、貴方はベーコンエピ、レオがメロンパンでジャックがツナロール、クロはチョコスティックよね」

「いや、好きだからって同じの買う必要ないだろ?」

「そうね………じゃあアディンは自分で選びなさい。他のみんなのは私が良さそうなの選んでおくわ」

「おうよ」

 

 あれはこれはと店内を物色していたときだった。

 突如として女性の叫び声が響いた。

 

「キャー!?、ひったくり、ひったくりよっ!!」

「アンナ!」

「アディン、待ってるわ!」

 

 刀は持っていないが一般人の脚になら十分に追い付ける、と店の設備を荒らさないよう通りに繰り出し、女性物の鞄を手に走り去る男の姿を認める。

 待て、などと口を開くこともなく追い付きその首を掴んだ。

 急制動。

 グエっと蛙のような声を洩らして強引に引き寄せられた男は宙を舞い、その背を盛大に地面に打ち付けた。

 

「あ、ありがとう!」

 

 女性に鞄を手渡し、男の首根っこを掴んで引き摺りながら詰所へ向かう。

 

「こいつがひったくり野郎っす」

「む?、ああ了解した。ご苦労さん、少年」

 

 男を届け、アンナの元へ戻る。

 その際に男を捕らえた瞬間を見ていた都民に拍手やらをされて、後頭部を掻いてしまうことも無きにしもあらず。

 

「あら、早いわね」

「詰所が近いからな」

「それもそうね。あ、おばちゃんこれ買うわ」

「毎度」

「ほらかせ、さっさと行くぞ」

「荷物持ちも板についてきたんじゃなぁ~い?」

「うるせぇ」

 

 そうして、軽口を叩き合いながら二人はギルドハウスへと帰るのであった。

 


 

 

 

「みんな見てっ、これ、出たい!」

 

 そして、玄関を通って居間に訪れた二人が見たのは机に身を乗り出して片手に掴んだ羊皮紙を見せつけるジャスミンの姿だった。



 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「それで、どうだ?」

「ああ、アイツは捨て駒にして奴らに届いたぜ」

 

 暗い路地。

 二人の男が互いに顔を見合せないまま話を続けていた。

 

「これでアイツも?」

「ああ、必ず出てくるだろうな」

 

 歪んだ笑みを二人は見せる。

 

「楽しみだぜ」

「おうよ、アイツの顔を見るのがな」

「本物だろうな?、アイツ」

「恐らくな、他にいねぇし一致しすぎてやがる」

 

 男は手の中にある羊皮紙を見て薄く笑った。

 

「はは、荒れに荒れればいいよなぁ?」

「違いねぇ」

 

 それには、『帝都闘技大会』と書いてあるのだった。

四章始まりました。楽しんでもらえたら何よりです。

霊が月の単位、番は日の単位です。一月は九○番です。火、水、風、土と霊には四つあります。

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